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「なんてことだ! 竜人ともあろう俺が……男を好きになっていたのか……」
 
 俺は座布団の上であぐらをかき、瞑想していた。
 だが呼吸が乱れ、まったく心が落ち着かない。

「顔も声も美少女なのに、とても立派なものを……ああ、それでも触れたときのアヤ、可愛かったなあ」
 
 手のなかに、まだあの硬いものを握った感触が残っていた。

 あれ? ちょっまてよ……。

 俺ってアヤのことを、どう思っている?

 あ、やばい、アヤは男だが、もう好きな気持ちは抑えられない。
 
「うわぁぁぁぁぁ!」

 思わず俺は叫んだ。
 さらに独り言は増大していく。
 
「男だろうとかまわない。俺はもうアヤが好きなんだ!」
 
 俺は立ち上がって歩き、襖に手をかけて大きく開いた。
 廊下の途中にイナリがいたので、

「おーい」

 と声をかけながら歩み寄る。
 
「アヤを見たか?」
「はい……ですがリュウ様、アヤ様に何をしたんですか? もう帰る! と言って泣きついてきましたよ?」
「げ! 泣いていたのか……」
「ええ、もう大泣き。いや、怒ってもいましたね」
「マズイな、このまま帰ったら二度と召喚して来ないだろう」
「おそらく……あの、リュウ様、アヤ様になにをしたんですか? まさか、無理やり犯そうと?」

 いや、と否定して俺は首を振った。
 だが、あながち間違ってもいないので言葉を失いかけたが、イナリにはアヤの正体を、正直に打ち明けるべきだ、と思った。
 
「イナリ、心して聞いてくれ」
「はい、なんなりと」
「じつは、アヤはな……」
「はい」
「男だった」

 狐目を大きく見開いたイナリは、口もとに手を当てた。
 
「あら、アヤ様は男でしたか……それは気づきませんで申し訳ありません」
「いや、アヤの美貌は女と間違えても仕方ない、それに……」
「どうしました、リュウ様?」
「俺はもうアヤが好きだ。男だろうとかまわない」

 あらまぁ、とイナリは歓喜の声をあげた。

「では、アヤ様に伝えにいきましょう。男が好きだと」
「おい……なんか、そこだけ抜き出すと違和感があるが、まあいいだろう」

 コンコン、と笑うイナリは踵を返した。
 俺は廊下を駆けだしていく。
 
「待ってろよ、アヤ!」
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