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五皿目 元・勇者VS現・勇者
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──ということで。
突然だが、俺とリューオはトレーニングスペースにて、模擬戦をすることになった。
全く脈路がないが、理由はちゃんとある。
ことの経緯は膝枕で蕩けたアゼルを復活させた後、バーサーカーリューオが「フルのお前と戦ってみてぇ」と言い出したのが始まりだ。
俺は構わなかったのだが、そうするとアゼルが全力で拒否し始めた。
俺がやるなら自分がやると剣を召喚してグルルルと唸っていたが、元々トレーニングに付き合ってもらう約束だったし、俺も魔法のカンを取り戻したい。
別にいいと言った時のアゼルの顔は萎びていて、子犬のようだった。……かわいかったな。
そして現在ついてくると駄々をこねて仕事に戻らず、審判をしている魔王様。
こら、戦う前から俺の旗を上げるのをやめるんだ。堂々と八百長もいいところだぞ。
剣を構えて向かい合う俺とリューオは、模擬戦だが真剣勝負である。
お互いに部屋着という、コンビニでも行くのかと思う軽装だ。
「シャル」
「ん?」
聖剣──白く輝く魔族特攻の大剣を構えるリューオと違って、俺は形は刀っぽいが両刃の細身の剣を構えていた。
もう試合直前なのに、審判のアゼルが声をかけて、ちょこちょこと無言で近づいてくる。
「闇、物理攻撃耐性、魔法攻撃耐性」
「??」
「オイコラどんだけ堂々とドーピングしてんだ魔王テメェッ!」
八百長の次はドーピングをし始めたアゼルに、リューオはドガァンッ! と聖剣で地面にヒビを入れながら怒鳴った。
堂々としすぎて、ドーピングされている俺はポカンとしてしまったぞ。
ちゃんとお互いに手加減することはわかっているのに、過保護がすぎる。
だがリューオに怒鳴られてもアゼルはしれっとしたまま、凶悪顔で睨めつけかえす。
「アァ? アホかテメェ。シャルは病み上がりだぜッ! 手足もげたらどうすんだ!? か弱さの塊だぞ人間なめんなよ!」
「人間舐めてんのはテメェだろッ! 幼児じゃねぇんだよそれェッ! 成人男性なんだよそれェッ!」
「病み上がりって、一ヶ月前なんだがな。どうだ? むしろ筋トレを再開してから、また逞しくなってきたと思わないか?」
「なに言ってんだヒョロヒョロだ! 同じ人間でもあのクソ勇者の方がまだ屈強だぜ!」
「ひょ、ひょろ、ひょろ……。うぅ……あんなライトヘビー級ボクサーと比べるとそれはそうなるだろう……俺だって身長は百八十以上あるんだぞ……男心の侮辱だ……」
胸を張って逞しさをアピールしたのだが、散々な言われようだ。
俺は小さくもなければ、ひょろくもないぞ。現代では高身長だと言われていた。
せっかくここのところ筋トレの成果を感じていたのに、ショックでくっと唇を噛む。
リューオと比べるのがまずよくない。
「フンッ、馬鹿野郎。ちっせぇよ。俺は百八十五だかんな」
「ヨッシャ、俺百八十八だわ。勝ったな魔王」
「はぁ!? まだ成長期あるぜッ!」
俺がしょげている間に、もう何度目かの勇者VS魔王が始まりかけている。
どうしてこの二人はいつも戦いを始めるんだろうか。
と言うか魔族はたいてい大きいが、リューオは日本人のはずだぞ。
(なにを食べたらそんなに大きくなるんだ……?)
疑問符を浮かべながらも、決して軟じゃない自分が貧弱扱いされることに落ち込む。
閑話休題。
話を進めよう。
ここからしょげた俺が復活して二人の言い合いを終わらせ俺のバフを解いてもらうまで、半時間はかかった。
アゼルは早く仕事に戻らないと、またライゼンさんに小言を言われると思うんだがな。
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