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王子の決意~sideライアス~
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貴族が領地から王都へ移動してくる社交シーズンに合わせて、毎年夏の時期にお茶会は開かれた。
俺は、シェラと年に1度しか会えないと分かり、ひどく後悔した。
次に会えるのが1年後だと知っていれば、俺はシェラにあんな態度をとりはしなかったのに⋯。
それからの俺は、シェラと会える事だけを楽しみに生きていたと言っても過言ではない。
次に会えた時は、絶対シェラと仲良くなって、俺がシェラを笑顔にしてやりたいと思った。
そしてあわよくば、シェラを優しく抱き締めて、俺の事を大好きだと言って欲しかった。
『ライアス殿下、大好きっ!』
にこぱっ
あああっ!たまらん!!
だが、そんな俺の爛れた思惑は、一度も実現する事はなかった。
1年分のシェラへの熱い想いを溜め込んだ俺は、可愛いシェラを前にすると、どうしてもあの得体の知れないどす黒い感情に支配され、思ってもいない暴言をぶちまけてしまう。
いくら優しく声を掛けようと思って近づいても、年々美しさを増すシェラを前にすると、ガブリと頭からかぶりつきたい衝動に駆られ、俺は拳をきつく握り、奥歯をギリギリと噛み締めて耐える事しかできなかった。
結局俺は何年経っても、湧き上がる凶暴な感情を抑える事ができなかった。
そして数年が経ち、俺が14歳でシェラが11歳のお茶会の時だった。
あの日も、シェラがいつものように、小さくて柔らかそうな唇を半開きにして、ぼーっと庭の花を眺めながら立っていた。
俺は愛しいシェラに早く声を掛けたくて、地面を思い切り蹴って駆け出した。
「シェ!⋯ラ、ん⋯?」
俺が走りながらシェラの名前を叫んだその時、シェラを遠巻きに見ていた令息達が、じわじわとシェラに近づいているのに気づいた。
何だ?
よく見ると、俺と同じように、熱を孕んだ眼差しでシェラを見ている奴が大勢いる事に気づいた。
「シェラ、僕と一緒に遊ぼうよ」
「え、えっと、うん」
はっ!?
俺のシェラに、勝手に話し掛けるな!
シェラは俺と遊ぶんだ!
「シェラ、今日も可愛いね」
「あ、ありがとっ」
はあっ!?
シェラが可愛いのは当たり前だ!
って言うか、俺以外の奴が、シェラに可愛いって言うな!
「シェラ、手、繋いでいい?」
「手?えっと、えっ⋯と、どうしよう⋯」
もじもじと悩むシェラの手を、一人の令息が頬を赤らめながら掴もうとしている。
ブチッ
俺のシェラに触るな!!
俺は頭にカッと血が上り、そいつとシェラの間に割り入った。
シェラは何が起こったのか分かっていないようで、身動ぎもせずに、ぼーっと俺の背中を見つめている。
「シェラが嫌がっているだろ!」
「えっ?そうですか?」
その令息は、俺の背中に隠れているシェラを覗き込んできた。
「見るな!」
「はっ?」
「いいか、シェラは俺としか話さないし、俺としか遊ばない」
「ふぅ⋯、いくら殿下でも、それは余りにも横暴ではないですか?」
「ぐっ⋯、う、うるさい!」
王子の俺にも怯まず物申すその男は、俺より3つ歳上の、ダルトン伯爵家の三男、エリオットだった。聞いた話によると、学園ではとても優秀で、教師や友人からの人望も厚いらしい。
それに確か、ダルトン伯爵家はシェラの家とも懇意にしているはずだ。
まさかエリオットもシェラの事⋯。
俺が言い返せないと分かった途端、エリオットはすっと身を引き、右手を胸に当てて、俺に礼を執った。
その仕草がとても洗練されていて、俺は人として負けた気分だった。
エリオットはシェラに、また今度遊ぼうねと言って、手を振りながら去って行った。
「シェラ、大丈夫か?」
今日こそは絶対優しくするんだと、何度も心の中で呟きながら、俺は意を決して後ろを振り向き、シェラと目を合わせた。
な、なんて可愛いんだ⋯。
まだ子供らしさは残っているものの、少しずつ大人の色香を纏い始めたシェラを見て、俺の口は勝手にシェラを怒鳴りつけていた。
「シェラ!俺以外と話すなと言っただろ!一緒に遊ぶのも俺だけだ!いいか、忘れるなよ!」
だあぁぁっ!!違うっ!!早く訂正するんだ!!
