日本語しか話せないけどオーストラリアへ留学します!

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Chapter #2

待ち合わせ①

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 その日のうちに、私はカヒンと連絡を取った。

 私の下手くそな説明から何とか状況を理解してくれた彼は、金曜日の件を快く承諾してくれる。

(でもやっぱり、二人きりで行きたかったなぁ……)

 後悔はあるものの、今さら考えたって仕方がない。



 そうして二日後、お祭りの日はついにやってきた。





「Hey, Misaki! You’re late!」

 授業を終えて一度帰宅すると、すでにオリバーはレベッカの家に我が物顔で入り浸っていた。
 ソファの肘置きに片足を乗せる体勢で座り、スマホをいじりながらお菓子をむさぼっている。
 いくら何でも遠慮がなさすぎるのでは?

 街の方ではすでにお祭りが始まっているらしい。
 けれど、私たちが特に目的としているショーやコンサートは基本的に夜からなので、舞恋たちとは一度家に荷物を置いてから改めて集まろう、ということになっていた。

 せっかく帰って来たので、できればシャワーを浴びたいな——なんて思ったけれど、オーストラリアでは毎年水不足が深刻だということを思い出して踏みとどまる。
 ここは我慢だ。





 オリバーの案内で、最寄りのバス停へと向かう。
 場所は家から歩いて五分ほどの所にあり、途中で公園の抜け道を使うとさらにショートカットができた。

 今日はお祭りがある上に金曜日ということで、バスを待っている人の数もそこそこ多い。

 人の間を縫って時刻表を確認しに行くと、次の便まではあと五分ほどだった。

 良いタイミングだな、と思って大人しく待っていたが、それから十分ほど経ってもなぜかバスが来る様子はない。

「The bus is late……」

 遅いなぁ、と私がスマホで時間を確認しながら呟くと、

「The buses never come on time.」

 時間通りに来るわけないよ、とオリバーが答える。

 彼曰く、バスが遅れるのは当たり前で、二十分から三十分ほどの遅れは誤差の範囲だという。
 さらにはたまに予定時刻よりも早く出発するときもあり、時刻表なんて最初からアテにしない方がいいとさえも。

「そんなぁ……」

 やはり海外の感覚だなあ、と改めて思う。

 時刻はすでに四時を過ぎているので、このままだと待ち合わせの五時に間に合わなくなってしまう。

 結局、バスは二十分ほど遅れて停留所へとやってきた。
 日本のように遅延のアナウンスがあるわけでもなく特に急ぐ様子もなく、そして誰も文句を言うこともなくバスは運行する。
 車内は賑やかで、誰もが文字通りお祭り気分だった。

 やがて目的の『セントラル駅』に着いたのは約束の五時ちょうどだった。
 ここから待ち合わせの場所まではおそらく歩いて二、三分——と思いきや、どうやら降車場所までが日によって変わるらしく、歩いて五分ほどの場所に降ろされる。
 一体どこまで気分屋なのか。

「Oliver! Hurry up!」

 全く急ぐ気配のないオリバーの手を引っ掴んで、私は走った。

 遅れることを舞恋に電話しようかとも考えたが、こうなったらもう走った方が早い。

 しかし、息を切らしてやっと辿り着いたものの、待ち合わせ場所には誰もいなかった。

「あれっ……?」

 もしかしてもう先に行ってしまったのだろうか。

 不安になっていると、手元のスマホがブルブルと震えた。
 舞恋からの着信だ。

「もしもし、舞恋!? ごめん、私いま着いたところで——」

「ごめーん、みさきち!!」

 私の声を遮って、舞恋は申し訳なさそうに謝罪した。
 
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