それなりに怖い話。

只野誠

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かげ

かげ

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 少年はその日、小学校から帰るのが少し遅くなった。
 もう日も暮れかけで、下校途中の少年からは長い影が出来ていた。

 夕日に照らされた自分の影を見て少年は少し怖くなった。
 自分からできた影なのに、その影は自分の三倍以上も背丈があったからだ。
 また道路から塀のある道へと移ると、その塀に影が写り込み、急に影に近づかれた、少年はそう思いさらに影が怖くなる。

 ただ影は影だ。

 何か悪さをしてくるわけではない。
 そのはずだった。

 少年が足を止め塀に写る影をじっと見つめた後、再び歩き出そうとしたときだ。
 少年の足は動かなかった。

 少年は自分の足を動かそうとするのだけれど、まるで何かに縫い付けられているかのように動かない。
 動かない代わりにゾワゾワとした感覚が足にはあった。
 そして、そのゾワゾワとした感覚は足から徐々に上がってきていた。
 足首、腿、腰といった感じに上がっていく。
 しまいには少年の全身がゾワゾワした感覚に包まれ身動き一つとれなくなる。

 少年は必死に体を動かそうとするが動かせない。それどころか声一つ出ない。

 そうこうしていると、少年の体が勝手に動く。
 ゾワゾワした感覚に突き動かされるように勝手に動いたのだ。
 少年の視線は塀に映し出されている影に自然と向けられる。
 そこにあるのは影だけなのに、なぜか目が合った、少年はそう感じた。
 そして、壁に写っている影が笑っているように思えた。

 また勝手に体が動く。
 ゾワゾワとした感覚に体が勝手に動かされる。
 それで少年は気づいた。
 影のほうが若干早く動いているのではないかと。

 まるで本体と影の関係が入れ替わったかのように、影が動いたことで少年の体が無理やり動かされるかのような、そんな感じがしたのだ。

 それが分かったところで少年にできることはない。
 少年にできることはなく、ただ影が動いた後、無理やりその動きを模倣させられるというだけだ。
 多少力を込めて抵抗すると、その動きに逆らうことはできたが、それが本体と影の関係が入れ替わってしまっている、ということの証明のように思えてしまった。

 少なくとも今の自分の体は影に操られている。
 少年はそう考えていた。
 泣きたかったが、今の影に操られている少年は泣くことも、声を上げることもできない。

 影はぎこちない動きで塀のある道を先へと進んでいく。
 少年の動きもぎこちないものであったが、小学生の子供だ。
 他の通行人からはふざけていると思われても不思議ではない。

 影は進み少年は影に続く。
 そして、塀は終わり交差点へと出る。
 塀が終わりすぐに車道があるような狭い交差点だ。
 信号機があり白線が描かれている。
 影は車道に写り込み進む。
 信号機は赤だ。
 細い道のわりに交通量は多い。

 その時少年は影が自分を殺す気だと気づけた。
 自分を殺して完全に自分に成り代わる気なのだと。

 少年は影の動きに必死に抵抗する。
 前方をすごい勢いで車が通過していく。

 影が横断歩道に差し掛かる。
 少年は影の動きに必死に抵抗した。

 少年の鼻先を車がかすめて通っていく。
 その車は少し先で止まり、車の窓を開け、少年に向かい、危ないだろ、と大声で怒鳴る。

 その声に驚いてか、少年の体は自由を取り戻す。
 少年はその場にひっくり返り、泣き出し、車の運転手に向かい、ありがとうございます、と繰り返した。

 何も知らない運転手は逆に困惑するばかりだ。




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