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五皿目 元・勇者VS現・勇者

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「──チッ……じゃあ、安全第一かすり傷一につき腕一本試合ィ……」
「ん? ん、ん……?」
「え? 待てそのレートおかしくね?」
「始め」

 非常に不満そうなアゼルの言葉に、首を傾げる俺とリューオの間で、ドガァンッ! 破壊音がする。

 開始の合図と共にお互いがスイッチをカチリと切り替え、素早く動いたのだ。

 飛びかかって大剣を振るったリューオを避け、俺は死角に潜り込もうと走り出す。

 しかし……凄い威力だな。
 あの重量を振り回しながら、なんで素早く動けるんだ。

 反応も早いしなによりパワーがある。
 リューオは、強い。

 だが速さなら俺に分がある。

 魔力量が戻ったことから全身に身体強化魔法をかけてられるので、いつもよりずっと速いぞ。

 今日の俺は負けるわけにはいかないのだ。
 ちょっと頑張って動き回っている。

「オラオラ逃げんなよォッ!? せめて打ち合えやッ!」

 戦闘モードなリューオが唸りながら剣を振れば、ドガッドゴッ! と地面が裂けた。

「バカ言え。それと俺の剣で打ち合ったら、もろともミンチじゃないか。避けるかギリギリ受け流すぐらいしかできない」

 俺が身をかわせばヒュッと風を切る音の直後に、ドカァンッ! と爆発が起こる。

 任意起動型爆破の魔法陣が爆ぜたのだ。
 俺の得意技は罠で翻弄しながらの暗殺だからな。

「~~ッこのッ! シャァァァルゥッ、罠やめろッ! 殺すぜェッ!」
「め、目がガチだ……」

 しかし俺を追いかけ飛んで跳ねて斬りつけてくるリューオが、喜色満面の殺人鬼みたいな表情をしている。

 テンションが上がりすぎだ。
 勇者が戦闘狂でいいものだろうか。

 息つく間もない連撃に避けるかいなすかでやっとの俺は、隙を見てはリューオの着地点に魔法陣を飛ばし、罠を張る。

 だがそれにかかるとウキウキマックスでブーストしてくるので、質が悪い。

(むむ……あれ踏んだら、ちょっとした地雷レベルで爆発するんだが……)

 趣向を凝らしたほうが嬉しそうなのが、より怖い。

 リューオはマゾヒストという奴なのかもしれないぞ。傷の回復も早すぎる。人間詐欺だ。

「炎ォッ! 纏えッ!」
「熱、っ」

 観察しながら紙一重で攻撃を避けると、突然避けた剣身がゴォッ! と燃え上がった。

 反射的に頭をブレさせ、飛び退く。

 が、そこに聖剣の振りを利用した蹴りが飛んできて、虚をついた攻撃に流石に逃れることはできない。

(速い、これは避けれない、か……。ならば)

「加速」
「ハァッ!?」

 タイミングをずらせばいいわけだ。

 リューオの蹴りが俺の頭に到達する前に、足を上に振って、その動きに加速の陣を同時で貼り付けた。

 ヒュンッ、と足を上げ、そのままタンッ、と地面に一瞬手をついて跳ね上がる。

「チッ!」

 蹴りを空振った上に聖剣を振った遠心力が残っているリューオは、そのままグリンと身を捩って、即座に体勢を整えた。

 だがその一瞬、俺から目を離している。



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