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ユリウスの謀ごと
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ユリウス アンキウスはノーア王国を取り戻した三英雄の初代から数えて六代目のアンキウス家の当主としてなるべく、生まれてきた人物である。
その性格は豪胆にして繊細、思考は深さ広さ共に限界を見ず、そして見目は神の造形物と吟われるほど。
幼い時より誰よりも賢きその者は、アンキウス家の最高傑作と呼ばれていた。
ある日、ユリウスは王宮へと呼ばれた。
王妃はアンキウス家の直系、ユリウスの父親と同腹の妹であり、叔母であった。
その叔母からの呼び出しをユリウスは、王都から離れた戦地で受けた。
「何てことだ!今から総攻撃をかける。そして今日中に王都へと大至急、帰るのだ!」
祖父の四代目アンキウス家当主が号令をかける。
この遠征にはあと数ヵ月を擁すると思われていたはずだが、残りたった一日とは!
そう思ったが、当主が決めたことだ。
我が家門において当主の命令は絶対なのである。
父も、ユリウスも隊を率いて戦った。
そして開戦から数時間で、敵国の首を取ると降伏を薦めた。
その時の祖父の覇気の凄まじいことといったら無かった。
もちろん、すぐに属国とすることを決定すると、全隊が王都へと取って返したのである。
「何が王都で起きたのですか。」
俺が父に尋ねるが、
「帰ってからだ。とにかく一秒でも早く戻るのだ。」
そして馬へ鞭を振るって更にスピードを上げたのだった。
そんなこんなで急ぎ王都の邸へと戻り、休む間もなく祖父と父と一緒に王宮へと馳せ参じた。
もちろん軍服のまま、鎧も兜もつけたまま、戦場で率いた隊をつれたまま、である。
王宮の謁見の間へと急ぎ進む当主と父のすぐ後ろをついていく。
すると、その場にはミヌキウス家の当主と時期当主、その嫡男、元老院議員の者、財務大臣、内務大臣、宰相とその一族の者がズラリと集められていた。
そして、サエニウス家の現国王とその王弟、前国王、前王妃、そしてサエニウス家の縁戚の当主たちも。
集められていたのだが、その空気は重く、そこにいる者でまともな姿の者は一人もいない異様な雰囲気だった。その服装はみな乱れており、着の身着のまま連れてこられた様相であった。
「ああ、これで整ったの。今より断罪の時間じゃ。」
現王妃の叔母上は、その麗しの顔を少しも歪めること無く、そう言い放った。
「な、何を言っているのだ。私にこんな真似をして良いと思うているのか。私はお前の夫じゃぞ!」
謁見の間の玉座には王妃一人が座り、アンキウス家の騎士に押さえつけられて国王は他の臣下と一緒に膝をつかされている。
そう、ここに集められているノーア王国の国王と重鎮たちはみな一応にアンキウス家の騎士に取り囲まれ、膝をつかされていたのだ。
「誰が発言の許可を与えたかえ?」
王妃がそう言うと、冷たい眼差しで王を見下す。
「な、な、私はこの国の王だぞ。いくらお前がアンキウス家の出と言えども国王の妻になったのだ。つまりアンキウス家はサエニウス家の臣下へと降ったのだ!お前がこんなことする権限はないのだ!」
そう叫ぶ王に、
「な、何をお前は言っているのだ!そんな訳があるか!サエニウス家が臣下だ、これは決して変わらない。三門の盟約は誰が王に就こうが、誰を娶ろうが関係ないのだ!なんどもそう言ったであろう!」
そう、父親である前国王が自分の不甲斐ない息子の現国王に怒鳴り返した。
「ほーぉ。なにそういうことか。なるほどのう。」
そういうと、祖父のアンキウス家当主はズイズイと前に進み出て、王妃の玉座の横へと立った。
本当の王の帰還である。
「なんだ、サエニウス家は盟約の破棄を申し出たのだな!ミヌキウス家もそれに続くというのか。」
顎の髭を撫でながら、ゆっくりと目の前の者たちを見る。
