【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです

星名柚花

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47:メルトリンデとの対話(3)

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「いくら《精霊の愛し子》といったって、あんたの愛され具合は異常だわ。表面上だけじゃなく、心から慕われてる証拠よ。エレギアの人心を味方につけ、王子まで骨抜きにしてしまうんだから、全く、大したものだわ。……まあ王子は元から骨抜きだったけど」
 メルトリンデは何か呟いてから、椅子を引いて立ち上がった。

「あたしのためにケーキを作ってくれてありがとう。アンジェリカの誠意、確かに受け取ったわ」
 メルトリンデは背筋を伸ばし、深々と頭を下げた。

「これまでの無礼を心から詫びる。あたしはアンジェリカのことをちゃんと見ていなかった。ただ『人間』というだけで疑い、悪だと決めつけた。でも、間違ってた。アンジェリカは……信じるに値する人間だわ」
「……!!」
 感激に胸が震える。
 メルトリンデは顔を上げ、照れくさそうに微苦笑した。

「一方的に嫌うばかりで、まともに挨拶したことがなかったわよね。ごめんなさい。あたしはベスティア教会の巫女、メルトリンデ・ル・エル・カーム・ファリン。改めて、これからよろしくね。同志アンジェリカ」
 メルトリンデは一歩私に近づき、右手を差し出した。
 それは、初めて見る彼女の優しい笑顔で。
 ようやく、心と心が触れあったような気がして。
 私はすぐさま立ち上がり、両手で彼女の右手を包むように握った。

「ファナリース聖王国から参りました、アンジェリカ・コートレットです。人間ではありますが、エレギアに骨を埋める覚悟はとうにできています。こちらこそ、今後ともどうか末永くよろしくお願いします!」
 深く頭を下げると、メルトリンデの鈴のような笑い声が聞こえた。

「末永くって、まるで求婚みたいね」
 メルトリンデは笑みを浮かべたまま手を離して着席した。
 直後。

「~~~~~」
 急に力が抜けたように、へなへなとテーブルに突っ伏した。

「どうしたの? 大丈夫?」
 心配になり、私は彼女に近づいて肩に触れた。

「……散々冷たい態度を取っておいて、いまさら友好的に接するっていうのも、なかなか恥ずかしいのよ。察しなさいよ……」
 メルトリンデは両手で顔を覆い、身体を震わせている。
 指の隙間から覗く顔は赤く染まっていた。

「だから言っただろう。アンジェリカは良い奴だって。警戒する必要なんかないって」
 シャノンは笑っている。

「うっさいですよ王子。だってこの人、過去に魔神を倒した四大精霊を従えてるんですよ? いくら良い奴って言われたって、怖いに決まってるじゃないですか! あたしはアンジェリカに話しかけられる度に今日こそぶっ飛ばされるんじゃないかと内心ドキドキしてたんですから! なんでこの人毎日あたしに話しかけてくるの!? って戦々恐々だったんですから!」
 メルトリンデは元気に喚いた。

「え? もしかして前に言ってた『会話しているだけでも苦痛』っていうのはそういう意味だったの? 無礼な態度に怒った私が精霊をけしかけるんじゃないかと思ってたってこと?」

「そうよ。でもお人よしの国王一家が無条件で信じるから、あたしが憎まれ役を買うしかないでしょう。あたしは巫女としてエレギアを守る義務があるんだから。母が死の間際までそうしたように」
「……メルトリンデ。私は」
「あーはいはい、わかったってば。もう十分すぎるほどわかってるわよ。アンジェリカのおかげで王都から傷病者は消えたし、あたしの知人や教会の神官もアンジェリカのポーションで治った。各地からもアンジェリカの功績を讃える声が届いてる。ここまで評判を上げられたら善人だと認めるしかないわよ」
 メルトリンデは苦笑した。

「人間がやったことは許せないけど、アンジェリカがやったわけじゃないものね。有事の際は頼りにしてるわ。これからは協力し合い、共にこの国を守りましょう」
「ええ!」
 私は力強く頷いた。
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