新緑の光と約束~精霊の愛し子と守護者~

依羽

文字の大きさ
4 / 7

4.再会

しおりを挟む
side:レオ

 今日、最近ではすっかり恒例になったルカの手作り弁当を持ち、いつも通り狩りに出かけた。ここ数年は鍛錬も兼ねて、ひとつ山を越えた先にある森まで範囲を広げている。――ルカに迎えに来てもらえない距離になってしまったことは寂しいけれど、効率よく強い魔物を狩れる方が都合がいい。
 狩りをし、解体をし、ハンターギルドで換金する素材と自分たちが食べる分の肉を別に分ける。昔は獲った魔物を担いで帰っていたけれど、今では地道に貯めた金貨で買った魔法バッグに全て収納することができる。高い買い物だったが、これのお陰で随分と楽になったものだ。
 ある程度作業を終え、ルカの弁当――今日は卵とレプス肉のサンドイッチだ――を食べていた頃、雲行きが怪しくなってきた。ハンターギルドに寄るのは明日にして今日は真っ直ぐに帰ることを決め、帰り支度を急いだ。

 
 *
「うわああああぁっ」

 案の定、雨が降り始めて来たので少し駆け足で家に向かっていると、家まであと数キロというところで誰かの叫び声が聞こえた。思わず声が聞こえた方に向かうと、少年がウルルスに襲われていた。ウルルスは、四つ足の魔物とは違い二本足で立つ魔物だ。全長2m以上あるものも多くて、皮膚が硬く力も強い。また、走るときには四つ足になるため足も早く、1度狙われてしまうと困難な厄介なやつだ。

「逃げろ!!!」

 矢を射りながら叫ぶと、少年がこちらに気付く。水魔法を纏わせた矢がウルルスの腕に刺さり、ウルルスもこちらを見た。が、それも一瞬だけですぐに少年の方に向き直す。どうやら狙いを変えるつもりはないらしい。
 仕方がないので、地魔法を使いウルルスの足を固定し時間を稼ぐ。

「何をしている!早く逃げるんだ!」

「あ……あ……、っ」

 どうやら腰を抜かしてしまっているらしい。あれだけの巨体に襲われてしまったら無理もないが、あの状態の少年を助けるとなると早急にウルルスを倒すしかない。もう1度、今度は先ほどよりも強い水魔法を纏わせて矢を射る。
 それが胸に命中し、ウルルスが倒れた。ホッとして少年の元に駆け寄る。

「大丈夫?」

「お陰様で……すみません、助けてくださりありがとうございます」

「気にしないで。困ったときはお互い様だからね。でも、何があったの?」

「ちょっと……家にいるのが辛くて。気分転換に外に出たんですけど、山に入ったら道がわからなくなってしまって。雨が降って来たし早く帰ろうと思ったんですけど……アイツが、現れて」

「そっか。怖かったね、でももう大丈夫。ずぶ濡れだし、1回俺の家においでよ。ここ、真っ直ぐ行ったらすぐだから」

 そう言って、手を差し出したとき――

「危ない……っ!」

 背中が、熱くなった。一瞬、何が起きたかわからなかったが、後ろを振り向くとウルルスが手を振り上げ、もう一度こちらに振り下ろそうとしているところだった。
 咄嗟に弓を引く。魔法を纏わせる余裕はなかった――はずだった。弓を射るとき、今まで見たことのない緑色の光が矢を覆う。それは一直線にウルルスに向かい、すごい勢いで頭を撃ち抜いた。

 ――覚えているのは、そこまでだった。そこで意識は途切れ、気が付いたら目の前にルカ天使がいた。
 泣いているルカを宥めながら状況を聞くと、どうやら俺は気を失い、家まで背負われてきたらしい。だが、背中をえぐられる痛みを感じた記憶はあるのにどこも痛くない。破れたはずの服にも、傷ひとつないのはどうしてなんだろう。

「レオにぃ、痛いとこない?」

「うん、どこも痛くないよ。君、ここまで連れて来てくれてありがとう。大変だったでしょ?ごめんね」

 レオの頭を撫で安心させながら、祖父母と並んで立ったままでいる少年に声を掛ける。

「い、いえ!僕の方こそ、助けていただきありがとうございます。貴方が助けてくださらなかったら僕は死んでいました……っ危ない目に合わせてしまい、申し訳ありませんでした」