「め、滅相もありません。」
ミヌキウス家の当主が叫んだ。
「我が一族は三門の盟約を順守しております。そうだな、お前たち。」
そう自分の一族を見回して叫ぶが、明らかにおかしな顔色をして震えている者が見受けられた。
「な、なんだ。財務大臣、内務大臣、宰相もどうした!お前ら、まさか!!」
信じられないと顔を覆いガクッと力無く崩れ落ちる当主の姿に俺は哀れみも感じない。
「なんじゃ、当主なのに知らぬのかえ?ここにいるお主の家門の者は、そこの愚者を操っておった者じゃ。」
王妃は冷たい目を向けた。
「昨日の夜は楽しかったかえ?ザビーナ国を辺境の祭りへと招待し、そこに来ていた乙女を五十人も拐って、報奨としてサエニウス家とミヌキウス家の者へと与えたな。ここにいる者はほとんどが乙女を貰い受けたな。その内二人、ザビーナ王国の姉妹王女も拐って、そこの痴れ者が王宮で犯してな。泣き叫ぶ妹王女を弄ぶ姿を姉王女に見せつけたのだったな。明日はお前だと宣った、そうだな。」
淡々と話をする王妃のその白い顔は能面のようであった。
(なんという、ザビーナは友好国じゃないか!何をやってるんだ)
「その痴れ者を立たせよ」
そう王妃が命令し騎士が現王を立たせる、一瞬の間に横にいるアンキウス家当主の剣を奪い、玉座から飛び降りて一閃、王妃が音もなく剣を振るった。
すると現王の足の腱が切られ、前に倒れこんだ。
シュタッ
血を払い、アンキウス家当主の鞘へと剣を戻す。
「い、痛い、いたーい!ギャー。王宮では殺傷沙汰はご法度」
現王は転がりながら泣き叫ぶ。
「何を馬鹿なことを。三門の盟約が破棄されたのだ、そんな約束などもうない。」
アンキウス家当主が無慈悲に告げる。
「お許しください、お許しください。お許しください、お許しください・・・」
前国王前王妃が床に額を擦るつけて謝る。
「お許しください、お許しください。ミヌキウス家の恥は始末致します。お許しください。」
ミヌキウス家の当主と嫡男、元老院議員の重鎮も必死に謝罪する。
「謝る者が違うな、いや、父上には謝罪が必要か。盟約の破棄は大問題じゃな」
王妃が冷静に答える。
「王妃様、お許しを。どうぞお許しください。ザビーナ王国へは謝罪と賠償を行います、ここの恥者たちは処刑致します。私の命も差し出します。どうぞ、一族にもう一度だけご猶予をお与え下さい。」
ミヌキウス家当主が謝罪をした。
「お、お前のその冷たい顔が恐怖で歪むのを見たかったんだー!いつもいつも見下して。仮初めとはいえ私は王だぞ、夫だぞ。それなのにーーーーーーぃいい。」
その謝罪を遮って、腱を切られて転がりながら、王が悪態をついた。
「お前、お前は黙れ、黙れー。」
前王が飛びかかって、口を押さえたが、その奇声はみなの耳に届いた。
「ほお、それが今回、ザビーナでの乙女狩りをしたお前の真相かえ。そうか、思う以上の愚か者だな。では、お前には泣き叫んで恐怖に歪む顔をずっと見せて貰おう。毒杯などではないく、苦痛で歪む顔を見せて過ごすのだぞ、多くの者にこの顛末を見せ続けよ。」
王妃が無情に言い放った。
「それが罰か。三門の盟約はどうする、王妃よ。」
アンキウス家当主が娘の王妃に尋ねる。
「次の王は私の息子故、そこまではキチンと守らせましょう。」
王妃がそう言うと頭を父親へ垂れた。
「では、ミヌキウス家はどうする。」
「家督をこの息子に継がせ、私以下ここにいる者、その家族は全員毒杯を。それ以外の者には周知徹底させます故どうか、温情を。」
「そうか、では再度三門の盟約はここに交わされた。この約束は違えることはどこの家門も罷り通らぬ。我らアンキウス家が国の安寧のため戦う間、お前たちはこのノーア王国のため精々励めよ。」
そう、真の王が告げる。
「「ははぁ。」」
王妃、ミキニウス家の者、俺と父は頭を垂れた。
王妃は息子のノバには帝王学だけでなく、三門の盟約についてもキチンと教えた。
足の腱を切られ、舌を抜かれた自分の父親がいつでもいるのだ。
