わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた

文字の大きさ
43 / 64
第七章

43・お出かけの日

しおりを挟む
 キイロは頷く。

「こんなに綺麗な着物を頂いて、どんなにお礼を言っても伝わらないかも」
「よくお似合いです。でもきっと私が選んだもののほうがもっとあなたを輝かせますよ。わたしのほうがあなたを見て来たので」

 え?と思っておぼろを見たが、朧はただ静かに微笑んでいるだけで、キイロはなにも言えなかった。



 翌日、キイロと梅花、りんの三人で朧の指定した喫茶へ向かった。

「新しいカフェーよね、わたし行きたかったの!」

 喜ぶ梅花に「そうなの?」とキイロは尋ねた。

「ええ!帝王ホテルにもともといた人がオーナーになって自分のお店を始めたそうよ。いますごい人気で中々入る事も難しいはずなのに」

 そういえば、朧に用意されたホテルも帝王ホテルだったな、とキイロは思いだす。

「朧様は帝王ホテルがお好きなのかしら」
「あらキイロ、朧様は恐れ多くも陛下のおぼえめでたい一族の方よ、帝王ホテルは陛下もお泊りになられる位の場所だもの、そりゃお使いになられるわ」

 だから梅花には、帝王ホテルを選んだ朧の気持ちもわかるし、襲われたことの恐怖も判る。

(朧様は、本当にキイロの事を思って帝王ホテルを選ばれたに違いない。でも、あのホテルに顔がきく敵がいるとしたら、相当高い位置の人ってことね)

 だからきっと、わざわざ自分の屋敷に梅花というキイロの友人も一緒に住まわせているのだ。

「到着しました。どうぞお気をつけて」

 運転手がそう言って、三人は車から降りた。


「わあ!」

 思わずキイロは声をあげた。

 英国風の雰囲気を出しつつ、和風の建材で作られたカフェは不思議な世界の建物のようだ。

「素敵……!」

 思わず店の中を覗き込むと、受付の所でたっていた可愛いエプロン姿の女給が声をかけてきた。

「いらっしゃいませ。ご予約はおすみですか?」
「ええ。薄氷で入っているかと」

 梅花が答えると、女給ははっとした表情になり、ふっと笑顔を見せ、深々と頭を下げた。

「お待ちしておりました。お席へご案内いたします」

 案内されて店内に入ると、そこはまるで異国のような雰囲気でキイロはますます目を見張った。
 珍しい人形や可愛らしい箱、異国情緒あふれるもので飾られ夢中になりそうだ。

「キイロ、あんまりよそ見してたら」

 心配する梅花に、「え?」と振り返ったその時、どんっと誰かにぶつかった。

「ご、ごめんなさい!」

 慌てて顔をあげると、そこにはものすごく体格の良い、コック服を着た男性が立っていた。

(で、でっか……!)

 多分、キイロの人生でこの目の前の人が世界一大きな人だ。
 あまりに大きすぎて驚いていると、その大きな男性は髭モジャの顔で、にっこり笑った。

「大丈夫かい?お嬢さん」
「え、あ、はい」

 転ぶところを支えてくれたらしい。

「すみません、よく見てなくて」
「いいってことよ!この店、可愛いだろう?俺の自慢なんだ!」

 そういってがっはっは、と笑う男性は、粗野な雰囲気なのに品があった。

「さて、朧の嫁さんが来たときいたんで迎えに出たんだが、あんたがそうだね?」

 突然そう言われ、キイロは頷く。

「はい」
「俺はこの店のオーナーの枯野だ。枯野青白。朧とは古くからの仲だ。よろしく」
「よろしくお願いします」

 キイロが頭を下げると、青白は「うん!」と頷いた。
 元気のいい人だなあ、とキイロは青白を見上げた。

「さ、じゃあご案内しよう。といっても狭い店だが」

 青白に連れられ、キイロと梅花、そして梅花と手を繋いだりんがぞろぞろと店内に入って行った。

 店内は青白がいうほど狭くもない。
 ちょっと大きな広間、といった部屋が三つ並んでいて、奥のテーブルの椅子に朧が座っていた。
 朧は遠目から見ても目立ち、異国風の店の雰囲気もあってまるで絵のようだった。
 そして、同じ店にいる女性たちの全てといって良いほど、朧に視線が集まっていた。

 朧は目を伏せていたが、キイロを見つけると席を立ち、笑顔になった。

「こちらです。良い席を友人が用意してくれました」

 そのちょっと子供っぽい笑顔に、朧を見ていた女性陣は驚き、ざっと視線がキイロに集まった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

『ひまりのスローライフ便り 〜異世界でもふもふに囲まれて〜』

チャチャ
ファンタジー
孤児院育ちの23歳女子・葛西ひまりは、ある日、不思議な本に導かれて異世界へ。 そこでは、アレルギー体質がウソのように治り、もふもふたちとふれあえる夢の生活が待っていた! 畑と料理、ちょっと不思議な魔法とあったかい人々——のんびりスローな新しい毎日が、今始まる。

そんな未来はお断り! ~未来が見える少女サブリナはこつこつ暗躍で成り上がる~

みねバイヤーン
ファンタジー
孤児の少女サブリナは、夢の中で色んな未来を見た。王子に溺愛される「ヒロイン」、逆ハーレムで嫉妬を買う「ヒドイン」、追放され惨めに生きる「悪役令嬢」。──だけど、どれもサブリナの望む未来ではなかった。「あんな未来は、イヤ、お断りよ!」望む未来を手に入れるため、サブリナは未来視を武器に孤児院の仲間を救い、没落貴族を復興し、王宮の陰謀までひっくり返す。すると、王子や貴族令嬢、国中の要人たちが次々と彼女に惹かれる事態に。「さすがにこの未来は予想外だったわ……」運命を塗り替えて、新しい未来を楽しむ異世界改革奮闘記。

【完結】悪役令嬢は婚約破棄されたら自由になりました

きゅちゃん
ファンタジー
王子に婚約破棄されたセラフィーナは、前世の記憶を取り戻し、自分がゲーム世界の悪役令嬢になっていると気づく。破滅を避けるため辺境領地へ帰還すると、そこで待ち受けるのは財政難と魔物の脅威...。高純度の魔石を発見したセラフィーナは、商売で領地を立て直し始める。しかし王都から冤罪で訴えられる危機に陥るが...悪役令嬢が自由を手に入れ、新しい人生を切り開く物語。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。

処理中です...