スキル【レベル転生】でダンジョン無双

世界るい

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第32話 辰巳、リスポーンのピンチ

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 何はともあれ、アンナの雑魚清掃力は凄まじかった。ホーミングミサイルはMPで自動生成されるため弾薬は無限なのだが、クールタイムが五分程かかる。あれを無限に撃たれてはモンスターたちも堪ったものではないだろう。そのほかにもグレネードやガトリングガン、アサルトライフル、スナイパーライフル、果てはアンチマテリアルライフルと呼ばれるバカデカい銃まで持っていた。

「……なに」

「いや、すげーな、と思って」

 当然、その全てを持ち運んでいたらガッチャガッチャっと邪魔でしょうがないだろうが、どうやらアンナはアンナで独自のアイテムボックスを持っているようだ。神話級恐るべし。

「でも、アンナさんのおかげで随分レベルが上がりましたね」

「確かに。アンナの攻撃で一瞬にして殲滅だからレベル上げの効率はめちゃくちゃ上がったな」

 四層は転送門をいくつかスルーして、雑魚狩りをした結果、一ノ瀬さんはレベル45、俺はレベル66まで上がっていた。

「だけど、なんかモヤモヤするんだよなぁ」

 二人の時までは火力は一ノ瀬さん任せだとしても、まだ役に立てていた感じがあった。しかし、今はアンナに寄生しているような状態だ。

「うーん、確かにアンナさん一人に戦わせてしまってますよね……」

「……私、余計なことしてる?」

 その言葉に対し俺は一瞬考え、

「いや、アンナは間違っていない。少なくとも俺は自分が弱いからそう思ってしまうんだ。だからまずはアンナより沢山雑魚敵を倒せるようになるのが俺の目標だ」

「フフ、そうですよ。アンナさんには助けてもらっています。でも、仲間だから私と辰巳君はアンナさんの役に立ちたいと思っているだけですよ」

「……ん」

 アンナはホッとしたようだ。神話級に小生意気でも心は繊細──って、オートマタなのに本当にまるで人間のようだ。

(いや、オートマタと考えるのはやめるか。一ノ瀬さんが言ったように人格がある。アンナは生きている仲間だ)

「よし、アンナ、グーを出せ」

「?」

 いきなりのことにアンナは困惑した表情だ。しかし言われた通り手をグーにし、俺へと向ける。

 コツン。

 俺はそこに自分の拳を軽く当てた。

「よーし、ボス倒しにいくかっ!」

「???」

 今の行為に何の意味があったか分からないであろうアンナは、更に怪訝な表情になり固まった。

 コツン。

「さ、アンナさん、行きましょう」

 一ノ瀬さんも固まったままだったアンナの拳に拳を合わせる。アンナは自分の拳を暫く見つめると、

「……フン」

 何やら照れくさそうに鼻で笑った。さぁ、五層は目前だ。


「ふぅ、ようやくボス部屋か。結構時間掛かっちゃったな。お腹も空いてきたし」

 スマホを取り出して現在時刻を確認する。十四時だ。若干というかかなりお腹も空いてきた。

「そうですね。でも、こんなこともあろうかと、お弁当を作ってきました。食べます?」

「……ボス部屋の前で?」

「まぁ、安全地帯ですし? 天気もいいですし?」

 ボス部屋は洞窟に扉がついてる風で、その直前の安全地帯は普通に山だ。本物の空と太陽というわけではないのだろうが、確かに天気も良い。風も爽やかだ。

「私もお腹空いた」

「「え?」」

 ダンジョン産のオートマタについては詳しくないが、まさか腹が減るとは思わなかった。

「オートマタって何を食べるんだ?」

「人と同じ」

「食べられないものとかあるのか?」

「食べたことないから分からない」

「そりゃそうか……。え、じゃあトイレも?」

「……タツミ、ホントにデリカシーない、最低」

「辰巳君、ちょっと今のは減点です」

 二人から怒られた。いや、でも気になるだろ。食ったものを全部消化してエネルギーに変えるとかあり得るだろうけどさ。ちなみにダンジョン内にはトイレが結構な頻度で生成されている。ポッターさんが人類の尊厳を守るためにまずは必要なものとして魔王に進言したとかしないとか。

