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ドンドンドンッ!!
木戸が壊れそうな音を立てて叩かれた。
びっ…くりした。
息が止まるかと思った。
「セブルト! いないのか?! セブルト!」
「…こんな夜中に迷惑だ」
木戸を開けながら声の主に悪態をつく。
「セブルト! なぜ城を抜け出した!」
散々放っておいたくせに。今頃オレがいないことに気付いたのかよ。
「大声を出すなよ王様。…って、まさか1人か?」
慌てて手を引き、家の中に招き入れる。
護衛も連れずにこんなボロ屋だらけの街へ来るなんてどうかしてるだろ!
「く…るし…」
大きな体にぎゅうぎゅう締め上げられて息ができない。
「なぜ…城を抜け出した」
「ちょ…はな、して。いき…できな…」
僅かに緩められた腕。ようやく息を吸うことができた。
「なぜだ」
なぜなぜ期のガキかよ…。
「はぁ。…腹が減ったからだ」
「腹? 3食では足りぬのか?」
はぁ?
「1食も食えなかったから、ここに来たんだが?」
「1食も…食えなかった?」
ガキの次は模倣鳥かよ。
「そうだよ。庶民なんぞに食わせる飯は城にないそうだ。あんたが来る夜以外には何も食えなかった。あぁ、王妃様の茶会で美味い菓子とお茶をご馳走になったか」
「……」
『そんな筈ない』とは言わないんだな、王様。眉間に皺を寄せると渋みが増して魅力的だぞ。
「まぁでも。この街なら腹いっぱい飯が食えていい。オレはここで暮らす…」
「お前は私と城へ戻るぞ。…ヤツらは王族への反逆罪で全員処刑する」
「は…、処刑? オレは王族じゃ…」
「王族だ。私の側妃なのだからな」
「側室だろう? ただの妾だ」
「違う! セブルトは私の4番目の妃だ。政略結婚ではない、心から求める私の妻はお前だけだからな!」
え…?
「愛している。セブルト、どうか帰ってきてくれ」
ぎゅうっと抱き締められる。先ほどの馬鹿力ではない、優しい抱擁。
胸がギュンとした。
「……帰るには4つ条件がある」
「申してみよ」
「親方の仕事を手伝いたい。会うのを許してくれ」
「…手紙なら許そう」
嫉妬深いなぁオイ!
でも、目元までカァッと赤くなっててなんか可愛いかも。
「2人きりでは会わないから。…ダメか?」
首を傾げれば、驚くほどチョロい旦那様は
「分かった」
あっさり了承してくれた。
「2つめは?」
「飯をちゃんと食わせて欲しい」
「当たり前だ」
「3つ目は?」
「オレに仕事をくれ」
「私に夜毎愛されるのが仕事…」
「男娼じゃねえんだ! オレがあんたの側妃なら、国の役に立つ仕事を与えてくれ。街道の視察に行く時とか、オレにも何か出来ることがあるはずだ」
「あぁ。そうだな。…魅力的なお前を他の者たちに見せるのは心の底から嫌だが。…嫌だが」
なんで2回言った?
「今度の夜会でも私の妻として他国からの客人を迎える際に、私の側にいて欲しい」
「分かった」
「もう1つは?」
「侍女たちを処刑するのはやめてほしい」
「それは駄目だ。王族を軽んじた罰を与えねばならぬ」
「オレが庶民出身だからアイツらは許せないってんだろ? なら……」
ぼそぼそ耳打ちしたオレの言葉に目を見開く王様。
「…そうか。その髪、その瞳。…やはり」
「ああ」
「夜会にはお前の兄も招いてある。兄弟仲睦まじく語り合いがよい」
「ありがとう」
子どもの頃に別れて以来だ。突然、母に手を引かれて国を出たから、挨拶もできないままに別れることになってしまった。
兄さまはオレを覚えているだろうか。
木戸が壊れそうな音を立てて叩かれた。
びっ…くりした。
息が止まるかと思った。
「セブルト! いないのか?! セブルト!」
「…こんな夜中に迷惑だ」
木戸を開けながら声の主に悪態をつく。
「セブルト! なぜ城を抜け出した!」
散々放っておいたくせに。今頃オレがいないことに気付いたのかよ。
「大声を出すなよ王様。…って、まさか1人か?」
慌てて手を引き、家の中に招き入れる。
護衛も連れずにこんなボロ屋だらけの街へ来るなんてどうかしてるだろ!
「く…るし…」
大きな体にぎゅうぎゅう締め上げられて息ができない。
「なぜ…城を抜け出した」
「ちょ…はな、して。いき…できな…」
僅かに緩められた腕。ようやく息を吸うことができた。
「なぜだ」
なぜなぜ期のガキかよ…。
「はぁ。…腹が減ったからだ」
「腹? 3食では足りぬのか?」
はぁ?
「1食も食えなかったから、ここに来たんだが?」
「1食も…食えなかった?」
ガキの次は模倣鳥かよ。
「そうだよ。庶民なんぞに食わせる飯は城にないそうだ。あんたが来る夜以外には何も食えなかった。あぁ、王妃様の茶会で美味い菓子とお茶をご馳走になったか」
「……」
『そんな筈ない』とは言わないんだな、王様。眉間に皺を寄せると渋みが増して魅力的だぞ。
「まぁでも。この街なら腹いっぱい飯が食えていい。オレはここで暮らす…」
「お前は私と城へ戻るぞ。…ヤツらは王族への反逆罪で全員処刑する」
「は…、処刑? オレは王族じゃ…」
「王族だ。私の側妃なのだからな」
「側室だろう? ただの妾だ」
「違う! セブルトは私の4番目の妃だ。政略結婚ではない、心から求める私の妻はお前だけだからな!」
え…?
「愛している。セブルト、どうか帰ってきてくれ」
ぎゅうっと抱き締められる。先ほどの馬鹿力ではない、優しい抱擁。
胸がギュンとした。
「……帰るには4つ条件がある」
「申してみよ」
「親方の仕事を手伝いたい。会うのを許してくれ」
「…手紙なら許そう」
嫉妬深いなぁオイ!
でも、目元までカァッと赤くなっててなんか可愛いかも。
「2人きりでは会わないから。…ダメか?」
首を傾げれば、驚くほどチョロい旦那様は
「分かった」
あっさり了承してくれた。
「2つめは?」
「飯をちゃんと食わせて欲しい」
「当たり前だ」
「3つ目は?」
「オレに仕事をくれ」
「私に夜毎愛されるのが仕事…」
「男娼じゃねえんだ! オレがあんたの側妃なら、国の役に立つ仕事を与えてくれ。街道の視察に行く時とか、オレにも何か出来ることがあるはずだ」
「あぁ。そうだな。…魅力的なお前を他の者たちに見せるのは心の底から嫌だが。…嫌だが」
なんで2回言った?
「今度の夜会でも私の妻として他国からの客人を迎える際に、私の側にいて欲しい」
「分かった」
「もう1つは?」
「侍女たちを処刑するのはやめてほしい」
「それは駄目だ。王族を軽んじた罰を与えねばならぬ」
「オレが庶民出身だからアイツらは許せないってんだろ? なら……」
ぼそぼそ耳打ちしたオレの言葉に目を見開く王様。
「…そうか。その髪、その瞳。…やはり」
「ああ」
「夜会にはお前の兄も招いてある。兄弟仲睦まじく語り合いがよい」
「ありがとう」
子どもの頃に別れて以来だ。突然、母に手を引かれて国を出たから、挨拶もできないままに別れることになってしまった。
兄さまはオレを覚えているだろうか。
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