4 / 11
4
しおりを挟む「...あぁ」
「俺は上京して一人暮らしする。」
荷解きの最中に日向が俺の部屋に入ってきた。
日向はダンボールだらけの俺の自室の見て、目を見開き固まっている
「大学は自分家の近くのとこ、明日朝、引越し業者が入って俺も同時に引っ越す。」
「...なんで言ってくれなかったの?」
日向は静かに、そして低くそう言った。
...はっ、どーせ前から全部知ってたくせに、そんなに俺の口から聞きたいのか?
俺は大きく息を吐く
「この際だから全部言ってやるよ!!俺はお前のことっ...」
「大っ嫌いなんだよ!!」
はっきりとそう言った。
珍しく大きな声を出したせいで、呼吸が浅くなる
俺は日向の顔が見れなかったが、俯きながらも言葉を続ける
「執着してくるのがっ...嫌なんだ、お前の全てが...嫌だ。」
やっと...言えた。
言えたのに、
なんでこんな...
日向は何も言わない、それが更に怖かった。
張り詰めた空気の中、日向はボヤボヤ何か呟いている。
「僕の...全てが...全てを...やっぱり...」
日向はそう言いながら俺にゆっくりと近づく、
俺の真正面に来ると、俺と目線を合わせしゃがんで、俺の手を取る
「分かってくれるのは、兄さんしかいない...」
「やっぱり...」
「僕には兄さんしか居ないんだっ!!」
日向は微笑みながら、瞳孔の開いた真っ黒な瞳で言う。
...
おまえ...
「ほんとに俺の事好きなんだな...」
「へっ?」
日向は予想外の返答だったのか、面食らった顔をし、いやもちろん...と呟く。
「いやさ、俺って昔からお前に対して...まぁ無関心で、お前のこと何にも知らなかったからさ...こんな...」
俺は日向から目線を逸らし、言葉を続ける
「...俺お前の事理解できないよ、俺と違って何でも持ってると俺は思ってるし、だからお前の全ても受け入れられない。」
...あーあ
こんなこと一生言うはずじゃなかったのにな。
『なんで兄ちゃん頑張ってるの?』
あの時、
日向にそう言われた時、
決めたのに、
こんな俺...
「...」
互いに沈黙する。
「兄さん...俺...」
「あーもう、いいから、なんでもない。」
今すぐこの場を終わらせたかった。
もう“あの頃“を思い出したくなんてなかったからだ。
「俺、高校からさ」
会話を止めようとしたのに未だ尚、続けようとする日向に話聞けよ、というが止まらない。
「変わってみたけどさ...」
諦めて俺は日向の話に耳を傾けることにした。
「幸せになんかなれなかったよ」
日向は先程の微笑みとは違う、自嘲したような笑みを貼り付ける
気がつくと、拘束されたように握られた手は離されていた。
「他の場所でも結果は同じだよ、幸せになるビジョンは見えない、僕にはなんにもないんだ。」
「お前が...」
そう言って、俺の先程の言葉を否定するような口ぶりと少し傷ついたような表情の日向に俺は思わず口を挟むが、日向は言葉を重ねる
「僕が変わればいい話なんだろけど...」
「僕が変わるとすれば、僕が僕じゃなくなった時だ...生まれ変わった時...」
その声は少し震えていて、日向が言葉を重ねる毎に俯いていても、日向がどんな表情をしているのか分かる。
俺は...
俺が...
最後に、弟に何か言えるとすれば...
「お前はっ!!」
俺の声に日向は驚いたように顔をあげる、やはり日向の目は少し潤んでいた。
「考えるな、行動しろ!」
「経験で人はいくらでも変われるから!!」
でも...と言葉を紡ごうとする日向の離されていた手を今度は自分から掴む
「お前は...」
「お前だけは...諦めるなよ、」
こんなの...お前のためじゃないな、
こんなダメな俺のためだ。
その日は
よく、眠れなかった。
日向が俺の言葉をどう取るか分からなかったからだ。
日向が、
また自傷行為をしてしまったら?
もし、もしも、
俺の言葉で、日向が...
死んでしまったら。
俺がどれだけ日向のことを嫌いでも、死んで欲しいなんて思ってなかったからだ。
1
あなたにおすすめの小説
【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜
キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。
モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。
このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。
「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」
恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。
甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。
全8話。
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
兄弟の恋のキューピッドはかわいい天使
ユーリ
BL
魔法省に勤める千歳は仕事で天使の子育てを言い渡された。しかしその天使はあまりにも元気で千歳の手に負えなくて…そんな時、自分を追いかけてきた弟が子育てに名乗り出て…??
「まさか俺と兄さんの子供!?」兄大好きな弟×初の子育てでお疲れな兄「お仕事で預かってる天使です…」ーー兄弟の恋のキューピッドはかわいい天使!
うるさい恋人
さるやま
BL
攻めがキモイです。あとうるさい
攻め→→→←受け
小森 陽芳(受け)
野茂のことが好きだけど、野茂を煩わしくも思ってる。ツンデレ小説家。言ってることとやってることがちぐはぐ。
野茂 遥斗(攻め)
陽芳のことを陽ちゃんと呼び、溺愛する。人気の若手俳優。陽ちゃんのことが大好きで、言動がキモイ。
橋本
野茂のマネージャー。自分の苦労を理解してくれる陽芳に少し惹かれる。
【8話完結】どんな姿でも、あなたを愛している。
キノア9g
BL
かつて世界を救った英雄は、なぜその輝きを失ったのか。そして、ただ一人、彼を探し続けた王子の、ひたむきな愛が、その閉ざされた心に光を灯す。
声は届かず、触れることもできない。意識だけが深い闇に囚われ、絶望に沈む英雄の前に現れたのは、かつて彼が命を救った幼い王子だった。成長した王子は、すべてを捨て、十五年もの歳月をかけて英雄を探し続けていたのだ。
「あなたを死なせないことしか、できなかった……非力な私を……許してください……」
ひたすらに寄り添い続ける王子の深い愛情が、英雄の心を少しずつ、しかし確かに温めていく。それは、常識では測れない、静かで確かな繋がりだった。
失われた時間、そして失われた光。これは、英雄が再びこの世界で、愛する人と共に未来を紡ぐ物語。
全8話
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる