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第十三章
89・卵に戻ったりん
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そういうと、りんの姿をした子供は、手のひらを朧へ向けた。
(かえれ、お前を求める場所へ)
ごうっと嵐が朧に向かって流れてきて、思わず腕で顔を覆った。
こらえても足が止まらず、勢い、流された。
まるで風の川へ落ちてしまったかのように、朧は流され、意識を失った。
「―――――さま!朧様!」
はっと気づくと、目の前には泣きはらしたキイロの顔があり、朧は目を見開いた。
なぜ泣いて、と手を伸ばそうとして身を起こした。
「朧様!良かった、気が付いたんですね!」
「一体、なにが、どう?」
困惑する朧の傍に、いつのまにか縹が居た。
「橡がその身を全部呪いに変えた。もう姿は消えたよ」
「呪いに……?まさか」
「禁呪に手を出したんだろうな。そこまでお前が憎かったのか、それとももう引き返せなかったのか」
ま、と縹も苦笑した。
「気が付いて良かった。なんとか処置が間に合ったな」
「私は一体……」
「呪いを受けて、瀕死というかほとんど死んでた。お前を引っ張り上げたのは、嫁さんとその子供だよ」
「ムーランとりん様が?」
キイロはこくこくと頷く。
「りんちゃんが、力を使ってくれたんです」
「じゃが、これがもう限界じゃの。気が付いて良かった」
すっとりんが立ち上がった。
「さて、折角大人にもなれたことじゃが、これで力を使ってしもうた」
「りん、様?」
りんはキイロに手を伸ばした。
「われはゆく。いや、戻る、か。このさきもわれは徐々に戻るが、いまのわれかどうかはわからん」
「りんちゃん?」
一体何を言っているのだ、とキイロは困惑する。
「りんちゃんのおかげで、朧様が助かったのよ?」
「うん、われのおかげ。じゃから、われを守ってくれ。もう力が限界、なん、じゃ……」
そういってりんは、キイロの腕の中に倒れ込む。
「りんちゃん?りんちゃん!」
慌てるキイロがりんを抱え込むと、今度はりんが、徐々に小さくなっていく。
子供だった姿から、幼児に、そして赤ん坊にと変わっていって、やがて一つの、大きな卵になった。
「りん、ちゃん?」
大きな卵を抱えたキイロに、朧は目を見開いた。
「これは……元の、卵に戻った、のか」
元々、卵の姿だった。
朧が母親から預かったときそのまま、いや、いまは色が違う。
「……りんちゃん!」
悲壮な叫びが響く、その時だった。
朧の身体に残っていたかすかな呪いの残滓が、次々に弾けるように離れた。
卵からかすかな声が聞こえた。
(呪いは全部、我が弾く。お前のも、な)
するとキイロの髪がゆったりと広がった。
(おまえも元の姿に戻るとよい、呪いが全て消えれば、お前も元に戻れる)
「元?どういう事?」
(名前も姿も、また、呪いである。戻れ、ムーランへ)
そう卵が呟くと、キイロの髪は、徐々に色が変わってゆく。
「キイロ!あなた、髪が!」
驚いたのは梅花だ。
ずっと黄色で、微妙にうねった髪をしていた。
名前もその色で呼ばれていた。
それが徐々に、朧のような白銀へと変わりつつあった。
頭の上から、きらきらと小さな輝きが降り注ぎ、染まるようにキイロの髪を白い髪へ変えてゆく。
「え?なにが?髪?」
皆が驚いているのに、キイロは全く気付かない。
まとめられた髪が肩に落ちてようやく、気づいた。
「髪の色が!」
驚くキイロに卵から声がした。
(これでお前の呪いも、夫の呪いも全て消えた。あとはわずかにわれの守護が残るであろう)
「りんちゃん?」
(われはまた戻る。それまで……守護……)
声がちいさくなっていき、ぼんやりとかがやいてたまごから光が消えた。
「……また、卵に戻ったのか」
「戻った?りんちゃんはまた出てくるのですか?」
「ええ。ただ、いつになるかは、わたしにもわかりません。母ならなにか知っているでしょう」
「……りんちゃん」
