日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門

文字の大きさ
19 / 21

19

しおりを挟む

 玲央は僕に視線を合わせたまま、優しく語り始める。

「一緒に学校生活を楽しめるパートナーが欲しかったんだ。でも、最初から俺と晴彦が仲良くしていると、周りから変な目で見られるかもしれない。最悪の場合、君がいじめられる可能性もある。そうだろ?」

 玲央は、まるでこの話をずっと考えていたかのように自然に言った。僕は何も言えずに玲央の言葉を聞いていた。確かに、玲央のような存在と普通に友達になるなんて、周りから注目されるし、そんな状況が僕に負担をかける可能性は高い。

「なら、簡単なことさ。俺の恋人にすればいい。そうすれば、誰も君に危害を加えられない。むしろ俺の恋人だと思わせた方が、いつも一緒にいられるから俺も楽なんだよ」

 確信に満ちた笑みを浮かべて玲央は言った。
 その表情は、まるでこの状況さえも楽しんでいるかのようだった。

 対して、僕はその言葉を聞いて絶句した。恋人……? 僕が、玲央の……? 頭が真っ白になり、どう返事をすればいいのかすらわからなかった。

「さぁ、これから楽しくなるぞ!」

 そんな僕とは対象的に、玲央は声高らかに宣言した。

「修学旅行、文化祭、体育祭、テスト、受験、ボランティアに学校行事……! この一年でやらないといけないことは目白押しだ!!」

 玲央は本当に心から嬉しそうで、まるでこれから始まる新しい冒険を楽しみにしている子供のような顔をしていた。彼のその様子に僕はただ圧倒されて、言葉も出ず、呆然と聞いているしかなかった。

 玲央の瞳はキラキラと輝いていて、彼の口から次々と楽しそうな未来の話が出てくるたび、僕の頭はどんどん混乱していった。

 どうして、僕なんだ。
 その思いは我慢できず、口から出てしまった。

「どうして……どうして恋人役が僕なの? 他にも適任はきっといるよ」
「いいや、晴彦しかいないよ。君だから選んだ。君しかいなかったんだ」
「どうして?」

 玲央は一歩近づいてき、僕の手をそっと取ると、彼の温かい指が僕の肌に触れた。そして、玲央はその手を自分の方に引き寄せ、優雅な動きで僕の手の甲に軽くキスをした。

 時間が止まったように感じた。

 玲央の唇が手の甲に触れる感覚が、まるで電流のように僕の体中を駆け抜けた。呆然とする僕を見て、玲央は微笑んだまま、目を細める。

「君しかいないんだ、晴彦」

 彼から溢れ出る想いの強さが、僕にはまだわからなかった。
 それでも玲央は言葉を続ける。
 
 どうして恋人役を僕にしたのか、その本当の理由を、ようやく玲央は教えてくれた。
 この時まだ僕はわかっていなかった。「恋人役」と僕は思っていたのだけれど、玲央は「役」だけで終わらせるつもりは、毛頭なかったということを。

 手の甲にしてくれたキスで、玲央の気持ちはわかっていたはずなのに……。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談?本気?二人の結末は? 美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。 ※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。 ◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。 ◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

今からレンタルアルファシステムを利用します

夜鳥すぱり
BL
大学2年の鳴水《なるみ》は、ずっと自分がオメガであることを隠して生きてきた。でも、年々つらくなる発情期にもう一人は耐えられない。恋愛対象は男性だし、男のアルファに会ってみたい。誰でも良いから、定期的に安全に話し相手をしてくれる人が欲しい。でもそんな都合のいい人いなくて、考えあぐねた結果たどり着いた、アプリ、レンタルアルファシステム。安全……だと思う、評価も星5で良いし。うん、じゃ、お問い合わせをしてみるか。なるみは、恐る恐るボタンを押すが───。 ◆完結済みです。ありがとうございました。 ◆表紙絵を花々緒さんが描いてくださりました。カッコいい雪夜君と、おどおど鳴水くんです。可愛すぎますね!

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

処理中です...