本日のディナーは勇者さんです。

木樫

文字の大きさ
747 / 901
十四皿目 おいでませ精霊王

14

しおりを挟む


 泣きそうなのを隠すため、キャットはいつも以上に睨みつけつつ、好意の対象を吐けと絡んだ。

 詰め寄られたゼオは、面倒くさそうに「どうでもいい」と答えて去る。
 家に帰って一人反省会をしたそうだ。

 けれど大事なのは、そのセリフ。

 ゼオは不満げなキャットに、仕方なく言葉を続けてくれた。

 曰く「敢えて男に行こうとは思わないが、好みのタイプであればどちらでも構わない」だそうだ。

 キャットは思った。
「どっちでもいいなら、頑張って告白すればワンチャンあるくない?」と。

 キャットは思った。
「ワンチャンあるなら、好みのタイプに近づけてから告白すればつまりパーペキじゃない?」と。

 キャットは思った。
「パーペキ決めたら実質両想いじゃん。そんじゃあ、両想いの人にご指導ご鞭撻よろしくお願いするしかなくない? 行くべや」と。

 そして行かれた先が、俺の部屋。

 目的は両想いどころか結婚していて、狙ってるのかと言う程押し寄せるあらゆる困難を乗り越えた、カップルの片割れ。

 すなわち──俺だったというわけだ。……完全に人選ミスだ。

「ゼオ様にガチ恋中なんて、シャル様以外誰にも言ってませんし……お、俺はこんな性格でしょう? 海軍長官様や宰相様以外の魔王城の幹部様たちには、絶対緊張モードになってしまって……! 部下には相談できねえし、うう、うう……っ!」
「な、泣かなくてもいいんだ。んんと、ほら、フロランタンを食べてお茶を飲むといい。喉に詰まらないように、そっとな」
「ふぐっ、むぐむぐ、ごくん。なにこれすげぇうまいですぅぅぅ……ッ!」
「ああっ、泣くな泣くなっ、お世辞はいいんだっ」
「美味しすぎて泣いたぁぁぁぁ……!」

 フロランタンを頬袋パンパンに詰め込みダパーと涙するキャットに、慌てて紅茶を注いでやってゆっくり飲むように言う。

 うう、泣く程口に合わなかったか。

 今日は甘さ多めなんだが、失敗したかもしれない。今度は甘さ控えめにしよう。

 ゴホン。

 キャットが心を落ち着かせている間に、俺の都合を詳しく説明しよう。

 どうして俺が人選ミスなのかというと、俺は頗る恋愛ベタだからである。

 ユリスと話をしていると、毎度思うんだけどな。これはわかるだろう?

 何度も言うが、初めての彼女に振られている俺。

 そして駆け引きができない。
 つまり好きな人を否定することができない。

 全てどんと来い、受け入れたい。尽くしたい。かわいがりたいし、愛したい。思った時に言葉にしたい。

 リューオ曰く真面目馬鹿な俺だから、言われたことを愚直にそのまま受け取ってしまう。

 その裏側の本当の意味を察してあげることが、苦手だ。

 気が利かなくて面白みがないと言われる所以である。

 冗談や戯れるのも好きなんだが……うん、あまり伝わらない。

 アゼルくらいなにもかも受け入れてくれるか、リューオくらいなにもかも自分ルールでツッコんでくれる人じゃないと、冗談もままならない残念な男だ。

 キャットは俺の告白を知らないだろう?

 俺の告白は頭がぶっ飛んでいる時に我慢ならなくて、好きすぎて言ってしまったドジな告白だった。

 なに一つ計画通りにいかなかった。
 結果オーライだが、完全に失敗例だと思う。




しおりを挟む
感想 216

あなたにおすすめの小説

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。

山法師
BL
 南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。  彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。  そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。 「そーちゃん、キスさせて」  その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。

その男、ストーカーにつき

ryon*
BL
スパダリ? いいえ、ただのストーカーです。 *** 完結しました。 エブリスタ投稿版には、西園寺視点、ハラちゃん時点の短編も置いています。 そのうち話タイトル、つけ直したいと思います。 ご不便をお掛けして、すみません( ;∀;)

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

塔の魔術師と騎士の献身

倉くらの
BL
かつて勇者の一行として魔王討伐を果たした魔術師のエーティアは、その時の後遺症で魔力欠乏症に陥っていた。 そこへ世話人兼護衛役として派遣されてきたのは、国の第三王子であり騎士でもあるフレンという男だった。 男の説明では性交による魔力供給が必要なのだという。 それを聞いたエーティアは怒り、最後の魔力を使って攻撃するがすでに魔力のほとんどを消失していたためフレンにダメージを与えることはできなかった。 悔しさと息苦しさから涙して「こんなみじめな姿で生きていたくない」と思うエーティアだったが、「あなたを助けたい」とフレンによってやさしく抱き寄せられる。 献身的に尽くす元騎士と、能力の高さ故にチヤホヤされて生きてきたため無自覚でやや高慢気味の魔術師の話。 愛するあまりいつも抱っこしていたい攻め&体がしんどくて楽だから抱っこされて運ばれたい受け。 一人称。 完結しました!

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。 かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。 その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。 ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。 BLoveさんに先行書き溜め。 なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

処理中です...