わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた

文字の大きさ
32 / 101
第五章

32・あなたの望み

しおりを挟む
「遊びに来たとはなんだね。ちゃんと御挨拶だよ」

 そして藍銅らんどう伯爵はキイロに向き合った。

「これはこれは、なんとも可愛らしい娘じゃないか。どうぞおとうさま、と呼んでくれないかね?」
「おとうさま、ですか?」
「うん、いいねえ!やはり娘はいいものだ!うん、可愛いからうちで育てたい。結婚は取りやめにしないか?」
「なんてことを言うんですか。わたしがどれだけ」
「まあまあ冗談だよ。うん、しかし可愛らしい娘が出来て嬉しいよ。そうでなければこの男が結婚なんてするはずはないからね」

 愉快そうに笑う藍銅伯爵を、キイロはじっと見つめた。

(この方が、義理のお父様?)

 おぼろと雰囲気がよく似ている。
 長い白髪、というか白に近い銀色の髪を朧のようにひとつにまとめている。
 モノクルとよばれる片眼鏡は英国の紳士のようだ。
 紺色のスーツは仕立てだろうか、よく似合っていて、多分後ろ姿だけを見ると、日本人とは気づけないかもしれない。

「どうしたんだい?おとうさまに見とれているのかい?」
「はい。とても素敵で驚きました」

 キイロの素直な言葉に、藍銅伯爵は目を丸くした。

「聞いたかい朧。ずいぶんと私は娘に恵まれたらしい」
「そうですよ。決してご迷惑はおかけしませんし、あなたのお気に入りになるから、必ず先に嫁に下さいと言ったでしょう」
「いやあ、知っていたら嫁に出さなかったかもな」
「お断りです」

 ふんとそっぽを向く朧に、藍銅伯爵は楽しそうに笑った。

「あの、藍銅伯爵さまのお荷物が到着しました」
「そうかい。朧、ここへ運んで構わないか?」

 藍銅伯爵のやりそうなことは大体把握している。
 朧は「どうぞ」と言うと、藍銅伯爵は指を鳴らした。

「持ってきて」

 すると薄氷の女中らが荷物を抱えて次々に入って来た。
 大きな箱から小さな箱、合計で二十以上はあるだろうか。
 部屋の片隅に次々に並べていくと、頭を下げて去って行った。

「新しい娘にプレゼントを用意したんだ。突然思いついてデパートへ寄ったんだがね。次からは外商をこちらへよこそう」

 藍銅伯爵の言葉に、朧はため息をついた。

「わたしが用意しますから大丈夫です」
「ひどいな、折角できた娘を可愛がらせてくれないのかい?」

 そんなやりとりの間、子供はキイロの腕を引っ張ったり、抱き着いたりと退屈そうにしている。
 よいしょ、とキイロが子供、リンを抱きかかえると、藍銅伯爵の目が強く光った。

「その子が、例の方だね」
「はい。先ほど、名前をおっしゃいました」
「名前を?自ら?」
「ええ」
「それは驚いたな。私の娘は相当、気に入られたのか」
「ええ。相性が良いとは考えていましたが、ここまでとは思いませんでした」

 納得する二人に、キイロは全く理解できない。

「いやあ、これは逆にわたしのほうが運が良かったのかもしれないな。娘さん、私の娘になってくれてありがとう。わが藍銅家は、今後必ずあなたを守り抜くことを誓おう」
「え?」
「この子は、我々にとって決して失ってはならないお方。そしてもうじき、元の姿にお戻りになられる」
「―――――元の、姿」

 さすがにキイロにも、この子が普通の子供でないことは判る。

「それにしても戻りが早い。確かにこの屋敷は水の気に溢れているが、ここまでとはあちらも考えてはいないだろう」
「それは私もそう思っていました」

 朧が頷く。

「そのうち、元にお戻りになるとはいえ、いまはいまのお姿、そして彼女についているという事は、彼女の気を選んだという事です。彼女の想う通りに行動するのが一番かと」
「うむ」

 藍銅伯爵は頷いた。
 そしてキイロに尋ねる。

「娘よ、あなたはその子供を、育てなければならない。だが、そう長い時間でもないだろう。さて、まずこの子供に必要なもの、あなたが与えたいのは何だね?なんでもすぐに用意しよう」
「なんでも……ですか?」
「勿論。その方は我々にも大切なお方なのだ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

乙女ゲームに転生したら不遇ヒロインでしたが、真エンドは自分で選びます

タマ マコト
ファンタジー
社畜のように他人の期待に応える人生を送り、事故で命を落とした朝霧玲奈は、かつて遊んでいた乙女ゲームの世界に“不遇ヒロイン”として転生する。 努力しても報われず、最終的に追放される役割を知った彼女は、誰かに選ばれる物語を拒否し、自分の意志で生きることを決意する。 さて、物語はどう変化するのか……。

失恋までが初恋です。

あんど もあ
ファンタジー
私の初恋はお兄様。お兄様は、私が五歳の時にご両親を亡くして我が家にやって来て私のお兄様になってくださった方。私は三歳年上の王子様のようなお兄様に一目ぼれでした。それから十年。お兄様にはルシンダ様と言う婚約者が、私にも婚約者らしき者がいますが、初恋は続行中ですの。 そんなマルティーナのお話。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

処理中です...