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10:不穏な声
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《どうする? 暗くなるまで頑張って進む? それとも、もう野宿の準備をする? アンジェリカは三日も馬車で揺られてたんでしょ? 疲れてるわよね。お腹減ってない? あ、水飲む? アクア―、よろしく》
ディーネに見つめられたアクアは何もないところから水を生み出した。
餌を待つひな鳥のように私が口を開けると、アクアは宙に浮かぶ水を操作し、器用に適量の水を注いでくれた。
旅先でもよくやっていたことなので、アクアも私もすっかり慣れっこだ。
私が水を飲み終えて口を開けると、また新たな水を口の中に入れてくれる。
それを三回ほど繰り返したところで、私はアクアにお礼を言った。
「どういたしまして」というように、アクアは宙に浮かんだまま、ぴょんと跳ねた。
「さっきの質問の答えだけれど。ディーネの言う通り疲れてるし、今日は無理せず、野宿の準備をするつもり。アクアのおかげで喉の渇きは消えたから、あとは食料ね。野宿に適した場所を探す過程で、何か食べられそうな木の実でもあればいいのだけれど」
《そう、了解。じゃあ寝床と、食料探しにしゅっぱーつ!》
おー!! とでもいうように、イグニスは尻尾を上げ、アクアは跳ね、ノームは片手を上げた。
四体の精霊を連れて、私は森の中を進んだ。
鬱蒼と茂る夏の森は生命の息吹に満ちていた。
木の根元にはキノコが生えている。
赤と緑と黄色の三色キノコ。見た目が派手なので毒キノコだろう。
森を歩くうち、私は景色に夢中になっていた。
見たことのないキノコ。見たことのない大木。見たことのない苔――この森は見たことのないものでいっぱいだ。
目を凝らせば、そこかしこに精霊がいるのがわかる。
光のリンプンを巻きちらしながら飛んでいるのは風の精霊。
木の上に三体ほど集まり、こっちを見ているのは土の精霊。
――ああ、いままた、大気中をキラキラと輝きながら風の精霊たちが飛んでいった。
「凄い。まるでここは精霊の楽園だわ」
私はすっかり感心して立ち止まり、辺りを見回して両手を組んだ。
イグニスもアクアもこの森が気持ち良いと感じているらしく、目を細めている。
土人形のノームは表情がないのでわかりにくいけれど、多分、喜んでいると思う。
《さすがエルフが守る森よね。空気が澄み渡ってる。よくここまで森を再生させたものだわ。精霊たちも頑張ったんでしょうね》
ディーネは片手を腰に当てて笑んだ。そのときだった。
――ざわ、と。
森が震えた。
「――!?」
辺りの空気が一変したことに気づいて、私は身構えた。
精霊たちが素早く動いて私を囲む。
アクアは私の左、イグニスは前、ディーネは右、ノームは後ろ。
前後左右、どこから攻撃が来ても対応できるように備えている。
《×××××××》
声が聞こえた。少女のような高い声。
《××。×××××××。×××》
声の主を探すべく辺りを見回したけれど誰もいない。
風もないのに、ざわざわと音を立てて木々が揺れる。
揺れた木を注視していて気づいた。
木の陰に精霊がいる。
精霊たちが木を揺らしているのだ。謎の声に呼応するように。
《××××。×××××××。×××》
陽が傾き始めた薄暗い森に謎の声が反響し、いくつもいくつも重なって聞こえる。
意味不明な言葉の羅列はまるで私に呪いをかけているかのよう。
ゆっくりと体温を奪われていくような錯覚に襲われ、全身に鳥肌が立った。
謎の声が何を言っているのかはわからない。
でも、相手に悪意があるのだけは明白だ。
刺すような敵意を感じているからこそ、ディーネたちは険しい顔で警戒態勢を取り続けている。
「何? 何を言っているの? あなたは誰なの?」
恐怖のあまり、私はパニック寸前にまで陥っていた。
《アンジェリカ、落ち着いて。これは亜人の言葉よ。多分、この森の守護役が何らかの手段を用いて遠距離から語りかけてきている。あたしが話をしてみるわ。――××! ×××××!!》
ディーネは中空を睨み、全く知らない言葉を話し始めた。
《×××。×××××。×××》
《××××××××!!》
《××××? ×××××》
《××××。××アンジェリカ×××!! ××××。×××××!》
ディーネが私の名前を出して何か喚いている。
