私のお猫さま 25歳を迎えて猫又さまになりました

月見こだま

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第一部

04:猫又さまの記憶

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 その日の夜、ミケは深く眠っていた。わたしがパソコンに向かっている横で、ミケの二本のしっぽが微かに震えている。



 ──夢の中。
 夢の中のミケは、若くて痩せた、足の速い野良猫として存在していた。場所は、瓦屋根が連なる、江戸の裏路地。
 雨が降る夜、路地裏で震えている少女がいた。七つくらいの、黒い着物を着た、小さな女の子。彼女は病気で、体は弱っていた。

『ねぇ、みけ。寒いね』

 少女は、ミケを抱きしめた。熱い額をミケの泥やホコリに薄汚れた毛に押し付け、『あったかい』と呟いた。ミケは、その少女を守りたいと強く思った。
 ある日、少女が病で危篤に陥る。薬が必要だ。ミケは、薬の在り処を知っていた。
 ミケは必死に駆けた。屋根を飛び越え、橋を渡り、目的の家の敷地に忍び込む。しかし、薬を咥えて引き返そうとした瞬間、屋敷の番犬に追い詰められた。

『あの子を……あの子を助けなきゃ……!』

 ミケは、薬を落とさないよう、牙を食いしばって番犬に立ち向かった。小さな命と、一途な想い。その結果、ミケは傷つき、それが元で力尽きてしまった。
 意識が遠のく中、ミケの脳裏に、あの声が響いた。

『汝、長寿と一途な忠義により、霊力を得て再び生を受けん。その愛を、永遠の存在となさん』

 そして、今のアパートの、わたしの腕の中で目覚めた。
 ミケは、ハッと目を覚ました。金色の瞳が涙で潤んでいる。

「ミケ、どうしたの?」

 わたしが心配して声をかけると、ミケはわたしの胸に飛び込んできた。

「桜ちゃん……。わたしは……。わたしは、ただの長生きした猫じゃなかったにゃ。わたしは、誰かを守るために、生まれ変わった猫又だったにゃ」

 ミケは、静かに過去の記憶をわたしに話してくれた。

「わたしの願いは、あの少女を守ることだったにゃ。そして、その願いの形を変えて、今、この家で、桜ちゃんのそばにいるにゃ」

 その言葉に、わたしは胸が詰まった。ミケが、ただのペットではない、遥かな過去を持つ守り神のような存在だと知った。

「ミケ……。わたしのところに来てくれて、ありがとう」

 わたしは、ただそれしか言えなかった。ミケの猫又になった理由は、『愛と忠義』だった。そして、その愛は、今、わたしに向けられている。
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