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むすめっすめ

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「...あぁ」

「俺は上京して一人暮らしする。」

荷解きの最中に日向が俺の部屋に入ってきた。
日向はダンボールだらけの俺の自室の見て、目を見開き固まっている

「大学は自分家の近くのとこ、明日朝、引越し業者が入って俺も同時に引っ越す。」

「...なんで言ってくれなかったの?」

日向は静かに、そして低くそう言った。

...はっ、どーせ前から全部知ってたくせに、そんなに俺の口から聞きたいのか?

俺は大きく息を吐く

「この際だから全部言ってやるよ!!俺はお前のことっ...」


「大っ嫌いなんだよ!!」


はっきりとそう言った。
珍しく大きな声を出したせいで、呼吸が浅くなる
俺は日向の顔が見れなかったが、俯きながらも言葉を続ける

「執着してくるのがっ...嫌なんだ、お前の全てが...嫌だ。」

やっと...言えた。
言えたのに、
なんでこんな...

日向は何も言わない、それが更に怖かった。

張り詰めた空気の中、日向はボヤボヤ何か呟いている。

「僕の...全てが...全てを...やっぱり...」

日向はそう言いながら俺にゆっくりと近づく、
俺の真正面に来ると、俺と目線を合わせしゃがんで、俺の手を取る


「分かってくれるのは、兄さんしかいない...」

「やっぱり...」


「僕には兄さんしか居ないんだっ!!」


日向は微笑みながら、瞳孔の開いた真っ黒な瞳で言う。

...
おまえ...

「ほんとに俺の事好きなんだな...」

「へっ?」

日向は予想外の返答だったのか、面食らった顔をし、いやもちろん...と呟く。

「いやさ、俺って昔からお前に対して...まぁ無関心で、お前のこと何にも知らなかったからさ...こんな...」

俺は日向から目線を逸らし、言葉を続ける

「...俺お前の事理解できないよ、俺と違って何でも持ってると俺は思ってるし、だからお前の全ても受け入れられない。」

...あーあ
こんなこと一生言うはずじゃなかったのにな。

『なんで兄ちゃん頑張ってるの?』

あの時、
日向にそう言われた時、
決めたのに、

こんな俺...

「...」


互いに沈黙する。


「兄さん...俺...」

「あーもう、いいから、なんでもない。」

今すぐこの場を終わらせたかった。
もう“あの頃“を思い出したくなんてなかったからだ。

「俺、高校からさ」

会話を止めようとしたのに未だ尚、続けようとする日向に話聞けよ、というが止まらない。

「変わってみたけどさ...」

諦めて俺は日向の話に耳を傾けることにした。

「幸せになんかなれなかったよ」

日向は先程の微笑みとは違う、自嘲したような笑みを貼り付ける
気がつくと、拘束されたように握られた手は離されていた。

「他の場所でも結果は同じだよ、幸せになるビジョンは見えない、僕にはなんにもないんだ。」

「お前が...」

そう言って、俺の先程の言葉を否定するような口ぶりと少し傷ついたような表情の日向に俺は思わず口を挟むが、日向は言葉を重ねる

「僕が変わればいい話なんだろけど...」

「僕が変わるとすれば、僕が僕じゃなくなった時だ...生まれ変わった時...」

その声は少し震えていて、日向が言葉を重ねる毎に俯いていても、日向がどんな表情をしているのか分かる。

俺は...
俺が...
最後に、弟に何か言えるとすれば...

「お前はっ!!」

俺の声に日向は驚いたように顔をあげる、やはり日向の目は少し潤んでいた。

「考えるな、行動しろ!」

「経験で人はいくらでも変われるから!!」

でも...と言葉を紡ごうとする日向の離されていた手を今度は自分から掴む


「お前は...」

「お前だけは...諦めるなよ、」


こんなの...お前のためじゃないな、

こんなダメな俺のためだ。




その日は
よく、眠れなかった。

日向が俺の言葉をどう取るか分からなかったからだ。

日向が、

また自傷行為をしてしまったら?

もし、もしも、
俺の言葉で、日向が...

死んでしまったら。

俺がどれだけ日向のことを嫌いでも、死んで欲しいなんて思ってなかったからだ。

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