キイロは卵をぎゅっと抱きしめた。
おおきな卵は、赤ん坊位の大きさで、ほのかに暖かかった。
(かえれ、お前を求める場所へ)
ごうっと嵐が朧に向かって流れてきて、思わず腕で顔を覆った。
こらえても足が止まらず、勢い、流された。
まるで風の川へ落ちてしまったかのように、朧は流され、意識を失った。
「―――――さま!朧様!」
はっと気づくと、目の前には泣きはらしたキイロの顔があり、朧は目を見開いた。
なぜ泣いて、と手を伸ばそうとして身を起こした。
「朧様!良かった、気が付いたんですね!」
「一体、なにが、どう?」
困惑する朧の傍に、いつのまにか縹が居た。
「橡がその身を全部呪いに変えた。もう姿は消えたよ」
「呪いに……?まさか」
「禁呪に手を出したんだろうな。そこまでお前が憎かったのか、それとももう引き返せなかったのか」
ま、と縹も苦笑した。
「気が付いて良かった。なんとか処置が間に合ったな」
「私は一体……」
「呪いを受けて、瀕死というかほとんど死んでた。お前を引っ張り上げたのは、嫁さんとその子供だよ」
「ムーランとりん様が?」
キイロはこくこくと頷く。
「りんちゃんが、力を使ってくれたんです」
「じゃが、これがもう限界じゃの。気が付いて良かった」
すっとりんが立ち上がった。
「さて、折角大人にもなれたことじゃが、これで力を使ってしもうた」
「りん、様?」
りんはキイロに手を伸ばした。
「われはゆく。いや、戻る、か。このさきもわれは徐々に戻るが、いまのわれかどうかはわからん」
「りんちゃん?」
一体何を言っているのだ、とキイロは困惑する。
「りんちゃんのおかげで、朧様が助かったのよ?」
「うん、われのおかげ。じゃから、われを守ってくれ。もう力が限界、なん、じゃ……」
そういってりんは、キイロの腕の中に倒れ込む。
「りんちゃん?りんちゃん!」
慌てるキイロがりんを抱え込むと、今度はりんが、徐々に小さくなっていく。
子供だった姿から、幼児に、そして赤ん坊にと変わっていって、やがて一つの、大きな卵になった。
「りん、ちゃん?」
大きな卵を抱えたキイロに、朧は目を見開いた。
「これは……元の、卵に戻った、のか」
元々、卵の姿だった。
朧が母親から預かったときそのまま、いや、いまは色が違う。
「……りんちゃん!」
悲壮な叫びが響く、その時だった。
朧の身体に残っていたかすかな呪いの残滓が、次々に弾けるように離れた。
卵からかすかな声が聞こえた。
(呪いは全部、我が弾く。お前のも、な)
するとキイロの髪がゆったりと広がった。
(おまえも元の姿に戻るとよい、呪いが全て消えれば、お前も元に戻れる)
「元?どういう事?」
(名前も姿も、また、呪いである。戻れ、ムーランへ)
そう卵が呟くと、キイロの髪は、徐々に色が変わってゆく。
「キイロ!あなた、髪が!」
驚いたのは梅花だ。
ずっと黄色で、微妙にうねった髪をしていた。
名前もその色で呼ばれていた。
それが徐々に、朧のような白銀へと変わりつつあった。
頭の上から、きらきらと小さな輝きが降り注ぎ、染まるようにキイロの髪を白い髪へ変えてゆく。
「え?なにが?髪?」
皆が驚いているのに、キイロは全く気付かない。
まとめられた髪が肩に落ちてようやく、気づいた。
「髪の色が!」
驚くキイロに卵から声がした。
(これでお前の呪いも、夫の呪いも全て消えた。あとはわずかにわれの守護が残るであろう)
「りんちゃん?」
(われはまた戻る。それまで……守護……)
声がちいさくなっていき、ぼんやりとかがやいてたまごから光が消えた。
「……また、卵に戻ったのか」
「戻った?りんちゃんはまた出てくるのですか?」
「ええ。ただ、いつになるかは、わたしにもわかりません。母ならなにか知っているでしょう」
「……りんちゃん」
キイロは卵をぎゅっと抱きしめた。
おおきな卵は、赤ん坊位の大きさで、ほのかに暖かかった。
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