愚か者の王は息子が成人し、婚姻して子を成すまで生き長えていた。
人目には触れぬように、王宮の奥でいつも椅子に据えられて、見せられていた。愚か者の行く末の姿を。
その世話役にはザビーナ王国の王女であった姉王女が侍女長としてあたった。
死ぬことむ出来ず、傷口が治ってくると、鋏でまた裂いた。
そして、丁寧に処置をして治ったら、また・・・
ただ生きる、生き恥とは生き地獄とは、こういうことかと具現化した姿を王宮の者に見せていた。
ザビーナの妹王女はその愚者の子を宿し生んだ。
その子はサエニウス家の分家として、サエニウス家だけを守る騎士の家門に据えられた。
マルクスの家である。
その家からププリウスの乳母も召し上げられ、キチンとした教育をププリウスが受けれないようにした。
アンキウス家の当主はザビーナの乙女に復讐する権利を与えていたので、それは時間をかけて成し遂げられたのであった。
「時に、ユリウス。なぜ一気に三門の盟約を破棄しなかったのかと思うかえ?」
ある日、王妃に呼ばれて参った王宮でそう聞かれた。
「ザビーナ王国の乙女の復讐をさせて上げるためでは。」
俺はそう答えたのだが、王妃は
「愚者は反省をすることができるかを知るため。そして、わらわの尊厳を回復するため。」
といった。
「それはどういう意味ですか?」
「そのままじゃ、好きとか嫌いとかそういう感情だけではない。嘘をつかれた者は信用を裏切られたという、その一点だけでも傷つくのだ。被害者だ。それなのに、嘘つき裏切り者は自分が得するためだけに人を欺き、裏切る。嘘つきだけが得をし、つかれた側は心を回復するのに必要ない努力を強いられる。そんな不公平があってたまるかえ?嘘つき裏切り者が辛い思いをして後悔をするその姿をみて、自分の尊厳を回復するその時まで、簡単に死など与えてはやらぬ。そう思ったのだ。ユリウス、お前がアンキウス家を継ぐ時、この顛末の顛末がわかるやもしれぬ、な。」
そう言った王妃は遠い目をしていた。
「はあ、三門の盟約は再度結ばれたというのに、愚か者の血は変わらぬな。」
俺はププリウスの愚かな行いとその対処をユリアに任せた。
結局、仮初めの王家サエニウス家は滅亡した。
あのザビーナの悲劇の後、一気に殺さず見世物にされた愚王を知っていた貴族たちは今回は決してププリウスに迎合しなかった。
だから処分されたのは、サエニウス家とミヌキウス家の本筋だけ。
ノーア王国の運営には全く支障がなかった。
時は来た
半島は統一され、敵対するエトルスはもう戦う力もない。
俺は王家をアンキウス家に取り戻し、ノーア王国をノーア帝国と名を変えた。
俺は初代ノーア帝国皇帝 ユリウス アンキウス ピウスとして即位した。
皇后にはエトルス王国最後の王女 アルジェがついた。
これによって、ノーア帝国はエトルス人が建国したノーア王国から脈々と連なる王朝であると誇ることが出きるようになった。
次世代はユリアの婿のルフスが ルフヌウス アンキウス ピウスとして即位するだろう。
国の安寧を獲るため、あやつも精々働くがいい。
それが、アンキウス家と民との盟約なのだから。
この教えが末の代まで続くことを願う、ピウスの名と共に。
我が子々孫々、約束を違えず、献身者として励めよ。
その性格は豪胆にして繊細、思考は深さ広さ共に限界を見ず、そして見目は神の造形物と吟われるほど。
幼い時より誰よりも賢きその者は、アンキウス家の最高傑作と呼ばれていた。
ある日、ユリウスは王宮へと呼ばれた。
王妃はアンキウス家の直系、ユリウスの父親と同腹の妹であり、叔母であった。
その叔母からの呼び出しをユリウスは、王都から離れた戦地で受けた。
「何てことだ!今から総攻撃をかける。そして今日中に王都へと大至急、帰るのだ!」
祖父の四代目アンキウス家当主が号令をかける。
この遠征にはあと数ヵ月を擁すると思われていたはずだが、残りたった一日とは!
