304 / 902
五皿目 元・勇者VS現・勇者
11
しおりを挟む「──チッ……じゃあ、安全第一かすり傷一につき腕一本試合ィ……」
「ん? ん、ん……?」
「え? 待てそのレートおかしくね?」
「始め」
非常に不満そうなアゼルの言葉に、首を傾げる俺とリューオの間で、ドガァンッ! 破壊音がする。
開始の合図と共にお互いがスイッチをカチリと切り替え、素早く動いたのだ。
飛びかかって大剣を振るったリューオを避け、俺は死角に潜り込もうと走り出す。
しかし……凄い威力だな。
あの重量を振り回しながら、なんで素早く動けるんだ。
反応も早いしなによりパワーがある。
リューオは、強い。
だが速さなら俺に分がある。
魔力量が戻ったことから全身に身体強化魔法をかけてられるので、いつもよりずっと速いぞ。
今日の俺は負けるわけにはいかないのだ。
ちょっと頑張って動き回っている。
「オラオラ逃げんなよォッ!? せめて打ち合えやッ!」
戦闘モードなリューオが唸りながら剣を振れば、ドガッドゴッ! と地面が裂けた。
「バカ言え。それと俺の剣で打ち合ったら、もろともミンチじゃないか。避けるかギリギリ受け流すぐらいしかできない」
俺が身をかわせばヒュッと風を切る音の直後に、ドカァンッ! と爆発が起こる。
任意起動型爆破の魔法陣が爆ぜたのだ。
俺の得意技は罠で翻弄しながらの暗殺だからな。
「~~ッこのッ! シャァァァルゥッ、罠やめろッ! 殺すぜェッ!」
「め、目がガチだ……」
しかし俺を追いかけ飛んで跳ねて斬りつけてくるリューオが、喜色満面の殺人鬼みたいな表情をしている。
テンションが上がりすぎだ。
勇者が戦闘狂でいいものだろうか。
息つく間もない連撃に避けるかいなすかでやっとの俺は、隙を見てはリューオの着地点に魔法陣を飛ばし、罠を張る。
だがそれにかかるとウキウキマックスでブーストしてくるので、質が悪い。
(むむ……あれ踏んだら、ちょっとした地雷レベルで爆発するんだが……)
趣向を凝らしたほうが嬉しそうなのが、より怖い。
リューオはマゾヒストという奴なのかもしれないぞ。傷の回復も早すぎる。人間詐欺だ。
「炎ォッ! 纏えッ!」
「熱、っ」
観察しながら紙一重で攻撃を避けると、突然避けた剣身がゴォッ! と燃え上がった。
反射的に頭をブレさせ、飛び退く。
が、そこに聖剣の振りを利用した蹴りが飛んできて、虚をついた攻撃に流石に逃れることはできない。
(速い、これは避けれない、か……。ならば)
「加速」
「ハァッ!?」
タイミングをずらせばいいわけだ。
リューオの蹴りが俺の頭に到達する前に、足を上に振って、その動きに加速の陣を同時で貼り付けた。
ヒュンッ、と足を上げ、そのままタンッ、と地面に一瞬手をついて跳ね上がる。
「チッ!」
蹴りを空振った上に聖剣を振った遠心力が残っているリューオは、そのままグリンと身を捩って、即座に体勢を整えた。
だがその一瞬、俺から目を離している。
応援ありがとうございます!
11
お気に入りに追加
2,585
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる