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第六章
42・夢みたい
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姿見で自分を見てキイロは驚く。
「素敵……!」
まるで女優になったかのような姿だ。
黒地に鮮やかな椿の柄と、濃い緑の葉っぱが良いアクセントになって、派手でも上品に見える。
「すごい、自分じゃないみたい!」
「なに言ってるの。間違いなくあなたよ」
「こんなに素敵な着物を着たのって初めてだわ」
しかも生地がとても良い。
(花嫁衣裳よりよっぽど素敵)
どこから手に入れたのかわからない、かびくさい花嫁衣裳を着せられて、こんなものかと思ったけれど、まさかこんな着物を着れるなんて。
「コーディネートが素敵。ありがとう梅花」
「もとのものがなにもかも良いもの。しかもちゃんと考えて揃えて下さったんだわ」
素敵ねえ、と梅花がうっとりして、キイロもそうだな、と頷く。
(こんなによくして貰っていいのかな)
騙されているんじゃ、と思ってしまうけど、そもそもキイロをだましてもなにひとつ良い事なんてないので、それもないか、と自分で笑った。
「他にも何があったのか、見て良い?」
元商家の娘である梅花が興味津々なのでキイロは頷いた。
「勿論!わたしじゃきっと価値がわからないものもあると思う」
「まかせて!家が没落する前までは、デパートにずっと入り浸っていたくらいなんだから!」
本来、両家の子女はそういった買い物に出かけるのは不躾と思われていたが、梅花は学生という立場もあってよく出かけていた。
たまにキイロも一緒に喫茶に行った事もあったけれど、その時は自分の格好が恥ずかしくて、あまりあれこれ見れなかった。
「これなら、梅花と一緒に歩いても申し訳なくならないわ」
キイロの言葉に、梅花はくしゃっと笑った。
「もう二度と、そんな気持ちにさせないわよ、朧様がいらっしゃるんだから」
「そうね。ずっとこんな日が続けばいいわね」
キイロも、もしそうだったらどんなにいいだろうと思う。
「じゃあ、明日あたりお天気が良かったらお出かけしたいわね!」
キイロを励まそうと梅花が言うとキイロも頷く。
すると、りんが言った。
「われも!われも出たい!」
「りんちゃんも一緒かあ。それもいいわね」
「ちょっとキイロ、呑気なことを言うけどまたへんなのに狙われるんじゃないの?」
するとりんが立ち上がった。
「われがたおす!」
「うーん、いさましいわ」
「朧様に聞いてみないとわからないわね。もうお仕事なさてるだろうし、もう何もしてこないなら出かけてもいいはずだし」
「そうね、聞いてみるしかないわね」
そういっていると、部屋の中へ朧が入って来た。
「ずいぶん賑やかですね」
軍服姿ということは、仕事から帰ったのだろう。
「申し訳ありません、お出迎えせずに」
慌てるキイロに朧が首を振った。
「わたしが呼ばなくて良い、と伝えたのです。どうぞ気になさらないで」
そういう朧に、キイロは微笑んで頭を下げた。
「お帰りなさいませ、お仕事、お疲れ様です」
「あなたの楽しそうな声をきいたら疲れなんてとんでしまいますよ」
朧に言われ、キイロは顔を赤くして反応に困った。
「それに、とても可愛らしい。よく似合っています。藍銅伯爵からの贈り物ですね?」
「え、は、はい!りんちゃんが中をみたいと」
「いえ、そうしていただけるとありがたいです。あの方はあなたがお気に入りなので、プレゼントを放っておいたら拗ねてしまわれる」
「まあ、そんなことが」
「当然です。きっと今頃、あなたに似合いのものをずっと探していますよ」
お返事はしないと、と朧が言うと、キイロは気づいた。
「あの、でしたら明日、お出かけしても良いでしょうか?」
「お出かけ?」
「はい。こんな素敵な着物で、ちょっと出かけられたらなあって」
駄目なら良いんですけど、というキイロに朧は首を横に振った。
「ダメなんてことありませんよ。そうですね、でしたらむしろ藍銅伯爵のもとへ行きましょう。あなたがその着物を着たところを見たらきっとお喜びになると思います。お礼も伝える必要がありましたし」
