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第十三章
88・龍神の卵
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その言葉通り、朧の能力はすさまじく、時々、自らの身体を変貌させるほどだった。
それでもまだ、人の形は保っていた。
だが、成長と同時に朧の能力は、自分でもどうにもならないほどだった。
―――――自分は化物だ
どんなに能力があっても、それを快く思わない連中がいることも、こころない言葉をかけられるのも知っている。
まあ、どんなに能力があろうが所詮は化物じゃないか
おやこれは朧様、失敬、つい本当の事が
いまなら鼻で笑えるだろう言葉も、子供の朧には辛かった。
泣いていると、一人の少女が朧に薔薇を渡してくれた。
ちいさな柔らかい手には薔薇の棘が刺さって血が出ていて、でもそれでも朧を慰めてくれた。
彼女だ、と思った。
だから彼女を妻に迎えたいと決心して、朧の立場なら簡単に許されるはずだった。
だが、彼女は、栴檀家。
つまり、古からの龍を扱う一族。
栴檀家の能力は、龍の嫌う植物を守護する一族であり、それがやがて龍を従える一族となった。
だが、あまりに古く、格式が高く、能力が知られぬまま、狙われる事をおそれ栴檀家は静かに滅んだ、はずだった。
栴檀家と薄氷家が繋がる事を恐れた連中が、彼女の存在を公式から消した。
朧がいくら探しても見つからなかったのはそのせいだ。
宮家の繋がりでは見つからない、と理解した朧は軍に入る事を決意した。
本来、陛下のための能力だと一族から反対も大きかった。
いや、国を守る事が陛下を守る事に繋がります。
そう訴えると、陛下も頷いた。
彼は、朧の気持ちを昔から知っていた。
だからこそ、許してくれたのだ。
(最後に暴走したのは)
どんなに探しても彼女が見つからず、絶望すらしたある夜の事だった。
能力があふれる日は、龍の泉の中でなら、いくらでも能力を流せばよい。
そう言われていたので、朧は体中をうずまく能力を、ただ、泉の中に送った。
体中が痛むこともあった。
苦しい事も何度もあった。
その度、一人で龍神の泉に身体を浸し、能力が消えるのを待った。
寒く凍えるような日でも、泉の中でただあふれ出る能力を流す悲しさを誰も知る事はなかった。
幼いころからずっとそんな事を繰り返し、好きでもない能力を抱えて泣いていた。
そんな時、優しい少女に出会って、恋に落ちるのは当たり前じゃないか。
『朧様―――――』
彼女の声が聞こえる。
やっと見つけて、喜び迎えに行こうとして、すでに相手がいたらどうする、と考え、更に探り、そして彼女の生活があまりに不遇で、化物扱いされていると知って、朧はすぐ婚姻の手続きを取った。
誰に反対されても彼女を妻に迎えるつもりだったし、彼女を守って見せると誓った。
『朧様、目を覚まして!』
悲痛な叫びに、朧は目を覚まさなければ、と思い、だったら今はどうなんだ?と首を傾げた。
目は開いていないのか?
こんなに世界が見えるのに?
いや、ここは一体。
よく周りを見渡すと、向かいに誰かが立っていた。
子供だ。
「りん、さま?」
背格好がよく似ていた。
ただ、りんのように表情が生き生きとしていたわけではなく、どこか悲し気な、落ち込んだ雰囲気を持っていた。
(りん、様ではない?)
