大工のおっさん、王様の側室になる

くろねこや

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「側妃…あなたは……お前はセブルトか?!」

大人になって、すっかり逞しくなった義兄さまがオレを見ていた。

リグルド・マーレシュア。

マーレシュア国の王だ。

別れた当時は王子だったし、体つきは変わったけれど、父さまに似た面差しはあの頃と変わっていない。

「義兄さま!! ご無沙汰しております」


「何? 今セブルト殿はマーレシュア王を『兄』と呼んだか?!」

「まさか…王弟殿下?」

「庶民ではなかったのか?!」

「そういえば、太陽のような髪に、空色の瞳…」

この前まで、“麦わら色”とか言ってただろうがよ。“太陽”て。変わり身はやいな…。


この国では・・・・・庶民で、ただの側妃・・・・・ですが何か?」

「セブルト。そなたは王族であろうが」

オレの隣がピリついている…。

『そういえばこの人王族だったー!!』という声にならない声が数人分聞こえた気がした。

「でも私たち、処刑されてないわよね…」

「まぁその程度のご寵愛ということだろう」

ヒソヒソ聞こえてんぞ、そこ!!


私の妻・・・は優しいからな。貴様らが処刑されなかったのは、ひとえに我が妃・・・の慈悲ゆえだ。ありがたく思うことだ」

敢えての強調は、オレの元侍女たちに向けたものであり、オレの義兄さまに向けた刃でもあった。


その後。

「セブルトォォ! 立派になったなぁぁ…」

オレを見て大号泣の義兄さま。

その泣き顔を隠すために胸で抱き締めていたら、誤解した旦那様に引き剥がされそうになったり、『ずっと会っていなかった兄より私の方が好きだろう?』とドヤ顔で義兄さまにマウントを取ろうとしたり…。

それを見た王妃様が、扇では隠しきれないほど爆笑していたり…。


さらに夜会が終わった後。

「兄である私は認めていない! この婚姻は無効だ!」

リアスティード様に後ろから抱き締められて座ったソファ。

向かい側に座った義兄さまは唾を飛ばしそうな勢いで叫ぶと、オレの背後をギッと睨みつけた。

「私は王になったし、私の子が王太子に決まっている。後継者争いはもう起こらないから、兄さまと一緒に帰ろう?」

かと思えば猫撫で声でオレに微笑む義兄さま。

「オレは義兄さまと別れたあの日から、ずっとこの国で生きてきました。親方に拾ってもらってからは、オレにとってあの人こそが父であり、家族でした」

「セブルト…」

「今は、この方の側妃です。リアスティード様の家族です」

「あぁ! 愛しているよ、セブルト。我が妃よ」

ギュッと後ろから抱き締められた腕にさらに力が込められて少し苦しい。

でも、この苦しさがなんかクセになってきた…かも? 妙な安心感…。

「ぐぅっ…! ……お前は幸せなのか?」

義兄さまこそ締め殺されそうな声だ。

「はい。幸せです」 

最近はちゃんと朝昼夜とご飯を食べさせてもらってるし、お茶やおやつも出るし、新たな水道橋の建設にも関わらせてもらってる。

親方の仕事も手伝うことを許してもらってるし、(夫同伴だが)会うことも許可されてる。

夜も毎日満足させてもらってるし、『愛してる』って朝も夜もキスしてもらってる。

「そ…うか」

即答したオレに、義兄さまは眉をしんなりさせながらも優しく微笑んだ。

「この国とマーレシュア国が手を繋ぎ、末永く平和であったなら、またこうして義兄さまと笑ってお会いすることができましょう」

平和が1番だ! 間違っても戦争を起こしてオレを取り返そうなんてしないでくれよな!

「あぁ、そうだな。…リアスティード殿。我が最愛を…最愛の弟をよろしく頼む」

何故か『最愛』と2度言った義兄さまが、眉をヒクつかせながらオレの背後に手を伸ばした。

旦那様はその手を掴むと、ブンブン音がしそうなほど激しく振った。

握手というより、まるで新しい形のアームレスリングのようだ。

2人とも手の甲に太い血管が浮いている。

義兄さまの額にも切れそうな血管が…。


その夜。

元侍女たちや元衛兵たち、後宮の元料理人たちがオレに土下座してきた。みんな貴族の子なのにいいの? あ、ご両親まで…。

だから処刑しないってば。


オレのいる後宮に、義兄さまが忍び込もうとして追い返された…という話は朝になってから聞いた。

え…。忍び込んでどうするつもりだったの?

『夜這い』?

いやいや、リアスティード様じゃあるまいし…。ガチムチなオレに欲情する訳ないでしょ。母違いとはいえ兄弟だよ?!

え…。本当?
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