本日のディナーは勇者さんです。

木樫

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閑話 ガドと愉快な仲間たち

13(sideガド)

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 内心でごちて、呆れ返る。

 要するに、お前ら五十人分の魔力量と持久力が俺一人にあるってこった。

 殺さない縛りで竜種の魔族を五十人。
 そのぐらいないと軍の頭は務まらねぇの。

 あと、俺はモテてはねぇよ?

 娼館のマダムにお世話になるくらいで、俺の気まぐれについてきてくれる女はあんまいねぇかんな。

 ガドくん今フリーだ。
 膝枕はシャルにしてもらうんだ。当たり前よう。

「「「やーめーろっ! やーめーろっ!」」」
「息ぴったりィ」

 盛大なやめろコールを受けてニンマリする。それが目的ってわけか。いいだろう。

「……おうさ、イイぜェ? 空軍長官を辞めてやる。これでタローを返してくれんだろ? ン?」
「「「えっ!?」」」

 不敵に笑って受け入れれば、やめろコールをしていた竜人共が一斉に目を見張った。

「なっ、そんなアッサリ、っじゃなくて! も、物分りがイイくらいには賢いみたいだな……!?」
「なぁんでお前らは俺が言うこと聞いてやるとびっくらこくわけよォ」

 尻尾をゆらゆら。

 特に否定もせず頷いてやれば、軒並み目を丸くして凝視するなんて。
 ウシシ、失礼な奴らだな。

 俺にとっちゃあ、一時的に頷くことぐらい、どってことはない。

 タローを無事に連れて帰るのが先決で、城に帰ったらこっちのもんよ。

 人質がいなきゃもっと暴れられるし、そもそも口だけで実際は辞めなきゃイイわけだ。

 ニマニマと笑って悪いことを考えると、無意識に俺の目がスルっと蛇のように細くなる。

 嘘は吐かない、ってことは、吐けるってことなんだぜ、諸君。

 こういう屁理屈を教えたのは、だいたい悪いお兄ちゃん。大いに不遜であれ、ってな。

 クク。悪い子な俺を愛してくれよ?

 そんなあくどい目つきの俺に、リーダーはギュッと眉間にシワを寄せて、強く睨みつけた。


「駄目だな、お前は敗北をちゃんと認めきってねぇ目をしてやがる。お前が辞職の証拠を持ってくるまで、この女は預かるぜ! 期限は日没。万が一にも期限を過ぎたり、辞職しなかったり、これを誰かに話したりすれば……この女は俺たちの好きにさせてもらうからな?」

「…………クックック、はいよ」


 チッ。バカリンドブルムのくせに、バックレは気づくか。リーダーは多少頭がいい。

 ま、そりゃそうだな。
 正面切って誰も勝てないから物量作戦で来たわけだし、今完全勝利してェか。

 今は正午を過ぎたくらい。

 ここから魔王城に帰って辞表を出して魔王の判を貰い、ここに帰ってくるのにそう時間はかからない。

 誰にも話したら駄目。

 もし話してここに軍が乗り込んできたら、真っ先にタローを殺すだろう。

 辞めなければ同じ。
 なにか策を打とうにも時間がねぇか。うん、参ったな。

 背中から翼を取り出し、痛む体を叱咤してバサッ、と飛び上がった。

 目指すは魔王城。
 俺の背中は空っぽのままだ。

「……テェ~……」

 フラフラと飛びながら、考える。

 ──参った、困った。

 リンドブルムの村がこの近くにあることは、よく知っていた。

 まさかこう作用するとは、思わなかったが。

「……アァー……」

 意味もなく呻く。
 メソ、と泣きたくなる気分。俺はベコベコ。甘えてぇ。

 ──そうだな。
 一つ、昔話をしよう。俺がまだ生まれて間もない時の話だ。

 タローくらいの頃に預けられた、リンドブルムの村にいた時間について。

 子どもの俺は毒の扱いがまだ不慣れだったから、うっかり奴らを殺しかけることもあった。

 恨みを持ってるこの竜人たちを覚えてないのは、そういうことが多すぎて・・・・だ。

 食料を献上することで村に置いてもらってたが、凡庸な竜であるリンドブルムと違い、ヒュドルドは格段に強い上位魔族。

 強く、そしてその気になれば、内側から壊せる種族能力を持っている。
 誰も近寄ってはこなかった。



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