どんな会話が行われているのかわからず、どうすることもできない。
腹の上で手を組み、ただ会話の終わりを待っていると、相手がやっとわかる言葉を話してくれた。
ディーネに見つめられたアクアは何もないところから水を生み出した。
餌を待つひな鳥のように私が口を開けると、アクアは宙に浮かぶ水を操作し、器用に適量の水を注いでくれた。
旅先でもよくやっていたことなので、アクアも私もすっかり慣れっこだ。
私が水を飲み終えて口を開けると、また新たな水を口の中に入れてくれる。
それを三回ほど繰り返したところで、私はアクアにお礼を言った。
「どういたしまして」というように、アクアは宙に浮かんだまま、ぴょんと跳ねた。
「さっきの質問の答えだけれど。ディーネの言う通り疲れてるし、今日は無理せず、野宿の準備をするつもり。アクアのおかげで喉の渇きは消えたから、あとは食料ね。野宿に適した場所を探す過程で、何か食べられそうな木の実でもあればいいのだけれど」
《そう、了解。じゃあ寝床と、食料探しにしゅっぱーつ!》
おー!! とでもいうように、イグニスは尻尾を上げ、アクアは跳ね、ノームは片手を上げた。
四体の精霊を連れて、私は森の中を進んだ。
鬱蒼と茂る夏の森は生命の息吹に満ちていた。
木の根元にはキノコが生えている。
赤と緑と黄色の三色キノコ。見た目が派手なので毒キノコだろう。
森を歩くうち、私は景色に夢中になっていた。
見たことのないキノコ。見たことのない大木。見たことのない苔――この森は見たことのないものでいっぱいだ。
目を凝らせば、そこかしこに精霊がいるのがわかる。
光のリンプンを巻きちらしながら飛んでいるのは風の精霊。
木の上に三体ほど集まり、こっちを見ているのは土の精霊。
――ああ、いままた、大気中をキラキラと輝きながら風の精霊たちが飛んでいった。
「凄い。まるでここは精霊の楽園だわ」
私はすっかり感心して立ち止まり、辺りを見回して両手を組んだ。
イグニスもアクアもこの森が気持ち良いと感じているらしく、目を細めている。
土人形のノームは表情がないのでわかりにくいけれど、多分、喜んでいると思う。
《さすがエルフが守る森よね。空気が澄み渡ってる。よくここまで森を再生させたものだわ。精霊たちも頑張ったんでしょうね》
ディーネは片手を腰に当てて笑んだ。そのときだった。
――ざわ、と。
森が震えた。
「――!?」
辺りの空気が一変したことに気づいて、私は身構えた。
精霊たちが素早く動いて私を囲む。
アクアは私の左、イグニスは前、ディーネは右、ノームは後ろ。
前後左右、どこから攻撃が来ても対応できるように備えている。
《×××××××》
声が聞こえた。少女のような高い声。
《××。×××××××。×××》
声の主を探すべく辺りを見回したけれど誰もいない。
風もないのに、ざわざわと音を立てて木々が揺れる。
揺れた木を注視していて気づいた。
木の陰に精霊がいる。
精霊たちが木を揺らしているのだ。謎の声に呼応するように。
《××××。×××××××。×××》
陽が傾き始めた薄暗い森に謎の声が反響し、いくつもいくつも重なって聞こえる。
意味不明な言葉の羅列はまるで私に呪いをかけているかのよう。
ゆっくりと体温を奪われていくような錯覚に襲われ、全身に鳥肌が立った。
謎の声が何を言っているのかはわからない。
でも、相手に悪意があるのだけは明白だ。
刺すような敵意を感じているからこそ、ディーネたちは険しい顔で警戒態勢を取り続けている。
「何? 何を言っているの? あなたは誰なの?」
恐怖のあまり、私はパニック寸前にまで陥っていた。
《アンジェリカ、落ち着いて。これは亜人の言葉よ。多分、この森の守護役が何らかの手段を用いて遠距離から語りかけてきている。あたしが話をしてみるわ。――××! ×××××!!》
ディーネは中空を睨み、全く知らない言葉を話し始めた。
《×××。×××××。×××》
《××××××××!!》
《××××? ×××××》
《××××。××アンジェリカ×××!! ××××。×××××!》
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腹の上で手を組み、ただ会話の終わりを待っていると、相手がやっとわかる言葉を話してくれた。
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