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王子の決意~sideライアス~
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『Cute Aggression』
それは、脳が処理しきれない程の可愛いものを目の前にした時、感情とは相反してめちゃくちゃにぶっ壊したい衝動に駆られる、人間の難儀な本能の事である。
あれは俺が8歳になったばかりの時だった。
国王である父上から、俺と歳の近い令嬢令息を集めてお茶会を開くと聞かされた。
「ライアス、お前は子供であっても王族だ。人の本質を見極める訓練をしなくてはならない。今度開かれるお茶会は、お前の側近になる者を選ぶ為のものでもある。心構えをしておきなさい」
「はい、分かりました、父上」
「ライアス、お茶会は今回きりではない。そんなに肩に力を入れずともよい」
「ふぅ、はい」
それからひと月程経ち、俺は緊張しながら初めてのお茶会に向かった。
父上の挨拶もただ耳を通り過ぎるだけで、皆が俺をどんな目で見ているのか気になって、顔を上げる事ができなかった。
「⋯⋯アス、ライアス、挨拶しなさい」
俺は父上から肩に手を回され、その時初めて、顔を上げて集まっている大勢の子供に目を遣った。
⋯っ!!!
な、何だ、あれは!!??
顔を上げた時、会場のある1箇所だけに、天からの眩い光が一筋差していた。
俺は雷に体の真ん中を撃ち抜かれたような衝撃を受けた。
「ライアス、どうした?」
「父上⋯、天使がいます」
「ごほん、ライアス、何を言っている。天使などおらん」
「天使じゃない⋯?父上、じゃあ、あれは妖精ですか?」
「まったく、何を言っているんだ。妖精などいる訳ないだろ」
「そうか、羽根が生えてないから、天使でも妖精でもないのか⋯。それじゃあ、父上、あれは何ですか?」
「はあっ?」
そんなやり取りをしていると、さすがに会場がザワつき始めた。
俺は適当に挨拶を済ませ、群がる令嬢令息をなぎ倒し、天使か妖精か分からない者の正体を確かめに行った。
タッタッタッタッ
走ってその正体不明の者に近づいたが、正面から向き合う勇気がなく、俺は背後から声を掛けた。
「お、お前、誰だ!」
びくっ
おっ、肩がびくってなったぞ。
「おいっ!」
正体不明の者は俺の勢いに負けたのか、震えながらゆっくりとこっちを振り向いた。
ごくっ
こっちを向いた正体不明の者は、甘そうなミルクティー色をしたサラサラの髪を肩口で綺麗に揃え、瑞々しいライムグリーンの少し垂れた大きな瞳は、たっぷりと涙を湛え、光を反射してキラキラと輝いていた。
か、可愛っ!!!これが人間なのか!!??
いやっ、やっぱり天使か妖精の類いか⋯?
考えても分からん。とにかく話し掛けてみよう。
「おいっ!お前は何者だ!」
だあぁぁっ!違うっ!俺はこんな責めるような言い方がしたい訳じゃない!
くそっ!早く謝るんだ!
俺がいくら心の中で叫んでも、その子に聞こえるはずがなく、その子はとうとうぽろりと涙を零してしまった。
「ぐすっ、第2王子殿下に、ごあいさつ申しあげます。僕はシェラですっ。5歳ですっ。ふぇっ」
ずっきゅん
な、何だこの感情は⋯?
