本日のディナーは勇者さんです。

木樫

文字の大きさ
703 / 901
閑話 ガドと愉快な仲間たち

12(sideガド)

しおりを挟む


 決闘と銘打ったなら、それはタイマン。

 律儀に一人ずつ飛びかかってくる竜を、俺は連続で相手にした。

 麻痺らせて叩きつけて眠らせてもぎ取って刳り込んで、ちぎっては投げちぎっては投げしていく。

 戦いを繰り返し、何時間だろう。

 もうどれだけ連戦したかはわからない。

 俺の体にはドンドンと傷がついて血が流れ、体力は消耗するし、魔力もなくなってくるしで、予想通りヤバイ展開だ。

 森の隅っこに負けて目を回し竜人に戻ったリンドブルムが、山と積み上がっている。

「ハッ……」

 それを全て相手取った俺は、半分くらいに減らしたところで、限界。

 ついに竜化が解けて省エネモードの竜人に戻ってしまい、ガクッ、と膝をついた。

「んーッ! ンーッんンッ! ンッ!」

 俺が膝をつくと、ガシャンッ、と金属が軋む音がする。

 タローは泣きながらも俺の言うとおりにひたすら我慢して我慢して、ずっと助けを待っていた。

 だが俺が負けたものだから、なりふり構わず檻に突進して駆け寄ろうとしたのだ。

 当然それは檻に阻まれ、ちっちゃいタローはコロンと後ろに転がった。

 しかし立ち上がれない体勢で尚も「ンーッンーッ」と、タローは泣きながらモダモダともぞつく。

 急に暴れだしたタローに檻を見張る竜人は驚き、「しーっ! 後であめちゃんやるから静かにしてろっ!」と檻をガツンッと蹴り上げた。

「オイ」
「オワッ!?」

 まったく、むかっ腹が立つぜ。

 人様が満身創痍だってのに風の槍を飛ばさせるってぇのは、マナー違反だと思うんだよなァ。

 ドスッ! とすぐそばへ突き刺さった風の槍に慌てふためく竜人を一瞥し、知らん顔をした。

 とはいえ膝をついた俺は、それ以上をすることができないのだ。

 この結果は、負けたことになる。
 敗者は従わなければなんねぇのよ。

 タローはまだ頭で檻の床をゴンゴンと攻撃していたが、そうすると竜人が怒り、俺がイラ立って無理をするとわかったらしく、また岩のように静かになった。

 もちろん竜人が投げ入れた飴には、プイッとそっぽを向く。

 フフン。タローはシャルの菓子で育ってるから、飴ひと粒程度では懐かねぇぜ?

 リーダーは目を回している敗者の山を苦々しく見て、部下に指示を出した。

 部下たちは土属性の治癒魔法を使った後、薬草をペッタペッタと流れ作業のように敗者の患部に貼り付けていく。

 ンじゃ、毒消し草も忘れずになァ~。

 土属性は治癒向きじゃねぇから、効果は薄いし毒は治らねぇよ。治癒向きなのは水。

「この鬼畜野郎! 皆頑張っていつかお前に目に物見せる為に筋トレしたんだぞ! もっと丁寧に倒せよ!」
「クックック、俺今スッゲェ痛いんだぜ。だからヤダね。バカデビに優しくボコせって言ったのに、アイツらやけに本気で泣きながら向かってくるからフラッフラよ。ショージキ、俺は今膝枕で癒やされたい」
「ぐぬぬぬぬ……ッ! 女の膝枕かッ!? させねぇ! 俺らとあんま変わらない若造のくせに空軍長官になんてなって、いい気になるなよシルヴァリウスッ! 敗者のテメェにはなぁ──空軍長官を辞退してもらうッ!」
「そうだそうだ! 肩書でモテるだけだろやめちまえ~! 街ブラデートすんなッ!」
「すんな! 当然のように俺が買ってやるよ的なやり取りをすんなッ! 爆ぜろモテ竜!」
「腐れイケメン!」
「恩知らず!」
「鳥頭!」

 本当のことを言っただけなのに怒るリーダーを筆頭に生き残っている竜人たちが、一斉に俺を罵倒し始める。

 おーおー。聞いてるフリするから好きなだけ言えよぅ。

 まったく。リンドブルム魔族大体五十人で連戦を挑んで、やっと俺一人膝をつかせることしかできねェってよォ。

 この肩書きの重さを知らねぇのかァ?
 空軍長官に求められる戦闘力ナメ過ぎだぜ。



しおりを挟む
感想 216

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

転生×召喚

135
BL
大加賀秋都は生徒会メンバーに断罪されている最中に生徒会メンバーたちと異世界召喚されてしまった。 周りは生徒会メンバーの愛し子を聖女だとはやし立てている。 これはオマケの子イベント?! 既に転生して自分の立ち位置をぼんやり把握していた秋都はその場から逃げて、悠々自適な農村ライフを送ることにした―…。 主人公総受けです、ご注意ください。

ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。 かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。 後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。 群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って…… 冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。 表紙は友人絵師kouma.作です♪

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

処理中です...