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しおりを挟む「俳優活動はどうするの?」
純粋に思ったことを口にした。彼ほどの有名な俳優が、学校に通うためだけに活動を止めるなんて普通ありえないと思ったからだ。玲央は少し目を細めて、夕陽を背にしながら笑う。
「卒業するまでの一年間、俳優活動は休止することにしたんだ。事務所を通して明日正式に発表がある」
「そうなんだ」
彼自身が決断したことだ。今さら僕がとやかく言うことではないだろう。ただそれでも、信じられなかった。玲央はまさに日本で最も有名な俳優の一人だ。そんな彼が、高校生活のためにすべてを一旦止めるなんて、僕には到底理解できなかった。
どうして……こんな大きな決断をしたのか、その理由が知りたかった。そう思いながら玲央を見つめていると、僕の考えていることなどお見通しのように、直ぐに答えを教えてくれた。
「最後の高校生活だけは、俳優じゃなくて、一人の学生として思う存分楽しみたかったんだよ」
その一言が、彼の決意を何よりも強く感じさせた。彼の瞳には、真剣な光が宿っていた。
ほんの少しだけ、彼の気持ちがわかる気がした。俳優として生きる彼にとって、普通の学生生活なんて無縁だっただろう。
学校行事や友達と過ごす日常、何気ない会話――そんなものすら、彼には遠い存在だったのかもしれない。
だからこそ、せめて最後の一年間だけは、一人の学生として過ごしたい。
そういう玲央の思いを、僕は理解していた。彼の背中を押してあげたい気持ちになった。
玲央が求めている普通の高校生活、そのために力になれたら――そんなことを考えていた。
だけど、心の奥で一つだけ疑問が浮かび上がっていた。
そしてそれを、無視することもできなかった。
だから、僕は聞く。
「でも……玲央の学校生活のことはわかるけど、僕への告白は……その、意味がないと思うんだけど」
多少緊張もあったけど、ちゃんと言葉に出せた。
対し、玲央は僕の言葉を聞くと、一瞬驚いた顔をしたが、すぐに心底楽しそうに笑みを浮かべて。
まるで、待ってましたと言わんばかりの表情だった。
そしてゆっくりと僕に近づいてきた。
夕陽が玲央の髪と顔をさらに鮮やかに照らし出す。神様のような神々しさを携えながら、玲央はじっと僕を見つめていた。
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