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「……アイゼルは、帰りたいとか思わないの?」
心都がアイゼルの頬に付いていた米粒を指先で取りながら聞く。アイゼルは心都の指にびくりと肩を震わせ、心都の手を握った。
「あ、ごめん……ご飯粒、付いてたから……」
「いや……俺こそ、ごめん。心都に触れられたと思って、ドキドキしただけだ……今はまだ帰りたいとは思わない。まだ心都と居たい。心都のことを知りたい」
アイゼルが心都を見つめたまま、ぎゅっと手を握る。その手は熱く、脈までも伝わりそうな気がした。その熱に、心都の鼓動が少しだけ速くなる。
「そっか……帰りたいと思っても簡単には帰れないんだよな。飽きるまで居ていいから」
心都がアイゼルから視線を逸らして手を離そうとするが、それは離れず、更に強く握られる。
「飽きるなんて、絶対にない! 俺は心都とずっと居たくて、ここに来た」
強い言葉に心都が動けずに、ただアイゼルを見つめ返す。アイゼルのまっすぐな目から逃げられなくて、視線すら逸らせない。
「はーい、二人の時間終了。おれのこと忘れないでくれる? 二人とも」
このまま永遠になってしまうのではないかと思っていた矢先、そんな言葉が心都の耳に届き、ようやく心都が視線を逸らせた。その視線の先で悠隆が微笑む。
「わ、忘れてないし! てか、僕もバイト行かなきゃ。アイゼル、留守番よろしくね」
心都がテーブルの食器を片づけてから立ち上がり、キッチンへと向かう。その背中に、バイト? と悠隆の問いが飛んでくる。
「うん。水曜シフトの子が一人辞めちゃって、次の子が入るまでね」
キッチンのシンクに食器を下げてから、心都はシェルフの上に乗せていたタブレット端末を手に取った。そして再びアイゼルの傍に座る。
「これにメッセージアプリ入れておいたから、何かあったら連絡して。ここに触れて、このマークを押せば、僕に繋がるから」
心都はアイゼルの前で実際にタブレットの画面に触れて自身のスマホに電話を掛けると、アイゼルが驚いた顔をした。こういったものの文明はないようだ。ただ、アイゼルの表情は不安というより興味があるような感じだったので、大丈夫だろうと思い心都はアイゼルにタブレットを手渡した。
「あ、いいもの貰ったな、アイゼル。壊すなよ」
「うん! 心都から貰った、初めてのプレゼントだ」
悠隆に満面の笑みを返すアイゼルを見て、心都が、いやいや、と口を挟む。
「あげてないし、それ契約してないからWi-Fiあるとこでしか使えないからな」
心都が二人に告げるが、アイゼルは心都の話し方が早すぎたのか、いまいち理解していないようだった。
「これ、心都のを貸してくれるんだって。家の中でしか使えないから気をつけな」
悠隆がアイゼルの持っているタブレットを指さし、心都の言葉をアイゼルに易しく伝える。それを聞いたアイゼルが、分かった、と頷いた。やはり三か月間傍で過ごしてきたせいだろう、分かり合えているような空気を感じて心都は少し寂しさを覚えた。悠隆とは親友で、誰よりも分かり合えているという自信があって、それをアイゼルに取られたような気になってしまったのだろうか。
なんだかそれも違うような気がして、心都は考えるのをやめて立ち上がった。
「じゃあ、僕行くから」
「お、じゃあおれも帰るよ。またな、アイゼル」
自身のカバンを肩に掛けた心都を見て、悠隆が立ち上がる。玄関まで追ってきた悠隆に心都は、いいの? と聞いた。悠隆が首を傾げる。
「アイゼルとまだ話したいんじゃ?」
「別に。まだ向こうには帰れないだろうし、心都と居てくれるなら安心だし、おれはオマケだからね」
話すこともないよ、と悠隆が先に部屋を出る。心都は、部屋にいたアイゼルに、いってきます、と声を掛けてから悠隆を追いかけた。自分のことを『オマケ』だなんて卑下するように言うのは悠隆らしくなくて、心都が何か気に障ることを言ってしまったのかもしれないと心都はドキドキしながらアパートの階段を降りた。
階段の下で待っていた悠隆を見つけ、心都が近づくと、悠隆はゆっくりと歩き出した。待っていてくれたのだと思うといつもの悠隆だと感じて少しほっとする。
「心都……今日バイト増やしたのって、やっぱりアイゼルが居るから?」
「え? あ、違うよ。別にアイゼルと顔会わせたくないとか、そういうんじゃないんだ。ホントにバ先で水曜の子が一人辞めちゃって、店長困ってたから」
どうやらバイト同士で付き合っていて別れたらしく、突然辞めてしまったらしい。そんなことを聞いたら、ふーん、では済ませられなくて、しばらくならシフトに入ると言ってしまった。
「また、そうやって伝えられた以上のこと考えてるし……それ、心都のいいところでもあるけど、親友としてはちょっと心配なとこでもあるよ」
悠隆が柔らかなため息を吐いてから心都に諦観の笑みを浮かべた。心都が苦く笑って、ごめん、と答える。
「でも、時間とか配慮して貰ってるから。アイゼルも居るし、課題とかあるし」
大丈夫だよ、と心都が悠隆に笑いかけると、しばらく黙っていた悠隆が小さく息を吐いてから、分かった、と頷いた。
「ただ、無理はするなよ」
悠隆の大きな手が心都の髪を乱す。心都は、分ってる、とそれを笑顔で受け入れた。