「素敵……!」
まるで女優になったかのような姿だ。
黒地に鮮やかな椿の柄と、濃い緑の葉っぱが良いアクセントになって、派手でも上品に見える。
「すごい、自分じゃないみたい!」
「なに言ってるの。間違いなくあなたよ」
「こんなに素敵な着物を着たのって初めてだわ」
しかも生地がとても良い。
(花嫁衣裳よりよっぽど素敵)
どこから手に入れたのかわからない、かびくさい花嫁衣裳を着せられて、こんなものかと思ったけれど、まさかこんな着物を着れるなんて。
「コーディネートが素敵。ありがとう梅花」
「もとのものがなにもかも良いもの。しかもちゃんと考えて揃えて下さったんだわ」
素敵ねえ、と梅花がうっとりして、キイロもそうだな、と頷く。
(こんなによくして貰っていいのかな)
騙されているんじゃ、と思ってしまうけど、そもそもキイロをだましてもなにひとつ良い事なんてないので、それもないか、と自分で笑った。
「他にも何があったのか、見て良い?」
元商家の娘である梅花が興味津々なのでキイロは頷いた。
「勿論!わたしじゃきっと価値がわからないものもあると思う」
「まかせて!家が没落する前までは、デパートにずっと入り浸っていたくらいなんだから!」
本来、両家の子女はそういった買い物に出かけるのは不躾と思われていたが、梅花は学生という立場もあってよく出かけていた。
たまにキイロも一緒に喫茶に行った事もあったけれど、その時は自分の格好が恥ずかしくて、あまりあれこれ見れなかった。
「これなら、梅花と一緒に歩いても申し訳なくならないわ」
キイロの言葉に、梅花はくしゃっと笑った。
「もう二度と、そんな気持ちにさせないわよ、朧様がいらっしゃるんだから」
「そうね。ずっとこんな日が続けばいいわね」
キイロも、もしそうだったらどんなにいいだろうと思う。
「じゃあ、明日あたりお天気が良かったらお出かけしたいわね!」
キイロを励まそうと梅花が言うとキイロも頷く。
すると、りんが言った。
「われも!われも出たい!」
「りんちゃんも一緒かあ。それもいいわね」
「ちょっとキイロ、呑気なことを言うけどまたへんなのに狙われるんじゃないの?」
するとりんが立ち上がった。
「われがたおす!」
「うーん、いさましいわ」
「朧様に聞いてみないとわからないわね。もうお仕事なさてるだろうし、もう何もしてこないなら出かけてもいいはずだし」
「そうね、聞いてみるしかないわね」
そういっていると、部屋の中へ朧が入って来た。
「ずいぶん賑やかですね」
軍服姿ということは、仕事から帰ったのだろう。
「申し訳ありません、お出迎えせずに」
慌てるキイロに朧が首を振った。
「わたしが呼ばなくて良い、と伝えたのです。どうぞ気になさらないで」
そういう朧に、キイロは微笑んで頭を下げた。
「お帰りなさいませ、お仕事、お疲れ様です」
「あなたの楽しそうな声をきいたら疲れなんてとんでしまいますよ」
朧に言われ、キイロは顔を赤くして反応に困った。
「それに、とても可愛らしい。よく似合っています。藍銅伯爵からの贈り物ですね?」
「え、は、はい!りんちゃんが中をみたいと」
「いえ、そうしていただけるとありがたいです。あの方はあなたがお気に入りなので、プレゼントを放っておいたら拗ねてしまわれる」
「まあ、そんなことが」
「当然です。きっと今頃、あなたに似合いのものをずっと探していますよ」
お返事はしないと、と朧が言うと、キイロは気づいた。
「あの、でしたら明日、お出かけしても良いでしょうか?」
「お出かけ?」
「はい。こんな素敵な着物で、ちょっと出かけられたらなあって」
駄目なら良いんですけど、というキイロに朧は首を横に振った。
「ダメなんてことありませんよ。そうですね、でしたらむしろ藍銅伯爵のもとへ行きましょう。あなたがその着物を着たところを見たらきっとお喜びになると思います。お礼も伝える必要がありましたし」
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