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5. フラムベルト家
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side:レオ
「レオにぃ、どうしたの?」
「いや、何でもないよ。フラムベルトっていうと、男爵家だよね?今頃ご両親は心配しているんじゃないのかな」
「そう、ですね……心配してるかな……」
「そういえば、家にいたくないって言ってたね。何かあったの?」
「何、というわけでもないんですけど……」
俺の存在があの家から消されて、もう8年になる。フェリクスも、一目では気付けないくらい成長していた。こんな偶然の再会はさすがに予想外だったが、可愛かった弟の成長は素直に嬉しく思う。……だからこそ、もし何かを憂いているのなら、力になりたい。
「……お兄さんは、『レオ』さんなんですか?」
「うん、そうだよ。俺はレオで、この子は弟のルカ。祖父母と4人で、ここに暮らしているんだ」
「……僕にも、兄がいたんです。ちょうどレオさんくらいの年齢で、『レオナルド』という名前でした。雰囲気もレオさんに似ていた気がします」
「そうなんだ、偶然だね。でも、過去形ってことは、今はいないってこと?」
「はい……。僕が8歳のときに事故で……」
「亡くなった?」
「そう、みたいです……。元々は兄が家を継ぐ予定だったんですが、兄が亡くなったので僕が代わりに。……うちは先祖代々火属性に特化した家系で、僕も火属性だから両親からは期待されているんです。だけど、小さい頃からずっと、家庭教師たちには兄と比べられて来ました。兄はとても優秀な人だったみたいで」
「そっか。それは辛かったね」
「いえ、それについてはあまり気にしていないんです。僕も、優秀だった兄のことは何となく覚えているので。とても優しい人だった、っていうことも。だからこそ兄が亡くなったって聞いたときはショックで……でも最近では、そのことが疑問に思えて来ちゃって」
「……何で、そう思ったの?」
「あの頃はよくわかっていなかったんですけど、家庭教師の態度や使用人たちの何気ない言葉とかが今思うと、あれ?って思うことが多くて。もしかしたら兄は、僕のせいで……」
「ねぇ、フェリ。聞いてくれる?」
「――っ!」
「フェリは、家が嫌い?」
「……わかりません。何不自由なく生活をさせてもらっていることに感謝はしています。ただ、もし、僕の考えていることが当たっていたら。僕に与えられているものが、兄の犠牲の上にあるものだったら。そう考えると、両親にも、それを知らずにいた自分にも、やりきれない嫌悪感を抱いてしまうんです……!」
「うん、その感覚はとても大事だと思うよ。どんな理由があろうと、“越えてはいけない一線”がある。だけど、過去はもう変えることができない。フェリがするべきなのは、未来を見据えることじゃないかな」
「未来を……?」
「そう、未来を。フェリが感じた違和感を、憤りを、忘れずにいて。いつかフェリに家族ができたとき、決して同じことが繰り返されないように」
「……っはい!」
「あとね、フェリが自分を責める必要なんてどこにもないんだよ。子どもだったんだ、大人の歪みに気付けるわけがない」
「でも、」
「それにね、『レオナルド』はもういなくなってしまったかもしれないけれど。『レオ』はずっとここにいるから。またいつでも遊びにおいで」
「ぼくも!ぼくもいるよ!一緒にあそぼうっ」
「ふふ。そうだね、ルゥもいるね。お祖父様とお祖母様も、フェリが来てくれたらとても嬉しいと思うよ」
「お祖父様、お祖母様……?もしかして……」
「ああ、いつでも来てくれ。今度はゆっくりご飯でも食べながら話をしよう。ばあさんの料理は絶品だぞ」
「そのときは腕によりをかけて料理を作るわ。好きな食べ物とか嫌いな物とか、ぜひ教えてちょうだいね」