そう思ったが、当主が決めたことだ。
我が家門において当主の命令は絶対なのである。
父も、ユリウスも隊を率いて戦った。
そして開戦から数時間で、敵国の首を取ると降伏を薦めた。
その時の祖父の覇気の凄まじいことといったら無かった。
もちろん、すぐに属国とすることを決定すると、全隊が王都へと取って返したのである。
「何が王都で起きたのですか。」
俺が父に尋ねるが、
「帰ってからだ。とにかく一秒でも早く戻るのだ。」
そして馬へ鞭を振るって更にスピードを上げたのだった。
そんなこんなで急ぎ王都の邸へと戻り、休む間もなく祖父と父と一緒に王宮へと馳せ参じた。
もちろん軍服のまま、鎧も兜もつけたまま、戦場で率いた隊をつれたまま、である。
王宮の謁見の間へと急ぎ進む当主と父のすぐ後ろをついていく。
すると、その場にはミヌキウス家の当主と時期当主、その嫡男、元老院議員の者、財務大臣、内務大臣、宰相とその一族の者がズラリと集められていた。
そして、サエニウス家の現国王とその王弟、前国王、前王妃、そしてサエニウス家の縁戚の当主たちも。
集められていたのだが、その空気は重く、そこにいる者でまともな姿の者は一人もいない異様な雰囲気だった。その服装はみな乱れており、着の身着のまま連れてこられた様相であった。
「ああ、これで整ったの。今より断罪の時間じゃ。」
現王妃の叔母上は、その麗しの顔を少しも歪めること無く、そう言い放った。
「な、何を言っているのだ。私にこんな真似をして良いと思うているのか。私はお前の夫じゃぞ!」
謁見の間の玉座には王妃一人が座り、アンキウス家の騎士に押さえつけられて国王は他の臣下と一緒に膝をつかされている。
そう、ここに集められているノーア王国の国王と重鎮たちはみな一応にアンキウス家の騎士に取り囲まれ、膝をつかされていたのだ。
「誰が発言の許可を与えたかえ?」
王妃がそう言うと、冷たい眼差しで王を見下す。
「な、な、私はこの国の王だぞ。いくらお前がアンキウス家の出と言えども国王の妻になったのだ。つまりアンキウス家はサエニウス家の臣下へと降ったのだ!お前がこんなことする権限はないのだ!」
そう叫ぶ王に、
「な、何をお前は言っているのだ!そんな訳があるか!サエニウス家が臣下だ、これは決して変わらない。三門の盟約は誰が王に就こうが、誰を娶ろうが関係ないのだ!なんどもそう言ったであろう!」
そう、父親である前国王が自分の不甲斐ない息子の現国王に怒鳴り返した。
「ほーぉ。なにそういうことか。なるほどのう。」
そういうと、祖父のアンキウス家当主はズイズイと前に進み出て、王妃の玉座の横へと立った。
本当の王の帰還である。
「なんだ、サエニウス家は盟約の破棄を申し出たのだな!ミヌキウス家もそれに続くというのか。」
顎の髭を撫でながら、ゆっくりと目の前の者たちを見る。
「め、滅相もありません。」
ミヌキウス家の当主が叫んだ。
「我が一族は三門の盟約を順守しております。そうだな、お前たち。」
そう自分の一族を見回して叫ぶが、明らかにおかしな顔色をして震えている者が見受けられた。
「な、なんだ。財務大臣、内務大臣、宰相もどうした!お前ら、まさか!!」
信じられないと顔を覆いガクッと力無く崩れ落ちる当主の姿に俺は哀れみも感じない。
「なんじゃ、当主なのに知らぬのかえ?ここにいるお主の家門の者は、そこの愚者を操っておった者じゃ。」
