わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた

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第十三章

87・呪いの蛇の毒牙

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 服が足元に落ち、姿が煙のように消えたつるばみに、おぼろは戸惑う。
 どこに、と探したその瞬間だった。

「ぐっ!」

 痛みを感じて思わず腕を押さえると、そこには真っ黒なゆらぐ蛇が朧に牙を差していた。
 ばしっと蛇をはねつけたが黒い蛇が次々に朧に襲い掛かり、朧は真っ黒な闇に包まれたかのように姿を隠す。

「朧様!」

 舛花ますはなが慌て、蛇をひっぱりはがすが、何十匹、何百匹とも言える黒い蛇は執拗に朧に絡まり、朧の身体に次々に牙をたててゆく。
 朧の身体は毒牙に侵され、ずしんと膝をつく。

「朧様!くそ、この蛇が!!!」
「……ます、はな」
「朧様!しっかりしてください!船の外には縹医師がおります!すぐに、」

 しかし蛇は、出ないはずの声を次々に上げ、ゲラゲラと笑っているように見えた。

「橡め、呪いに身を明け渡したな!」

 怒鳴る舛花に、蛇は舛花を見て、ニタリと笑った。
 朧はとうとう、その場へ倒れ込む。

「朧様!」

 異様な光景に、キイロが叫び近づく。

「朧様!朧様!しっかりしてください!朧さまぁあああ!」

 なんで、どうして、なぜ朧がこんな目に。
 朧は小さく、頷き、キイロに手を差し出し、その手をキイロがぎゅっと握った。

「ムーラン、ぼくの……いとしい……ひ、と……」

 やがて声は小さく消えた。


 舛花が銃で次々に蛇を撃ち、引きはがし、やっと蛇は全てが千切れた。
 足元に大量の蛇の死骸に囲まれ、キイロは朧の傍に座りこむ。

「朧さま……」

 まさか、そんな、とキイロは必死に朧を揺さぶる。

「朧様、いやです、朧様、しっかりして、」

 しかし朧の肉体は力なく揺れるだけだ。
 真っ白な肌には、紫の斑が浮き上がり、その身体が毒に侵されてしまったことを示している。

「呪いです」

 舛花は青ざめて呟く。

「橡が、その身を呪いに変えて、朧様に、毒を」「どうにかできないのですか」
「わかりません、いえ、少なくとも、これほどの呪いは」

 舛花は立ち上がると、部下に怒鳴った。

「朧様が呪いを受けたと、すぐにはなだ医師へ!ここへ呼べ!」
「はっ」

 部下がすぐに縹を呼びに向かうが、舛花の感情はほぼ絶望でしかなかった。

(こうも呪いを受けてしまっては、もう)

 全身をすべて蛇の呪いに変えてまで、橡の憎しみは凄まじかったのか。

(どうすればいいのだ)

 明らかに、朧はもう手遅れだ。
 体から血の気が引き、すでに命すら消えかけ、そこに生気はなくなっている。
 彼の愛した妻が必死に呼びかけているが、朧はその手をだらんとしたまま動かない。
 望みすら、もう持つ事はできないほどの呪い。

 今更医者を呼んでどうにかなるのか。

「朧様、目を覚ましてください、朧様」

 必死にキイロが呼びかけるも、朧は動かない。
 どうすれば良いのだ。

 すると、りんがとことこと歩いて来た。

「凄まじい呪いじゃの」
「りんちゃん、朧様が、朧様が」

 はらはらと泣きだすキイロに、りんはふっと笑った。

「泣くな。ひどく弱っているが、それでもまだ命はある」
「ほ、本当に?」
「嘘を言ってどうする。しかし、ずいぶんと深くまで沈んでおるようじゃの」

 りんはキイロに言った。

「必死で呼びかけい。お前が呼ばねば、こやつは沈んだままになる」
「朧様!朧様、しっかりして!」

 必死でキイロが呼びかける。
 すると、さっきまで体中に浮かんでいた紫斑しはんが、わずかに減った。
 おぼろさま、という呼び声に、朧は起き上った。

 ところがそこは真っ白な世界で、朧は白い服を着ていた。
 着物のようではあるが、どうにも日本風、というよりは中国の王族のような服だ。

「……ムーラン?」

 あの声はムーランだ。間違いない。
 朧の初恋の女の子、とても優しい、朧に愛を教えてくれた。

 ―――――待望の跡継ぎです
 紛れもなく、薄氷の最高能力者になるに違いありません

 朧が生まれた時の映像が流れた。

『朧、という名前にしましょう。この凄まじい力を、わずかでも薄めておくために』

 そうして誰かが朧の額に爪を差す。

『これで暫くは、力も抑えられるだろう。だが、いつかは暴走する』
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