「……すまん。じゃあまぁ少しお昼休憩してからボスに挑むとしようか」

「はい」

「ん」

 こうして俺たちはダンジョン内でランチをすることにした。一ノ瀬さんはカラフルはピクニックシートまで持ってきており、ダンジョン内の緊張感が一気になくなる。これではハイキングに来たのか、ダンジョン攻略に来たのか分からなくなる。そしてピクニックバスケットをいくつか取り出し、並べ始めた頃には──。

「すごいな、これ全部作ったの?」

 俺の心はハイキングに染まってしまっていた。

「はい。と、言っても簡単なものですけど……」

 サンドイッチにおにぎり、卵焼きやら唐揚げやらタコさんウィンナーまで。プチトマトやレタスにより色合いのバランスもすごく良い。

「……ヒカリ、天才」

「ありがとうございます。でも、美味しくなかったらゴメ──」

「んじゃ、いただきます」

「私もいただきます」

「……もう。はい、どうぞ」

 俺とアンナは待ちきれないとばかりに料理に手を出した。

「んまいっ」

「美味しい。ヒカリ大天才」

「フフ、ありがとうございます。あんまり慌てずに食べて下さいね」

「むぅー……んんっ」

 その忠告は時既に遅し、だ。おにぎりが喉につまってしまった。マズイ、このままではリスポーンしてしま──うぬぬぬぬ。

「はい、麦茶です。もう辰巳君言ったそばから……」

 一ノ瀬さんに背中を撫でてもらいながら、差し出された麦茶を一気飲みする。

「っぷはー。さんきゅ。危うくリスポーンするとこだった。いや、まぁ最悪リスポーンできるからいいかとも思ってしまったが」

「タツミバカ」

 そんな俺を冷めた目で見て、バカにするアンナ。

「あん? そういうこと言うなら、こうだっ」

 アンナの箸の先にいたタコさんウィンナーをヒョイっと奪い取り、パクッとモグモグ。

「……殺す」

 アンナのホーミングミサイルがキュイーンという音を立て始める。

「ダメです。二人とも仲良く食べないなら没収しますよ? はい、辰巳君は謝って、アンナさんも仲直りして下さい」

「「ぐぬぬぬぬぬ」」

 俺たちは睨み合いながらお弁当をチラチラと見る。没収されるか、頭を下げるか。食欲を取るか、プライドを取るか……。決まっている。

「「ごめんなさい」」

 俺たちは食欲を取った。

「はい、じゃあ仲良く食べましょうね」

「「はいっ」」

 俺たちは仲良く食べた。一心不乱にお弁当を食べた。だって、これうめーんだもんよ。

「「ふぅー。ご馳走様」」

「フフ、はい、お粗末さまでした。二人とも食べてる時も食べ終わった時もそっくりで本当に親子みたいでしたよ」

 そんなことを言われたのでアンナの方を見る。アンナも同時に見てきたようで視線が合う。まったく同じ姿勢で同じタイミングでお互いを見たものだから、鏡のようだ。

「……真似すんな」

「……こっちのセリフ」

 一応、悪態はついてみるがお互い覇気がない。お腹が満たされて喧嘩などする気が起きないからだ。

「ふぅー、でもお腹いっぱいになったら少し眠くなってきちゃいましたね……」

「昼寝を提案する」

「タツミ、今年一番イイこと言った」

 今年一番って、お前と出逢ってまだ数時間だ。え、まさか年末まで俺これ以上イイこと言わないと思ってる?

「フフ、ではおやすみなさい」

 一ノ瀬さんは寝た。よほど眠かったのだろう、横になってすぐに静かに寝息を立て始めた。

「「…………おやすみ」」

 一ノ瀬さんが寝た以上、二人で言い争っても虚しいことを悟ったため、横になる。どうやらアンナも同じ考えのようだ。そして俺たち三人はボス部屋の前でお昼寝をしたのだった。
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