「はい……!ありがとうございます……っ」
はっきりと言及することはできないが、俺たちの思いは伝わっただろう。フェリが自分を責める必要なんて全くないのに……全てはあの両親が元凶なのだから。
*
「――さて、雨はやんだが、落ち着いたか?」
「……はい。すみません、ご迷惑をお掛けしてしまって」
「何を言っているんだ。誰も迷惑なんて思ってないぞ」
「そうだよ。何なら泊まって行ってもいいんだよ?」
「お泊まり?フェリお兄ちゃん、お泊まりするの?」
「お泊まりできたら嬉しいけどね。今日は帰らないと」
残念そうに笑うフェリの顔からは、先ほどの思い詰めたような表情は見えなくなっていた。
「そろそろお暇します。この服は、お借りしていても良いでしょうか?」
「もちろん。でも、帰り道は大丈夫?ここに馬車を呼ぶことはできないから、近くの村まで送って行こうか?」
「いえ、大丈夫です。……今度は、大きな魔物に出くわさないように気を付けて帰ります。学校でいくら点数を取れていても、実戦は全くの別物だということを痛感しました。レオさんは、本当にすごいです」
「ありがとう。もし実戦で鍛えたくなったら言ってね、一緒に鍛錬しよう」
「そのときはぼく、お弁当作るね」
「ふふ。ありがとう、ルカ」
「そういえば……さっき、レオさんを治した緑色の光は、」
「フェリ。俺もまだハッキリわかっていないけれど、今日ここで見たことは秘密にしてくれるかな?」
「っ!はい、わかりました。他言しないと誓います」
「ありがとう。気を付けて帰ってね」
「本当にありがとうございました。レオさん、ルカくん。お祖父様もお祖母様も……会えて嬉しかったです。また、遊びに来ます」
「うん、待ってるよ」
「今度はお泊まりね?」
「大変なこともあると思うが、無理をしすぎるんじゃないぞ」
「疲れたらいつでも息抜きにいらっしゃいね」
それぞれがフェリに声を掛け、見送る。何度も振り返り、大きく手を振り続けてるルカに手を振り返しながら、フェリは帰って行った。
――俺たちこそ、会えて嬉しかったよ。
「レオにぃ、どうしたの?」
「いや、何でもないよ。フラムベルトっていうと、男爵家だよね?今頃ご両親は心配しているんじゃないのかな」
「そう、ですね……心配してるかな……」
「そういえば、家にいたくないって言ってたね。何かあったの?」
「何、というわけでもないんですけど……」
俺の存在があの家から消されて、もう8年になる。フェリクスも、一目では気付けないくらい成長していた。こんな偶然の再会はさすがに予想外だったが、可愛かった弟の成長は素直に嬉しく思う。……だからこそ、もし何かを憂いているのなら、力になりたい。
「……お兄さんは、『レオ』さんなんですか?」
「うん、そうだよ。俺はレオで、この子は弟のルカ。祖父母と4人で、ここに暮らしているんだ」
「……僕にも、兄がいたんです。ちょうどレオさんくらいの年齢で、『レオナルド』という名前でした。雰囲気もレオさんに似ていた気がします」
「そうなんだ、偶然だね。でも、過去形ってことは、今はいないってこと?」
「はい……。僕が8歳のときに事故で……」
「亡くなった?」
「そう、みたいです……。元々は兄が家を継ぐ予定だったんですが、兄が亡くなったので僕が代わりに。……うちは先祖代々火属性に特化した家系で、僕も火属性だから両親からは期待されているんです。だけど、小さい頃からずっと、家庭教師たちには兄と比べられて来ました。兄はとても優秀な人だったみたいで」
「そっか。それは辛かったね」
「いえ、それについてはあまり気にしていないんです。僕も、優秀だった兄のことは何となく覚えているので。とても優しい人だった、っていうことも。だからこそ兄が亡くなったって聞いたときはショックで……でも最近では、そのことが疑問に思えて来ちゃって」
「……何で、そう思ったの?」
