31 / 43
30
しおりを挟む「なんてことだ! 竜人ともあろう俺が……男を好きになっていたのか……」
俺は座布団の上であぐらをかき、瞑想していた。
だが呼吸が乱れ、まったく心が落ち着かない。
「顔も声も美少女なのに、とても立派なものを……ああ、それでも触れたときのアヤ、可愛かったなあ」
手のなかに、まだあの硬いものを握った感触が残っていた。
あれ? ちょっまてよ……。
俺ってアヤのことを、どう思っている?
あ、やばい、アヤは男だが、もう好きな気持ちは抑えられない。
「うわぁぁぁぁぁ!」
思わず俺は叫んだ。
さらに独り言は増大していく。
「男だろうとかまわない。俺はもうアヤが好きなんだ!」
俺は立ち上がって歩き、襖に手をかけて大きく開いた。
廊下の途中にイナリがいたので、
「おーい」
と声をかけながら歩み寄る。
「アヤを見たか?」
「はい……ですがリュウ様、アヤ様に何をしたんですか? もう帰る! と言って泣きついてきましたよ?」
「げ! 泣いていたのか……」
「ええ、もう大泣き。いや、怒ってもいましたね」
「マズイな、このまま帰ったら二度と召喚して来ないだろう」
「おそらく……あの、リュウ様、アヤ様になにをしたんですか? まさか、無理やり犯そうと?」
いや、と否定して俺は首を振った。
だが、あながち間違ってもいないので言葉を失いかけたが、イナリにはアヤの正体を、正直に打ち明けるべきだ、と思った。
「イナリ、心して聞いてくれ」
「はい、なんなりと」
「じつは、アヤはな……」
「はい」
「男だった」
狐目を大きく見開いたイナリは、口もとに手を当てた。
「あら、アヤ様は男でしたか……それは気づきませんで申し訳ありません」
「いや、アヤの美貌は女と間違えても仕方ない、それに……」
「どうしました、リュウ様?」
「俺はもうアヤが好きだ。男だろうとかまわない」
あらまぁ、とイナリは歓喜の声をあげた。
「では、アヤ様に伝えにいきましょう。男が好きだと」
「おい……なんか、そこだけ抜き出すと違和感があるが、まあいいだろう」
コンコン、と笑うイナリは踵を返した。
俺は廊下を駆けだしていく。
「待ってろよ、アヤ!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
832
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる