私のお猫さま 25歳を迎えて猫又さまになりました

月見こだま

文字の大きさ
25 / 58
第二部

07:猫又さまのためにできること

しおりを挟む


「こいつ……」

 若葉がルイと呼ばれた猫を見て目を見開いた。

「金色の人間。オレに気付いてたんだな。ルナ姉の言った通り、いい目をしてる」
「ルイ、また勝手に……」
「勝手にじゃない。一応、クロの判断には従ってる」

(ルナ姉……。なんにしても、味方ってことかな)

「ねえ、九尾のひと粒……って何?」

 わたしはさっきの言葉が気になっていた。『九尾の猫又』、それも神格化した存在なんて滅多にいないとは思っていた。けど、それはもしかしたら、資質よりも外因的要素が強いのかもしれない。
 長いしっぽを揺らし、ルイくんは頷いた。

「九尾のひと粒は、九尾の狐が零した涙だ」
「涙?」
「ただの涙じゃない。九尾の狐の妖力を乗せたものだ。――本来、猫又が九尾になること自体あり得ない。それを可能にしたのがそのひと粒の涙だ」

 ルイくんは続けた。
 そのひと粒は強大な妖力をもって、生物を変質させる。魂にしみ込んだそれがゆっくりと。
 たとえひとつの生で妖怪化しなくとも時を巡っていずれ九尾となる。
 本来であれば、神格化することも、九尾となることもあり得ない魂が。
 
「なるほど。九尾の狐」

 納得したように若葉が頷く。……確かに。九尾で真っ先にイメージするのは狐だ。まさか本当に存在していたなんて思いもしなかったけど。

「でも、なんで? 厄災だなんて……」

 お母さんも疑問を口にする。
 九尾といえば、傾国の美女のイメージが強い。国政を乱し、国を滅亡させる。けれど、同時に神獣でもあったはずだ。

「持つもの、接するものによって、価値は変わってくる。過ぎた力は歴史の流れを正す方向に使われても扱いとしては『厄災』になる。あの『猫又食い』はそうなりたいだけだ」 

『人間も同族を殺すだろう』とルイくんが続けた言葉を否定することは出来なかった。つまり、その猫又食いがこれから行おうとしているのは領地争いの一貫なのかもしれない。

「あいつがクロかそこの新入りを食ったら、次はオレやルナみたいに霊力持ちの猫が食われるだろうな。『妖力持ち』と『霊力持ち』は美味いらしい」
 「ルイ」

 窘めるようにルナちゃんが呼ぶけど、ルイくんは続ける。

「それで、次は金のオーラを持つ人間」
「俺か」
「ああ。それと――その女」

 不意に、わたしを見る。

「え? わたしにはなんの力もないはず、だけど……」
「残滓が残ってる。微かにだが、九尾の力だ」
「うそ!?」
「今まで生きてきて、本当に何もなかったか? 例えば強く思っていたことが叶ったとかもないか?」
「あ」

 確かに、思い当たることはある。
 強く願ったのは、ミケと過ごすために家で出来る仕事を。その願いは叶った。
 そして、ミケとずっと生きていたいと。――それも、ミケが猫又になったことで叶いそうだ。

「口に出して願っただろう。お前の言霊は『願う力』が異常に強い。少しの雑念もなく口にした願いは『引き寄せる力』になる」
「ルイ、それは本当?」

 ルナちゃんがルイくんを見る。もしかすると、ルナちゃんとルイくんはそれぞれ別のことが見えているのかもしれない。

「――確かに。姉さんは運が強いとも思ってたけど」
「だが、願いを叶えるということは、逆もしかり。強く口にしたものはそれが良くも悪くも現実になる可能性が高い」

 つまり、宝くじで高額当選とかもいけるってことかな? それで大金を手に入れたことで不幸になるとか、今だと――


「例えば今「今『最悪』をイメージするな。――お前の教育も必要だな」

 ルナちゃんの役目はミケを育てること。
 そして、ルイくんの役目はわたしが何なのかを教えること?




(そうか。――これがわたしに出来ること。ミケと、強くなることができる)


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

他国ならうまくいったかもしれない話

章槻雅希
ファンタジー
入り婿が爵位を継いで、第二夫人を迎えて後継者作り。 他国であれば、それが許される国もありましょうが、我が国では法律違反ですわよ。 そう、カヌーン魔導王国には王国特殊法がございますから。   『小説家になろう』『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。 貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。 元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。 これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。 ※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑) ※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。 ※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

処理中です...