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しおりを挟む脱衣所で服を脱ぎ、兄弟で風呂に入る。
...勿論タオルも身につけていない、すっぽんぽんだ。
その事実に弟は顔を赤くしていた、だが兄は違った...その逆で顔が青ざめている。
何故かって...
俺は謎の敗北感に苛まれている。
思わず、日向の身体を凝視してしまう
俺たちは昔も別に一緒に風呂に入るような仲では無かった。最後に日向の身体を見たのはいつだっけ...そうだ、家族で市民プールに行った時だ、そこでの脱衣所で見たんだ。
あの時は小っちゃくて...女の子みたいだったなぁ...
それに...腕にも...
そんなこと考えながらもぼーっと日向の身体を見つめていると気付いたら、日向はこちらにシャワーヘッドを向けていた。
シャワーの冷水の雨に打たれる
「うわっ!!冷たっ!!」
「へへっ...兄さんの変態!」
「はっ!?...ちげーよ!!...馬鹿なことやってないで早く髪洗えよ!!」
はぁいと日向は軽い返事をしてシャワーの温度調節をしながら風呂椅子に座る。
「...ねぇ、兄さん」
「...何?」
「僕の、髪洗ってよ。」
そう言った日向のうなじは真っ赤で...なんか...複雑な、変な気持ちになった。
いやエロい気分とかではなくて、なんかなぁ...
何も言わずに固まる俺に日向は
「いや、違うんだ!時間ないから、お互いに洗おうって...いいたくて...」
「それって時間短縮になるのか...?」
日向も自分で言っていておかしな事に気づいたのか真っ赤だったのが更に赤くなっているような気がする...
つくづく日向は何がしたいのか、俺に何を思っているのかが分からない。
まぁ、
「...別にいいよ、洗ってやるよ」
それに応える俺も何を考えてるのか分からない。
「髪...サラサラだな、変わってない。」
「え...あ、ありがとう...」
戸惑うように縮こまり日向は大人しくなる。
人の髪を洗うなんてしたことがないけど...これで大丈夫なのか?
ぼーっとそんなことを考えながらとりあえず泡立てる、
「いてっ...」
「...?どうした?」
「目に泡入った...」
夢中でしていたら、日向の目に泡が入ってしまったようだった。
「えあ、ごめん...じゃあ日向、一旦下向いて、流すから。」
「...えぇっ」
日向は目をつぶりながら、あからさまに落胆したような声を出す
それに俺はムカつく、
「なんだよ、文句あんのか、なら自分でやればよかった...」
「いや、違くて!!...あの、だから、その」
日向はゴニョゴニョと言い淀んで何が言いたいのか分からない、一体何がしたかったのか最初から分からないし、段々とムカついてきた。
「なんだよ...はっきり言えってば」
「...あーもうっ!!」
日向は自身の拳をギュッと握る、そしてはっきりと言った。
「昔っから、兄さんと風呂入ったことなかったから!!...寂しかったんだよっ!!」
「なんか...もっとあんじゃん!シャンプーしてる時に痒くないですか~みたいな言うの!!」
「...はぁ、なるほど?」
日向はハッとしたように下を向く、
...なるほど、そうなのか、日向は...
俺はそのまま下を向いた日向の頭を掴みシャワーヘッドを手に取り、シャワーの温度を冷水に変える
そのまま、シャワーの水を日向にぶっかけた。
え、あ、と困惑していた日向も段々と冷水に変わっていくのに気づいたのか、
「うわっ!!何何!!」
と声をあげる
その様子が面白くて俺は爆笑する
シャンプーが落ちたのを確認すると、日向の頭から手を離しシャワーを止めてやると、日向はびっくりしたように振り返り俺の方を見る。
「さっきの...仕返しなっ!!」
そう言うと日向は数秒、笑う俺の顔を見つめる、そして日向も笑い出した。
「兄さんまで...そんな...!!」
「なんだよ、お前がやれって言ったんだからなっ!」
「や、やれとは言ってないし!!」
2人して笑う、
...多分、日向はこうゆうのがしたかったのかもしれない、分からないけど...
案外、悪くない。
「あ、そうだ、日向も俺の髪洗ってよ。」
「え...い、いいの...?」
「なんだよ、別にお前が嫌ならいいし」
「やります!やらせていただきます...!」
日向と位置を交代する、次は俺が椅子に座り日向が俺の髪を洗う番みたいだ。
なんだか...日向の手が大きくなった気がする、当たり前に手比べなんてした事ないけど、人に頭を洗われていると分かる。
さっき、日向の身体を見た時、目に入ったのは腕の傷痕だった。
白く、ケロイド化した傷痕、そこは凄く痛々しくて。
傷痕が残ってしまったのか...あの時、まぁまぁ出血していたから残ってもおかしくないのだろう。
あの時の感情が再び呼び起こされて、また悲しくなって凝視してしまった。
日向に見ていたことは気づかれているのだろうか、見られたくなくてシャワーをかけてきたのだろうか...
...なんでこんな、
悲しくなったのだろうか
昔、俺は日向のことは無関心だったから、今更、兄弟らしいことをしたいなんて日向は思ってると思わなかった。
...なんで日向は...
「お痒いところはございませんか~?」
「え...あ、はい...って、何遊んでるんだよ。」
「別にいいじゃん!俺、兄さんとこうゆうことしたかったんだ!」
「へーへー...そうですか...」
髪を洗われているから下を向いているが、日向の声から無邪気に笑う日向が目に見える
そんな日向に...
俺は、素直に嬉しかった。
僕に髪を洗われながら、少し口が緩んで微笑む兄さんが目の前の鏡に映る。
そんな兄さんの後ろにいる僕は...
デロリと蕩けた微笑みをして...
目は光なんてなくて...
気持ち悪いなぁ...
そう、思った。
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