俺が頭を抱えていると、シェラの瞳にみるみる涙が溢れてきた。
「あっ⋯、シェラ、違うんだ⋯」
「ぐすっ、ごめんなさい、ふぇっ」
俺は何をやってるんだ。
またシェラを泣かせてしまった。
結局俺はシェラに優しくできないまま、お茶会はこれが最後になってしまった。
俺は、シェラと年に1度しか会えないと分かり、ひどく後悔した。
次に会えるのが1年後だと知っていれば、俺はシェラにあんな態度をとりはしなかったのに⋯。
それからの俺は、シェラと会える事だけを楽しみに生きていたと言っても過言ではない。
次に会えた時は、絶対シェラと仲良くなって、俺がシェラを笑顔にしてやりたいと思った。
そしてあわよくば、シェラを優しく抱き締めて、俺の事を大好きだと言って欲しかった。
『ライアス殿下、大好きっ!』
にこぱっ
あああっ!たまらん!!
だが、そんな俺の爛れた思惑は、一度も実現する事はなかった。
1年分のシェラへの熱い想いを溜め込んだ俺は、可愛いシェラを前にすると、どうしてもあの得体の知れないどす黒い感情に支配され、思ってもいない暴言をぶちまけてしまう。
いくら優しく声を掛けようと思って近づいても、年々美しさを増すシェラを前にすると、ガブリと頭からかぶりつきたい衝動に駆られ、俺は拳をきつく握り、奥歯をギリギリと噛み締めて耐える事しかできなかった。
結局俺は何年経っても、湧き上がる凶暴な感情を抑える事ができなかった。
そして数年が経ち、俺が14歳でシェラが11歳のお茶会の時だった。
あの日も、シェラがいつものように、小さくて柔らかそうな唇を半開きにして、ぼーっと庭の花を眺めながら立っていた。
俺は愛しいシェラに早く声を掛けたくて、地面を思い切り蹴って駆け出した。
「シェ!⋯ラ、ん⋯?」
俺が走りながらシェラの名前を叫んだその時、シェラを遠巻きに見ていた令息達が、じわじわとシェラに近づいているのに気づいた。
何だ?
よく見ると、俺と同じように、熱を孕んだ眼差しでシェラを見ている奴が大勢いる事に気づいた。
「シェラ、僕と一緒に遊ぼうよ」
「え、えっと、うん」
はっ!?
俺のシェラに、勝手に話し掛けるな!
シェラは俺と遊ぶんだ!
「シェラ、今日も可愛いね」
「あ、ありがとっ」
はあっ!?
シェラが可愛いのは当たり前だ!
って言うか、俺以外の奴が、シェラに可愛いって言うな!
「シェラ、手、繋いでいい?」
「手?えっと、えっ⋯と、どうしよう⋯」
もじもじと悩むシェラの手を、一人の令息が頬を赤らめながら掴もうとしている。
ブチッ
俺のシェラに触るな!!
俺は頭にカッと血が上り、そいつとシェラの間に割り入った。
シェラは何が起こったのか分かっていないようで、身動ぎもせずに、ぼーっと俺の背中を見つめている。
「シェラが嫌がっているだろ!」
「えっ?そうですか?」
その令息は、俺の背中に隠れているシェラを覗き込んできた。
「見るな!」
「はっ?」
「いいか、シェラは俺としか話さないし、俺としか遊ばない」
「ふぅ⋯、いくら殿下でも、それは余りにも横暴ではないですか?」
「ぐっ⋯、う、うるさい!」
王子の俺にも怯まず物申すその男は、俺より3つ歳上の、ダルトン伯爵家の三男、エリオットだった。聞いた話によると、学園ではとても優秀で、教師や友人からの人望も厚いらしい。
それに確か、ダルトン伯爵家はシェラの家とも懇意にしているはずだ。
まさかエリオットもシェラの事⋯。
俺が言い返せないと分かった途端、エリオットはすっと身を引き、右手を胸に当てて、俺に礼を執った。
その仕草がとても洗練されていて、俺は人として負けた気分だった。
エリオットはシェラに、また今度遊ぼうねと言って、手を振りながら去って行った。
「シェラ、大丈夫か?」
今日こそは絶対優しくするんだと、何度も心の中で呟きながら、俺は意を決して後ろを振り向き、シェラと目を合わせた。
な、なんて可愛いんだ⋯。
まだ子供らしさは残っているものの、少しずつ大人の色香を纏い始めたシェラを見て、俺の口は勝手にシェラを怒鳴りつけていた。
「シェラ!俺以外と話すなと言っただろ!一緒に遊ぶのも俺だけだ!いいか、忘れるなよ!」
だあぁぁっ!!違うっ!!早く訂正するんだ!!
俺が頭を抱えていると、シェラの瞳にみるみる涙が溢れてきた。
「あっ⋯、シェラ、違うんだ⋯」
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