一体誰なんだ?と首を傾げてよく見る。
どこかで見たような。
朧は、はっと気づく。
(私じゃないか)
幼い頃の自分、どこか不安げで、悲し気で、裏のある大人たちにちやほやされて、あざけられて、心から疲れていた時の幼い頃の自分だった。
子供の顔は、りんによく似ていた。
そういえば、なぜ今までそんな事を考えもしなかったのか。
それは、あまりにもりんが、いきいきとしていたからだ。
素直に甘え、すがりつき、大声で笑う。
あれは、朧の子供のころの理想そのものの姿だった。
(やっと気づいたか)
もう一人の子供が立っていて、それはまぎれもなくりんだった。
「りんさま?」
(お前の流した力が、徐々に泉の中に溜まり、やがてわたしの力と混じり、ひとつの意思になった)
「……ならば、りんさま、とは」
(いずれ力は渦巻いて、圧縮され終焉に向かう。わたしはひとつの卵となった、その時にお前の力が混じった。いまではもう、わけることもなかうまい)
それでもまだ、人の形は保っていた。
だが、成長と同時に朧の能力は、自分でもどうにもならないほどだった。
―――――自分は化物だ
どんなに能力があっても、それを快く思わない連中がいることも、こころない言葉をかけられるのも知っている。
まあ、どんなに能力があろうが所詮は化物じゃないか
おやこれは朧様、失敬、つい本当の事が
いまなら鼻で笑えるだろう言葉も、子供の朧には辛かった。
泣いていると、一人の少女が朧に薔薇を渡してくれた。
ちいさな柔らかい手には薔薇の棘が刺さって血が出ていて、でもそれでも朧を慰めてくれた。
彼女だ、と思った。
だから彼女を妻に迎えたいと決心して、朧の立場なら簡単に許されるはずだった。
だが、彼女は、栴檀家。
つまり、古からの龍を扱う一族。
栴檀家の能力は、龍の嫌う植物を守護する一族であり、それがやがて龍を従える一族となった。
だが、あまりに古く、格式が高く、能力が知られぬまま、狙われる事をおそれ栴檀家は静かに滅んだ、はずだった。
栴檀家と薄氷家が繋がる事を恐れた連中が、彼女の存在を公式から消した。
朧がいくら探しても見つからなかったのはそのせいだ。
宮家の繋がりでは見つからない、と理解した朧は軍に入る事を決意した。
本来、陛下のための能力だと一族から反対も大きかった。
いや、国を守る事が陛下を守る事に繋がります。
そう訴えると、陛下も頷いた。
彼は、朧の気持ちを昔から知っていた。
だからこそ、許してくれたのだ。
(最後に暴走したのは)
どんなに探しても彼女が見つからず、絶望すらしたある夜の事だった。
能力があふれる日は、龍の泉の中でなら、いくらでも能力を流せばよい。
そう言われていたので、朧は体中をうずまく能力を、ただ、泉の中に送った。
体中が痛むこともあった。
苦しい事も何度もあった。
その度、一人で龍神の泉に身体を浸し、能力が消えるのを待った。
寒く凍えるような日でも、泉の中でただあふれ出る能力を流す悲しさを誰も知る事はなかった。
幼いころからずっとそんな事を繰り返し、好きでもない能力を抱えて泣いていた。
そんな時、優しい少女に出会って、恋に落ちるのは当たり前じゃないか。
『朧様―――――』
彼女の声が聞こえる。
やっと見つけて、喜び迎えに行こうとして、すでに相手がいたらどうする、と考え、更に探り、そして彼女の生活があまりに不遇で、化物扱いされていると知って、朧はすぐ婚姻の手続きを取った。
誰に反対されても彼女を妻に迎えるつもりだったし、彼女を守って見せると誓った。
『朧様、目を覚まして!』
悲痛な叫びに、朧は目を覚まさなければ、と思い、だったら今はどうなんだ?と首を傾げた。
目は開いていないのか?
こんなに世界が見えるのに?
いや、ここは一体。
よく周りを見渡すと、向かいに誰かが立っていた。
子供だ。
「りん、さま?」
背格好がよく似ていた。
ただ、りんのように表情が生き生きとしていたわけではなく、どこか悲し気な、落ち込んだ雰囲気を持っていた。
(りん、様ではない?)
一体誰なんだ?と首を傾げてよく見る。
どこかで見たような。
朧は、はっと気づく。
(私じゃないか)
幼い頃の自分、どこか不安げで、悲し気で、裏のある大人たちにちやほやされて、あざけられて、心から疲れていた時の幼い頃の自分だった。
子供の顔は、りんによく似ていた。
そういえば、なぜ今までそんな事を考えもしなかったのか。
それは、あまりにもりんが、いきいきとしていたからだ。
素直に甘え、すがりつき、大声で笑う。
あれは、朧の子供のころの理想そのものの姿だった。
(やっと気づいたか)
もう一人の子供が立っていて、それはまぎれもなくりんだった。
「りんさま?」
(お前の流した力が、徐々に泉の中に溜まり、やがてわたしの力と混じり、ひとつの意思になった)
「……ならば、りんさま、とは」
(いずれ力は渦巻いて、圧縮され終焉に向かう。わたしはひとつの卵となった、その時にお前の力が混じった。いまではもう、わけることもなかうまい)
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