王妃は冷たい目を向けた。
「昨日の夜は楽しかったかえ?ザビーナ国を辺境の祭りへと招待し、そこに来ていた乙女を五十人も拐って、報奨としてサエニウス家とミヌキウス家の者へと与えたな。ここにいる者はほとんどが乙女を貰い受けたな。その内二人、ザビーナ王国の姉妹王女も拐って、そこの痴れ者が王宮で犯してな。泣き叫ぶ妹王女を弄ぶ姿を姉王女に見せつけたのだったな。明日はお前だと宣った、そうだな。」
淡々と話をする王妃のその白い顔は能面のようであった。
(なんという、ザビーナは友好国じゃないか!何をやってるんだ)
「その痴れ者を立たせよ」
そう王妃が命令し騎士が現王を立たせる、一瞬の間に横にいるアンキウス家当主の剣を奪い、玉座から飛び降りて一閃、王妃が音もなく剣を振るった。
すると現王の足の腱が切られ、前に倒れこんだ。
シュタッ
血を払い、アンキウス家当主の鞘へと剣を戻す。
「い、痛い、いたーい!ギャー。王宮では殺傷沙汰はご法度」
現王は転がりながら泣き叫ぶ。
「何を馬鹿なことを。三門の盟約が破棄されたのだ、そんな約束などもうない。」
アンキウス家当主が無慈悲に告げる。
「お許しください、お許しください。お許しください、お許しください・・・」
前国王前王妃が床に額を擦るつけて謝る。
「お許しください、お許しください。ミヌキウス家の恥は始末致します。お許しください。」
ミヌキウス家の当主と嫡男、元老院議員の重鎮も必死に謝罪する。
「謝る者が違うな、いや、父上には謝罪が必要か。盟約の破棄は大問題じゃな」
王妃が冷静に答える。
「王妃様、お許しを。どうぞお許しください。ザビーナ王国へは謝罪と賠償を行います、ここの恥者たちは処刑致します。私の命も差し出します。どうぞ、一族にもう一度だけご猶予をお与え下さい。」
ミヌキウス家当主が謝罪をした。
「お、お前のその冷たい顔が恐怖で歪むのを見たかったんだー!いつもいつも見下して。仮初めとはいえ私は王だぞ、夫だぞ。それなのにーーーーーーぃいい。」
その謝罪を遮って、腱を切られて転がりながら、王が悪態をついた。
「お前、お前は黙れ、黙れー。」
前王が飛びかかって、口を押さえたが、その奇声はみなの耳に届いた。
「ほお、それが今回、ザビーナでの乙女狩りをしたお前の真相かえ。そうか、思う以上の愚か者だな。では、お前には泣き叫んで恐怖に歪む顔をずっと見せて貰おう。毒杯などではないく、苦痛で歪む顔を見せて過ごすのだぞ、多くの者にこの顛末を見せ続けよ。」
王妃が無情に言い放った。
「それが罰か。三門の盟約はどうする、王妃よ。」
アンキウス家当主が娘の王妃に尋ねる。
「次の王は私の息子故、そこまではキチンと守らせましょう。」
王妃がそう言うと頭を父親へ垂れた。
「では、ミヌキウス家はどうする。」
「家督をこの息子に継がせ、私以下ここにいる者、その家族は全員毒杯を。それ以外の者には周知徹底させます故どうか、温情を。」
「そうか、では再度三門の盟約はここに交わされた。この約束は違えることはどこの家門も罷り通らぬ。我らアンキウス家が国の安寧のため戦う間、お前たちはこのノーア王国のため精々励めよ。」
そう、真の王が告げる。
「「ははぁ。」」
王妃、ミキニウス家の者、俺と父は頭を垂れた。
王妃は息子のノバには帝王学だけでなく、三門の盟約についてもキチンと教えた。