「わ、やめてよ!顔を上げて。ほら、俺はもう大丈夫だから。ね?」
 
 膝と手を床につき、額をこすりつけるように謝罪する少年に慌ててしまう。あれは、油断した自分の責任だ。
 反省していると、祖母がタオルと着替えを2人分持ってきてくれた。着替えをしつつ、恐縮しながら着替えを受け取っている少年の顔をじっと見る。……どこか、見覚えのある少年の顔。燃えるような赤い髪。見覚え、というか、面影、というか……。
 
 
 *
「ところで、君の名前は?」

 祖母が出してくれた温かいスープに一息つきながら、改めて少年と向かい合う。

「あ、申し遅れました。僕はフェリクス。フェリクス・フラムベルトと申します」

「――っフェリクス・フラムベルト……」

 少年の後ろで、祖父母も息を呑む。フラムベルト……それは、俺の生家であり。フェリクスは、俺の弟の名前だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

役立たず聖女見習い、追放されたので森でマイホームとスローライフします ~召喚できるのは非生物だけ?いいえ、全部最強でした~

しおしお
ファンタジー
聖女見習いとして教会に仕えていた少女は、 「役立たず」と嘲笑され、ある日突然、追放された。 理由は単純。 彼女が召喚できるのは――タンスやぬいぐるみなどの非生物だけだったから。 森へ放り出され、夜を前に途方に暮れる中、 彼女は必死に召喚を行う。 呼び出されたのは、一体の熊のぬいぐるみ。 だがその瞬間、彼女のスキルは覚醒する。 【付喪神】――非生物に魂を宿らせる能力。 喋らないが最強の熊、 空を飛び無限引き出し爆撃を行うタンス、 敬語で語る伝説級聖剣、 そして四本足で歩き、すべてを自動化する“マイホーム”。 彼女自身は戦わない。 努力もしない。 頑張らない。 ただ「止まる場所が欲しかった」だけなのに、 気づけば魔物の軍勢は消え、 王城と大聖堂は跡形もなく吹き飛び、 ――しかし人々は、なぜか生きていた。 英雄になることを拒み、 責任を背負うこともせず、 彼女は再び森へ帰る。 自動調理、自動防衛、完璧な保存環境。 便利すぎる家と、喋らない仲間たちに囲まれた、 頑張らないスローライフが、今日も続いていく。 これは、 「世界を救ってしまったのに、何もしない」 追放聖女の物語。 -

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

今度生まれ変わることがあれば・・・全て忘れて幸せになりたい。・・・なんて思うか!!

れもんぴーる
ファンタジー
冤罪をかけられ、家族にも婚約者にも裏切られたリュカ。 父に送り込まれた刺客に殺されてしまうが、なんと自分を陥れた兄と裏切った婚約者の一人息子として生まれ変わってしまう。5歳になり、前世の記憶を取り戻し自暴自棄になるノエルだったが、一人一人に復讐していくことを決めた。 メイドしてはまだまだなメイドちゃんがそんな悲しみを背負ったノエルの心を支えてくれます。 復讐物を書きたかったのですが、生ぬるかったかもしれません。色々突っ込みどころはありますが、おおらかな気持ちで読んでくださると嬉しいです(*´▽`*) *なろうにも投稿しています

『婚約なんて予定にないんですが!? 転生モブの私に公爵様が迫ってくる』

ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。 現代で過労死した原田あかりは、愛読していた恋愛小説の世界に転生し、主人公の美しい姉を引き立てる“妹モブ”ティナ・ミルフォードとして生まれ変わる。今度こそ静かに暮らそうと決めた彼女だったが、絵の才能が公爵家嫡男ジークハルトの目に留まり、婚約を申し込まれてしまう。のんびり人生を望むティナと、穏やかに心を寄せるジーク――絵と愛が織りなす、やがて幸せな結婚へとつながる転生ラブストーリー。

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

処理中です...