竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる

文字の大きさ
30 / 43

29

しおりを挟む

「よし、完全に回復したぞ」

 俺は帯を締め直した。
 蛇の毒が抜けて、身体が喜んでいる。

「やっとアヤに会える」

 ああ、好きな気持ちが止まらない。
 部屋から出ようと、襖に手を伸ばす。
 そのとき襖の向こうから、
 
「リュウさん」

 と、女の声がした。
 アヤだ。
 あまりの嬉しさに頬が赤く染まる。
 だが、ぼうっと立っていてはバカみたいだな。
 と思い、俺は秒で座布団に腰をおろし、

「なんだ?」

 と、声をかけた。
 
「お話があります。開けても良いですか?」
「ああ、いいぞ」

 襖がゆっくりと開かれる。
 膝をついていたのは、やはりアヤだった。
 彼女は一礼し、すっと立ち上がると部屋に入いる。
 また膝をつき襖を閉じた。
 つま先を立てて座る、その所作が美しい。
 和室の礼儀がなっており、動きも優雅であった。
 桜色の浴衣が似合っていて、可愛いらしく歩く。
 俺は興奮し、喉が乾いて唾をのむ。
 ああ、早くキスしたい。
 
「リュウさん、もう動けるように?」
「ああ、大丈夫だ。心配かけたな」
「よかった」

 アヤは両手を合わせ、胸をなでおろした。
 俺を見つめる瞳は漆黒に艶めいている。
 もしや、さっきまで泣いていたのかもしれない。

「アヤ、どうした?」
「和香さんの手記が他にもありました」
「えっ?」
「これです」

 アヤは浴衣の懐に手を入れた。
 おもむろに取り出したのは二枚の紙片。
 彼女はその一枚を、俺によこす。
 
「こちらからどうぞ」

 渡された手記に目を落とす。
 和香との思い出が、頭のなかで鮮明に蘇る。
 彼女を抱きしめたときの温もり、髪の香り、心臓の鼓動……。
 やがて、もう一枚がアヤから渡された。
 夢中で読む。
 和香の笑顔が、紙面に浮きあがる。
 読み進めるうちに理解した。
 そうだったのか。
 なぜ和香が突然、召喚してこなくなったのかわかった。
 人間の愚かさが招いた悲劇に、和香は飲みこまれて……。

「さようなら、がいえなかった」

 そう呟いた俺は、二枚の手記を座卓の抽斗にしまった。
 アヤは横にすわり、俺の肩に手をおいて、
 
「……リュウさん、和香さんになにがあったのですか?」
「アヤ、君の生きる平和な時代では考えにも及ばないことが起きていたんだ……」
「まさか、和香さんの生きる時代は……あっ!」

 賢いアヤは、和香がなぜ召喚しなくなったのか気づいたようだ。彼女の潤んだ瞳から、涙がこぼれ落ち、

「リュウさん……」

 と、俺の名前を呼んで、抱きついてきた。
 アヤの熱が伝わり、俺のほうまで感情が揺さぶられ、涙が流れる。

「すまない。男なのに泣いてしまった……」
「いいえ、男だって泣きますよ。僕なんていつも泣いてばかりいましたから」
「アヤは女なんだから、泣いてもいいんだぞ」
「……いえ、そうではないのです」
「ん?」

 アヤは唇を噛んだ。何か思い悩んでいるように見えた。
 
「じつは、僕は……」

 と言葉を切った。
 ああ、俺は振られるな……。
 そう察し、あわてて口を挟んだ。
 
「わかってる、アヤ。俺のことが嫌いなんだろ?」
「いえ、そうではなくて……」
「でも、俺のことは好きになれないんだろ?」
「はい……」
「まあ、悔しいが仕方ない。アヤには魅了が効かないからな」
「いや、それは僕が……」
「アヤは妖力を持った人間だ」
「違います。僕は妖力なんてありません」
「ほう、まだ無自覚だったのか……」

 アヤの手が俺の肩から離れた。
 だが、俺はアヤの手を握って抱き寄せる。
 はっと驚くアヤの表情が、可愛くいてたまらない。
 
「やっ、やめてください」
「俺はアヤのことが好きだ」
「うぅっ……和香さんのことが好きなくせに」
「アヤは和香の子孫、そうだろ?」
「そうですが……」
「和香と比べることはない。俺はアヤが好きだ」
「ぼ、僕の気持ちは無視ですか?」
「そんなことはない。一緒に愛を育もうではないか。身体さえ重なれば、アヤだってわかると思う。さあ、俺に身をまかせろ。案ずることはない、優しくしてやる」

 ぶるぶるとアヤは肩を震わせた。

「そんなに嫌なのか?」
「はいっ! 僕はそういうエッチなのはダメです」
「何を言う。そんなに可愛い顔をしているなら、人間界では男が寄ってきて仕方なかっただろ?」
「た……たしかにそうですが、リュウさんは勘違いしてるんです」

