わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた

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第六章

39・御一新から

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「ずいぶんとご機嫌ですね」
「そうか?」

 部下の舛花ますはなにそう言われ、おぼろは首を傾げた。

「判りますよ。表情は変わらなくても、幸せそうです」
「そう?実は朝、妻が見送ってくれたんだ」

 仕事に向かうので早く起きて、屋敷を出ようとしていたらキイロとりんが揃って待っていた。

「音がしたので、起きてきて、挨拶してくれたんだ」

 それだけでも随分と幸せで、面倒な仕事を早く片付けて帰ろうという気持ちになる。

(朧様ともあろうかたが)

 舛花は苦笑する。
 あれほど冷徹だとか、誰にもなびかないとか、彼を手に入れるのはどれほどのご令嬢か、などと言われていたのに、頑なに初恋の人を探して選んで、妻へ向かえた。

(案外、というかみたまま頑固なんですよねえ)

 とはいえ、これで舛花も、やたら朧様と渡りをつけてくれ、という話に『もう結婚されたので』と返すことが出来る。
 それだけはちょっと気が楽だ。

「どうした。なんでお前が嬉しそうなんだ」
「いえ、朧様に言い寄る女性に言い訳が出来て楽だなと」
「そんなことを考えていたのか」
「割と面倒だったんですよ。立場のある方のお嬢さんだと特に」
「まあな。そこは私も申し訳なかったとは思っているよ」
「お嬢さん方にですか?」
「まさか。お前にだよ」
「今後、面倒はあるでしょうね」
「そのためにも藍銅伯爵に後見人をお願いしたんだ。さすがにあの方へ喧嘩を売るなんて馬鹿な真似はするまい」
「確かに。全ての道が閉ざされますからね」

(それに、余計な事を起こされるわけにはいかない)

 朧が引っかかるのは『おうりゅう』という言葉だ。

(おうりゅう……もし『あちら』のおうりゅうなら、とんでもないぞ)

 確かに、龍神の子であるという情報はあった。
 これまでも龍の子は何度か生まれていた。
 でもあくまでその能力を持った龍の子であった。

「舛花、暫く仕事はこちらでできる事しか」
「すでにそのようにしていますよ。奥方様がご心配でしょう」
「お前、有能だな」
「ほかならぬ朧様の部下ですので。それに、どう考えても動きが大げさすぎます。なぜ、連中がああも動くのか」
「考えられるのはあちらの面倒な方が、怒鳴り散らかしているという事だろうな。全く、まだどうにか幕府を戻そうとしているのか」

 すでに御一新、幕府から政府になって数十年が過ぎた。
 何度かの内乱はあったが、とっくにおさまり、幕府の有能株はほとんどが政府に収まっている。

「つまり、有能でなかった、選ばれなかった誰かの残りがそうなっているんですね」
「その通り。あまりに強大すぎて、静かにしていただくしかないお方であれば判るのだが」

 十五代将軍であったあの方は、あまりにも有能だった。
 それが故に、本来なら政府に入る所を静かにしてもらうしかなくなってしまった。

「例え有能で、新政府の為に働けるお方であっても、そのお方を利用しようとする面々の旗印になってしまう事を避けるには仕方がないことだが」
「しかし、それほどまでのお方が静かにお過ごしになっているのになにを今更、図々しく」
「年をくったんだろう。年寄りになればどうしても、後悔が妄想に変わりがちだ」

 しかも悪い事に権力すら持っている。

「一時も早く、犯人を確保して大人しくさせないと、妻と安心して結婚もできない」

 溜息をつく朧に、舛花は「早く片付くと良いですね」と返した。

(本当に、早く片付いてしまわなければ)

 このままでは、朧の身辺もきなくさくなるだろう。
 朧はこの国に必要な軍人だ。
 決して失う訳にはいかない。
 舛花は、自分も気を緩めるわけにはいかないな、と胸を張った。


「あら」

 りんの着替えをさせていると、また体がちょっと大きくなっている事に気づいた。

「本当にぐんぐん伸びるのね。びっくりしちゃう」
「われはすぐおおきくなる!」

 えへんと胸をはるりんに、キイロは頷いた。

「本当。なんだか安心する」
「あんしんか?」
「ええ。だって大きくなるなら、自分で走って逃げることもできるでしょう?」
「じぶんでにげる」
「そう」

 いつも追い詰められてきたキイロからしたら、自分の意思で走って逃げる事は、大事な事だった。
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