「あの頃はよくわかっていなかったんですけど、家庭教師の態度や使用人たちの何気ない言葉とかが今思うと、あれ?って思うことが多くて。もしかしたら兄は、僕のせいで……」
「ねぇ、フェリ。聞いてくれる?」
「――っ!」
「フェリは、家が嫌い?」
「……わかりません。何不自由なく生活をさせてもらっていることに感謝はしています。ただ、もし、僕の考えていることが当たっていたら。僕に与えられているものが、兄の犠牲の上にあるものだったら。そう考えると、両親にも、それを知らずにいた自分にも、やりきれない嫌悪感を抱いてしまうんです……!」
「うん、その感覚はとても大事だと思うよ。どんな理由があろうと、“越えてはいけない一線”がある。だけど、過去はもう変えることができない。フェリがするべきなのは、未来を見据えることじゃないかな」
「未来を……?」
「そう、未来を。フェリが感じた違和感を、憤りを、忘れずにいて。いつかフェリに家族ができたとき、決して同じことが繰り返されないように」
「……っはい!」
「あとね、フェリが自分を責める必要なんてどこにもないんだよ。子どもだったんだ、大人の歪みに気付けるわけがない」
「でも、」
「それにね、『レオナルド』はもういなくなってしまったかもしれないけれど。『レオ』はずっとここにいるから。またいつでも遊びにおいで」
「ぼくも!ぼくもいるよ!一緒にあそぼうっ」
「ふふ。そうだね、ルゥもいるね。お祖父様とお祖母様も、フェリが来てくれたらとても嬉しいと思うよ」
「お祖父様、お祖母様……?もしかして……」
「ああ、いつでも来てくれ。今度はゆっくりご飯でも食べながら話をしよう。ばあさんの料理は絶品だぞ」
「そのときは腕によりをかけて料理を作るわ。好きな食べ物とか嫌いな物とか、ぜひ教えてちょうだいね」
「はい……!ありがとうございます……っ」
はっきりと言及することはできないが、俺たちの思いは伝わっただろう。フェリが自分を責める必要なんて全くないのに……全てはあの両親が元凶なのだから。
*
「――さて、雨はやんだが、落ち着いたか?」
「……はい。すみません、ご迷惑をお掛けしてしまって」
「何を言っているんだ。誰も迷惑なんて思ってないぞ」
「そうだよ。何なら泊まって行ってもいいんだよ?」
「お泊まり?フェリお兄ちゃん、お泊まりするの?」
「お泊まりできたら嬉しいけどね。今日は帰らないと」
残念そうに笑うフェリの顔からは、先ほどの思い詰めたような表情は見えなくなっていた。
「そろそろお暇します。この服は、お借りしていても良いでしょうか?」
「もちろん。でも、帰り道は大丈夫?ここに馬車を呼ぶことはできないから、近くの村まで送って行こうか?」
「いえ、大丈夫です。……今度は、大きな魔物に出くわさないように気を付けて帰ります。学校でいくら点数を取れていても、実戦は全くの別物だということを痛感しました。レオさんは、本当にすごいです」
「ありがとう。もし実戦で鍛えたくなったら言ってね、一緒に鍛錬しよう」
「そのときはぼく、お弁当作るね」
「ふふ。ありがとう、ルカ」
「そういえば……さっき、レオさんを治した緑色の光は、」
「フェリ。俺もまだハッキリわかっていないけれど、今日ここで見たことは秘密にしてくれるかな?」
「っ!はい、わかりました。他言しないと誓います」
「ありがとう。気を付けて帰ってね」
「本当にありがとうございました。レオさん、ルカくん。お祖父様もお祖母様も……会えて嬉しかったです。また、遊びに来ます」
「うん、待ってるよ」
「今度はお泊まりね?」
「大変なこともあると思うが、無理をしすぎるんじゃないぞ」
「疲れたらいつでも息抜きにいらっしゃいね」
それぞれがフェリに声を掛け、見送る。何度も振り返り、大きく手を振り続けてるルカに手を振り返しながら、フェリは帰って行った。
――俺たちこそ、会えて嬉しかったよ。
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