 なにがだ? と俺は訊き返す。
 潤んだ瞳で見つめるアヤは、小さく口を開いた。
 
「僕は男なんです!」

 はあ? と俺は声を漏らした。
 アヤをじっと見つめる。
 大きな黒い瞳、長いまつ毛、さらさらの髪が艶めいている。
 肌は雪のように白い。
 声だって完全に女だ。
 それなのにアヤが男なんて、そんなわけがない。
 
「アヤ、そういう嘘はよくないぞ」

 大きく首を振るアヤは、真剣な眼差しになった。
 
「嘘ではありません。僕は男なんです」
「あははは、そうやって俺から逃げようという魂胆か?」
「リュウさん、信じてください。僕は本当に男なんですっ!」
「信じられない。俺がこんなに好きなっているのに、男なわけがない」
「それでも、僕は男なんです」
「ふぅん……そこまで言うなら確認するぞ」

 俺は左腕でアヤを強く抱きしめた。

「リュウさん……やめて、うぅぅ」

 アヤは畳の上で身をよじって抵抗するが華奢な身体。
 拘束することなど造作もない、赤子の手をひねるようなもの。
 俺は、おもむろに右手をアヤの股間にのばす。
 
「えっ、ちょっ、待ってリュウさんっ!」
「アヤが男というなら、身体調査させてもらう」
「や、やだっ! 変なところ触らないでっ」
「男なんて嘘なんだろ?」
「ダメだってばぁ、んんっ」

 アヤのあそこが、じわじわと硬くなっていく。
 そんな感覚が右手に伝わってきた。
 顔を真っ赤に染めるアヤは、両手で俺の腕をつかみ、必死になって抵抗する。
 
「わぁ、やめっ!」
「アヤ……本当に男だったのか……」

 思わず俺はアヤの股間を、ぎゅっと握ってしまう。
 ビクンッとアヤは身をよじった。か、可愛い。
 
「あんっ、や、やめろってばぁ、んん……」
「アヤ、女みたいな顔してるのには大きいんだな」
「う……うるさいっ! っあん、もう握るなぁぁ、はなせっ、バカっ!」
 
 これ以上握っていると爆発しそうだな。
 と直感した俺は、とりあえず力を抜いた。
 その瞬間、アヤの手が大きく振られ、

 バチンッ!

 と、俺の頬に激痛が走る。
 え? 俺ってビンタされた?

「リュウさんなんて大っ嫌いだっ!」

 そう叫んだアヤは、俺を突き飛ばして部屋を出ていく。
 ピシャリと強く襖を閉める音。
 アヤは物凄く怒っていることを物語っていた。

「やっちまった……」

 つい女を前戯するみたいに手をだしてしまった。
 俺は心から反省したが、もう後の祭り。
 どうやら、アヤを怒らせてしまったようだ。

「完全にフラれたな……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

気絶したと思ったら闇落ち神様にお持ち帰りされていた

ミクリ21 (新)
BL
闇落ち神様に攫われた主人公の話。

転生黒狐は我が子の愛を拒否できません!

黄金 
BL
幼馴染と一緒にトラックに撥ねられた主人公。転生した場所は神獣八体が治める神浄外という世界だった。 主人公は前世此処で生きていた事を思い出す。そして死ぬ前に温めていた卵、神獣麒麟の子供に一目会いたいと願う。 ※獣人書きたいなぁ〜で書いてる話です。   お気に入り、しおり、エールを入れてくれた皆様、有難う御座います。

先生と合体しながらテスト勉強してたら翌朝にベッドに卵がありまして!?

ミクリ21 (新)
BL
家庭教師獅子獣人×鳥獣人の話。

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

黄金 
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻! だったら離婚したい! ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。 お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。 本編61話まで 番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。 ※細目キャラが好きなので書いてます。    多くの方に読んでいただき嬉しいです。  コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。    

悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!

ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。 らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。 なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。

BLゲームの世界に転生したらモブだった

ミクリ21 (新)
BL
BLゲームの世界にモブ転生したら、受けのはずの主人公ががっつり雄の攻めになっていて、何故か恋人になることになった話。

ド陰キャが海外スパダリに溺愛される話

NANiMO
BL
人生に疲れた有宮ハイネは、日本に滞在中のアメリカ人、トーマスに助けられる。しかもなんたる偶然か、トーマスはハイネと交流を続けてきたネット友達で……? 「きみさえよければ、ここに住まない?」 トーマスの提案で、奇妙な同居生活がスタートするが……… 距離が近い! 甘やかしが過ぎる! 自己肯定感低すぎ男、ハイネは、この溺愛を耐え抜くことができるのか!?

婚約破棄されて森に捨てられたら、フェンリルの長に一目惚れされたよ

ミクリ21 (新)
BL
婚約破棄されて森に捨てられてしまったバジル・ハラルド。 バジルはフェンリルの長ルディガー・シュヴァに一目惚れされて、フェンリルの村で暮らすことになった。

処理中です...