足の腱を切られ、舌を抜かれた自分の父親がいつでもいるのだ。
愚か者の王は息子が成人し、婚姻して子を成すまで生き長えていた。
人目には触れぬように、王宮の奥でいつも椅子に据えられて、見せられていた。愚か者の行く末の姿を。
その世話役にはザビーナ王国の王女であった姉王女が侍女長としてあたった。
死ぬことむ出来ず、傷口が治ってくると、鋏でまた裂いた。
そして、丁寧に処置をして治ったら、また・・・
ただ生きる、生き恥とは生き地獄とは、こういうことかと具現化した姿を王宮の者に見せていた。
ザビーナの妹王女はその愚者の子を宿し生んだ。
その子はサエニウス家の分家として、サエニウス家だけを守る騎士の家門に据えられた。
マルクスの家である。
その家からププリウスの乳母も召し上げられ、キチンとした教育をププリウスが受けれないようにした。
アンキウス家の当主はザビーナの乙女に復讐する権利を与えていたので、それは時間をかけて成し遂げられたのであった。
「時に、ユリウス。なぜ一気に三門の盟約を破棄しなかったのかと思うかえ?」
ある日、王妃に呼ばれて参った王宮でそう聞かれた。
「ザビーナ王国の乙女の復讐をさせて上げるためでは。」
俺はそう答えたのだが、王妃は
「愚者は反省をすることができるかを知るため。そして、わらわの尊厳を回復するため。」
といった。
「それはどういう意味ですか?」
「そのままじゃ、好きとか嫌いとかそういう感情だけではない。嘘をつかれた者は信用を裏切られたという、その一点だけでも傷つくのだ。被害者だ。それなのに、嘘つき裏切り者は自分が得するためだけに人を欺き、裏切る。嘘つきだけが得をし、つかれた側は心を回復するのに必要ない努力を強いられる。そんな不公平があってたまるかえ?嘘つき裏切り者が辛い思いをして後悔をするその姿をみて、自分の尊厳を回復するその時まで、簡単に死など与えてはやらぬ。そう思ったのだ。ユリウス、お前がアンキウス家を継ぐ時、この顛末の顛末がわかるやもしれぬ、な。」
そう言った王妃は遠い目をしていた。
「はあ、三門の盟約は再度結ばれたというのに、愚か者の血は変わらぬな。」
俺はププリウスの愚かな行いとその対処をユリアに任せた。
結局、仮初めの王家サエニウス家は滅亡した。
あのザビーナの悲劇の後、一気に殺さず見世物にされた愚王を知っていた貴族たちは今回は決してププリウスに迎合しなかった。
だから処分されたのは、サエニウス家とミヌキウス家の本筋だけ。
ノーア王国の運営には全く支障がなかった。
時は来た
半島は統一され、敵対するエトルスはもう戦う力もない。
俺は王家をアンキウス家に取り戻し、ノーア王国をノーア帝国と名を変えた。
俺は初代ノーア帝国皇帝 ユリウス アンキウス ピウスとして即位した。
皇后にはエトルス王国最後の王女 アルジェがついた。
これによって、ノーア帝国はエトルス人が建国したノーア王国から脈々と連なる王朝であると誇ることが出きるようになった。
次世代はユリアの婿のルフスが ルフヌウス アンキウス ピウスとして即位するだろう。
国の安寧を獲るため、あやつも精々働くがいい。
それが、アンキウス家と民との盟約なのだから。
この教えが末の代まで続くことを願う、ピウスの名と共に。
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