シェラが可愛いくて堪らないのに、息の根を止めるくらい、思い切り抱き締めたい。
優しく頭を撫でてやりたいのに、両手で頭を鷲掴みにして、ガジガジと頭骨を噛み砕きたい衝動に駆られる。
俺は湧き上がる黒い感情を持て余し、泣きべそをかいてぷるぷる震えているシェラに声を荒らげていた。
「シェ、シェラ!お前を俺の側近にしてやる!今日から俺の部屋に一緒に住め!それと、今日から俺以外の者と話をする事も許さないからな!いいか、これは命令だ!」
「そっきん?父様ともお話、だめですか?」
シェラはきょとんと首を傾げ、俺をじっと見つめてきた。
ずっきゅん
「あああっ!くそーー!何なんだ、お前はーー!って、うわあっ!!」
「「「殿下ーーー!!!」」」
「うわっ!!お前ら、何するんだー!!」
俺は痺れを切らした令嬢令息達に、もみくちゃにされた。
ようやく全員と挨拶を済ませて急いでシェラを探したが、いくら探してもシェラの姿を見つける事はできなかった。
それは、脳が処理しきれない程の可愛いものを目の前にした時、感情とは相反してめちゃくちゃにぶっ壊したい衝動に駆られる、人間の難儀な本能の事である。
あれは俺が8歳になったばかりの時だった。
国王である父上から、俺と歳の近い令嬢令息を集めてお茶会を開くと聞かされた。
「ライアス、お前は子供であっても王族だ。人の本質を見極める訓練をしなくてはならない。今度開かれるお茶会は、お前の側近になる者を選ぶ為のものでもある。心構えをしておきなさい」
「はい、分かりました、父上」
「ライアス、お茶会は今回きりではない。そんなに肩に力を入れずともよい」
「ふぅ、はい」
それからひと月程経ち、俺は緊張しながら初めてのお茶会に向かった。
父上の挨拶もただ耳を通り過ぎるだけで、皆が俺をどんな目で見ているのか気になって、顔を上げる事ができなかった。
「⋯⋯アス、ライアス、挨拶しなさい」
俺は父上から肩に手を回され、その時初めて、顔を上げて集まっている大勢の子供に目を遣った。
⋯っ!!!
な、何だ、あれは!!??
顔を上げた時、会場のある1箇所だけに、天からの眩い光が一筋差していた。
俺は雷に体の真ん中を撃ち抜かれたような衝撃を受けた。
「ライアス、どうした?」
「父上⋯、天使がいます」
「ごほん、ライアス、何を言っている。天使などおらん」
「天使じゃない⋯?父上、じゃあ、あれは妖精ですか?」
「まったく、何を言っているんだ。妖精などいる訳ないだろ」
「そうか、羽根が生えてないから、天使でも妖精でもないのか⋯。それじゃあ、父上、あれは何ですか?」
「はあっ?」
そんなやり取りをしていると、さすがに会場がザワつき始めた。
俺は適当に挨拶を済ませ、群がる令嬢令息をなぎ倒し、天使か妖精か分からない者の正体を確かめに行った。
タッタッタッタッ
走ってその正体不明の者に近づいたが、正面から向き合う勇気がなく、俺は背後から声を掛けた。
「お、お前、誰だ!」
びくっ
おっ、肩がびくってなったぞ。
「おいっ!」
正体不明の者は俺の勢いに負けたのか、震えながらゆっくりとこっちを振り向いた。
ごくっ
こっちを向いた正体不明の者は、甘そうなミルクティー色をしたサラサラの髪を肩口で綺麗に揃え、瑞々しいライムグリーンの少し垂れた大きな瞳は、たっぷりと涙を湛え、光を反射してキラキラと輝いていた。
か、可愛っ!!!これが人間なのか!!??
いやっ、やっぱり天使か妖精の類いか⋯?
考えても分からん。とにかく話し掛けてみよう。
「おいっ!お前は何者だ!」
だあぁぁっ!違うっ!俺はこんな責めるような言い方がしたい訳じゃない!
くそっ!早く謝るんだ!
俺がいくら心の中で叫んでも、その子に聞こえるはずがなく、その子はとうとうぽろりと涙を零してしまった。
「ぐすっ、第2王子殿下に、ごあいさつ申しあげます。僕はシェラですっ。5歳ですっ。ふぇっ」
ずっきゅん
な、何だこの感情は⋯?
シェラが可愛いくて堪らないのに、息の根を止めるくらい、思い切り抱き締めたい。
優しく頭を撫でてやりたいのに、両手で頭を鷲掴みにして、ガジガジと頭骨を噛み砕きたい衝動に駆られる。
俺は湧き上がる黒い感情を持て余し、泣きべそをかいてぷるぷる震えているシェラに声を荒らげていた。
「シェ、シェラ!お前を俺の側近にしてやる!今日から俺の部屋に一緒に住め!それと、今日から俺以外の者と話をする事も許さないからな!いいか、これは命令だ!」
「そっきん?父様ともお話、だめですか?」
シェラはきょとんと首を傾げ、俺をじっと見つめてきた。
ずっきゅん
「あああっ!くそーー!何なんだ、お前はーー!って、うわあっ!!」
「「「殿下ーーー!!!」」」
「うわっ!!お前ら、何するんだー!!」
俺は痺れを切らした令嬢令息達に、もみくちゃにされた。
ようやく全員と挨拶を済ませて急いでシェラを探したが、いくら探してもシェラの姿を見つける事はできなかった。
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