わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた

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第六章

41・着せ替え

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 次々に別の箱に興味を持つりんに、キイロは頷いて箱を開けて行った。

「こっちは帽子!可愛い!」

 椿の花がついたモダンなフェルトの帽子だ。
 手袋にバッグ、ポーチなど、びっくりするほど可愛いものだらけだ。

「こんなにも頂いていいのかしら」

 戸惑うキイロにりんが「よいのじゃ」と言った。

「そちはわれを助けた。りゅうぞくからしたら、おまえほどのすごいやつはおらん」
「助けた?火事の時ですか?」
「うむ」
「当たり前じゃないですか。あんな小さな子を助けないなんてありえません」
「そうか?助けにきたのはそちだけじゃ」
「―――――……」

 キイロは黙ってしまう。

「……もし、朧様がいらしたら助けに来たと思いますよ」
「無論。あやつもちゃんとわれをたすけた。そこはわかっておる」
「助かって良かったです」

 くだらない結婚だろうと思い込んでいたキイロにとっては、目の前の嫁ぎ先が火事というのはびっくりしたが、助けられて良かった。

「最初は猫ちゃんかと思ったんですけどね」
「そちは猫を命がけで助けにきたのか?」
「猫好きなんですよ」
「そうじゃない。死ぬかもしれんのに、猫に命をかけるところだったのか?」
「……別に、そこまで生きる必要はあるのかって考えていたくらいなので」

 キイロにとって人生は死なないから仕方なく生きているというだけの事で、働きながらごはんが食べられて、寝る所があれば良いなという希望しかなかった。

「でも助かって良かったです。正直、死なないとはちょっと思ってました。雨くらい降るかなって」

 キイロは、自分の身の回りでだけ、雨を降らしたり、水を出したりすることが出来る。
 ただ、それを昔から気味悪がられていたので最近は使う事もあまりなかった。

「もしそうならなかったらどうするつもりじゃった」
「なにも考えていません。それもそれで、仕方ないだろうと」

 自分を粗末にすることが良い事だとは思っていない。
 でも、だからといってここで怯えてもどうにもならない。

「私は私の思うように行動して満足しています。あなたを助けられたのだから」

 キイロが言うと、りんはなぜか照れたように顔を赤くした。

「そちはしんじられる!」
「ありがとう」

「今度もなにかあったら、そのときはわれが助ける!」

「頼りにしてますね」

 りんの言葉が、キイロには嬉しかった。
 誰かがこんなにも気にかけてくれることはなかったからだ。

(ここに関わって良い事ばかりだ)

 嬉しくてついにこにこと笑っていると、りんが「どうした?」と尋ねた。

「嬉しいのです。こんなにかわいいりんちゃんと一緒で」
「そうか。えいよにおもえ」
「はいはい」

 なんだか偉そうだが、そんな言い方も可愛かった。

 キイロは一日中、りんと一緒に過ごした。
 絵本を見て、食事を貰い、プレゼントではしゃぐ。
 まるで夢の中のようだ。

「ねえキイロ……って、これどうしたの?」
「あ、梅花。プレゼントを広げていたの。りんちゃんに強請られて」
「伯爵からの贈り物ね。見せてもらっていい?」
「勿論よ」

 梅花はプレゼントを見て、感嘆の声をあげた。

「素晴らしいものばかりじゃない!」
「みたいね」
「みたいねって。これあなたへでしょう?」
「そうらしいけど、現実味がなさすぎて」

 これまで普段の着物すら困っていたのに、いきなりこんな豪勢なものを貰っては、自分のものという気がしない。

「え、素敵!流行りの着物もあるじゃない!」
「そうなの、すごく素敵よねえ」

 黒のフェルトの帽子とお揃いの、可愛いモダンな椿柄の着物もあって、丁度広げているところだった。

「やだ、キイロ、着てみせて!絶対に似合うわよ」
「えぇ、着ていいのかな?」
「いいに決まってるでしょ?手伝うから、早く着て!」

 すっかり綺麗な着物に舞い上がった梅花はそういってキイロの着物のそろえを合わせ始めた。

「見て、素敵な半襟!レースかしら!これと、このあわせと、これ、ブローチかと思ったら帯留めなのね」

 キイロは梅花のすすめのままに着替えた。

 着替えを済ませると梅花は言った。

「素敵!よく似合うわ、鏡を見てよ!」
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