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十三皿目 ラブリーキングに清き一票
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「──趣味でも仕事でもないが、コンテストに出ていた理由は教えられない。それはわかったが……トイレに引きこもるのも夜系の惚気も、もうしたら駄目だぞ?」
「……ガ、ガウ」
第三形態のアゼルの背に乗り、ゆっくり魔王城へ向かう道すがら。
予定通りエッチな惚気禁止令を言い聞かせると、アゼルは間を置いて控えめに肯定を返す。
あの後、会場を出てから熱いキスで変わらぬ愛をわからせてやると、アゼルはすっかり復活したのだ。
メイクを落とす為に一旦トイレで下ろすと、アゼルは着替えると言い個室に消える。
しかしそのままメンタルがレッドゲージに達し、また結界にひきこもってしまった。
羞恥や自己嫌悪の極みで一人反省会をするのは、アゼルの昔からの癖だそうだ。
あの手この手で宥めすかして引っ張り出すのにそれなりの時間を有したので、外はすっかり赤く染まっている。
夕焼小焼な空を駆けながらことの次第を尋ねても、アゼルはムスッとして答えてくれない。
このムスッとは恐らく機嫌が悪いのではなく、バツが悪いからだろうな。
不機嫌に不貞腐れたフリをして、言及逃れしようとしているのだ。
アゼルはうっかりやってしまって謝らないといけなくなる程、気まずいのと叱られるのが嫌なので、そっぽを向く。
このように精神年齢中学二年生なアゼルは、こまったさんに見えるだろう。
しかし内心ではオロオロと狼狽し、素直に謝れない性分を恥じているから、気にすることはない。
アゼルは背中に乗る俺に、お出かけ用に持っていたお茶を召喚して出す。
道中生っていた果物を鎌で刈りとって、綺麗にしてからよこしたりもする。
しれっとしながら甲斐甲斐しく世話を焼くので、黙っていても〝ごめんなさい〟と謝っているのだ。
西洋すもものような果物をゴクリと飲み込み、お茶をすすり、ホッと一息。
(うーん……謝り方が本当にかわいいな……)
空の水筒をそーっと回収するアゼルのモフモフな頭を見つめ、内心で呟いた。
どうして初代ラブリーキングになりたかったのかはわからないが、こんなにかわいいアゼルなら、トロフィーは確実だっただろう。
巫女服から普段着に着替えている俺は、うんうんと頷く。
なのでもそもそと動き、アゼルのモフモフな頭に渡しそびれたコインを乗せた。
「コンテストは無効になったが、俺の持点は全部お前に投じよう。俺にとっては、お前が世界一かわいいと思う」
「アゥ、ウオウ、ウォンッ」
魔物の言葉がわからなくても、アウアウと唸るアゼルが転げまわるのを我慢しているのはよくわかる。
やっぱりかわいい奴だと、優しく頭をなでた俺だった。
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