心都がアイゼルの頬に付いていた米粒を指先で取りながら聞く。アイゼルは心都の指にびくりと肩を震わせ、心都の手を握った。
「あ、ごめん……ご飯粒、付いてたから……」
「いや……俺こそ、ごめん。心都に触れられたと思って、ドキドキしただけだ……今はまだ帰りたいとは思わない。まだ心都と居たい。心都のことを知りたい」
アイゼルが心都を見つめたまま、ぎゅっと手を握る。その手は熱く、脈までも伝わりそうな気がした。その熱に、心都の鼓動が少しだけ速くなる。
「そっか……帰りたいと思っても簡単には帰れないんだよな。飽きるまで居ていいから」
心都がアイゼルから視線を逸らして手を離そうとするが、それは離れず、更に強く握られる。
「飽きるなんて、絶対にない! 俺は心都とずっと居たくて、ここに来た」
強い言葉に心都が動けずに、ただアイゼルを見つめ返す。アイゼルのまっすぐな目から逃げられなくて、視線すら逸らせない。
「はーい、二人の時間終了。おれのこと忘れないでくれる? 二人とも」
このまま永遠になってしまうのではないかと思っていた矢先、そんな言葉が心都の耳に届き、ようやく心都が視線を逸らせた。その視線の先で悠隆が微笑む。
「わ、忘れてないし! てか、僕もバイト行かなきゃ。アイゼル、留守番よろしくね」
心都がテーブルの食器を片づけてから立ち上がり、キッチンへと向かう。その背中に、バイト? と悠隆の問いが飛んでくる。
「うん。水曜シフトの子が一人辞めちゃって、次の子が入るまでね」
キッチンのシンクに食器を下げてから、心都はシェルフの上に乗せていたタブレット端末を手に取った。そして再びアイゼルの傍に座る。
「これにメッセージアプリ入れておいたから、何かあったら連絡して。ここに触れて、このマークを押せば、僕に繋がるから」
心都はアイゼルの前で実際にタブレットの画面に触れて自身のスマホに電話を掛けると、アイゼルが驚いた顔をした。こういったものの文明はないようだ。ただ、アイゼルの表情は不安というより興味があるような感じだったので、大丈夫だろうと思い心都はアイゼルにタブレットを手渡した。
「あ、いいもの貰ったな、アイゼル。壊すなよ」
「うん! 心都から貰った、初めてのプレゼントだ」
悠隆に満面の笑みを返すアイゼルを見て、心都が、いやいや、と口を挟む。
「あげてないし、それ契約してないからWi-Fiあるとこでしか使えないからな」
心都が二人に告げるが、アイゼルは心都の話し方が早すぎたのか、いまいち理解していないようだった。
「これ、心都のを貸してくれるんだって。家の中でしか使えないから気をつけな」
悠隆がアイゼルの持っているタブレットを指さし、心都の言葉をアイゼルに易しく伝える。それを聞いたアイゼルが、分かった、と頷いた。やはり三か月間傍で過ごしてきたせいだろう、分かり合えているような空気を感じて心都は少し寂しさを覚えた。悠隆とは親友で、誰よりも分かり合えているという自信があって、それをアイゼルに取られたような気になってしまったのだろうか。
なんだかそれも違うような気がして、心都は考えるのをやめて立ち上がった。
「じゃあ、僕行くから」
「お、じゃあおれも帰るよ。またな、アイゼル」
自身のカバンを肩に掛けた心都を見て、悠隆が立ち上がる。玄関まで追ってきた悠隆に心都は、いいの? と聞いた。悠隆が首を傾げる。
「アイゼルとまだ話したいんじゃ?」
「別に。まだ向こうには帰れないだろうし、心都と居てくれるなら安心だし、おれはオマケだからね」
話すこともないよ、と悠隆が先に部屋を出る。心都は、部屋にいたアイゼルに、いってきます、と声を掛けてから悠隆を追いかけた。自分のことを『オマケ』だなんて卑下するように言うのは悠隆らしくなくて、心都が何か気に障ることを言ってしまったのかもしれないと心都はドキドキしながらアパートの階段を降りた。
階段の下で待っていた悠隆を見つけ、心都が近づくと、悠隆はゆっくりと歩き出した。待っていてくれたのだと思うといつもの悠隆だと感じて少しほっとする。
「心都……今日バイト増やしたのって、やっぱりアイゼルが居るから?」
「え? あ、違うよ。別にアイゼルと顔会わせたくないとか、そういうんじゃないんだ。ホントにバ先で水曜の子が一人辞めちゃって、店長困ってたから」
どうやらバイト同士で付き合っていて別れたらしく、突然辞めてしまったらしい。そんなことを聞いたら、ふーん、では済ませられなくて、しばらくならシフトに入ると言ってしまった。
「また、そうやって伝えられた以上のこと考えてるし……それ、心都のいいところでもあるけど、親友としてはちょっと心配なとこでもあるよ」
悠隆が柔らかなため息を吐いてから心都に諦観の笑みを浮かべた。心都が苦く笑って、ごめん、と答える。
「でも、時間とか配慮して貰ってるから。アイゼルも居るし、課題とかあるし」
大丈夫だよ、と心都が悠隆に笑いかけると、しばらく黙っていた悠隆が小さく息を吐いてから、分かった、と頷いた。
「ただ、無理はするなよ」
悠隆の大きな手が心都の髪を乱す。心都は、分ってる、とそれを笑顔で受け入れた。
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