チョイス伯爵家のお嬢さま

cyaru

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カウント 2.99

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母の田舎である伯爵領に引きこもったローゼ。
田舎ですから学園なんて御座いません。
ここではもっぱら家庭教師の講師陣が淑女、紳士の教育を個別で行います。

「そう、上半身の角度はよろしいわ。ですが‥‥ここ!」

引いた足をくいっと指で押されます。

「きょわっ!!」
「なんです。その声は。カモノハシが逆立ちしたのですか!」

(えっ?するの??)
「い、いいえっ」

「そう、この位置よ。これで少なくとも5分は維持しないと!数えるわよ」

講師がゆっくりと数を数えます。

(くっ…苦しい…ほんとに5分もこんな姿勢することあるの??)

「なんです?上半身が揺れていますよ!貴女はハシビロコウ!動かないの!」

(マジィィ?無理だって!2メートルもないもん!!)

「残り10秒‥‥ワン‥‥トゥ‥‥」

(ぬぉぉぉ~!カウント2.99かよ!さてはプロレスファンね!!)

「はい。よくできましたね」

(あのぅ‥‥最後どう考えてもトゥから10秒はありましたよね??ね??)
「ご指導ありがごうざいました」

厳しい講師陣のようですが、しっかりと食いついていくローゼです。
と、言っても田舎ですし良いご縁とは程遠いのですけどね。
母にとっては娘、祖父母にとっては孫のローゼが少しでも良い家と縁が持てるよう講師を選び抜きました。

来て下さっている講師の方々は、このポンタ王国だけでなく隣国などの王女、王子にも教鞭をとる方々ばかり。
領地の繁栄で資金力は国内トップ3に入るとはいえ、金をかけますねぇ。

「さてと‥‥今日の授業は終わった事だし、行ってきますわ!」
「これ!ローゼ!お待ちなさい!お待ちなさい!!」

母と祖母の叫びは風に乗ってどこかに飛んでいきます。
ローゼは愛馬のドランチに颯爽と跨ると丘を目指してドランチを走らせます。

「ハイっ!!ハイッ!!」

騎乗する姿勢も真っすぐで凛々しいです。
ローゼは領地に到着するといきなりナイフで腰まであった髪を握ると肩口までバッサリ落とします。
斜めに削ぐように落としたのでザンバラ状態。
目の前で起こった突然の出来事に祖母は卒倒してしまいます。
メイドたちに切りそろえてもらった時は、読者様の世界でいうボブになっておりました。
モブではございません。ボブですボブ。顎のラインで揃えたボブです。

それも5年も経てば伸びてくるというもの。
時折揃えながらバッサリとやったあの頃くらいまではあと一息まで伸びています。

丘までやって来ると手綱を操り、ドランチを止めます。
手ごろな枝に手綱を結びつけると青々と茂った若草の上にゴロゴロゴロ‥‥。
ローリングで下っては、ハァハァ上り、またローリングでゴロゴロ。
そして鞍に結び付けた袋から麻袋を取り出すと、ソリのようにして滑っては上がり滑っては上がり。
一人遊びもここまで来ると大したものですがこれでも17歳。いろいろヤバいです。

そして麻袋をパンパンと広げ腰につけると今度は木に登ります。
これこれ!!一応チョイス伯爵家の令嬢でしょうがっ!やめなさい!危ないですよ!

木に登ると木の実を丁寧にむしり、腰につけた麻袋に放り込みます。
放り込んでいるのはクルミに似た木の実のようです。
その名も【ニャバランボの実】固い殻を石で叩き割り、小さな実を炒ってスープにいれると絶妙な甘みが出る木の実です。
大量に収穫しているのは、ニャバの実は数日しか収穫できない実です。

花が咲くと実になる部分にはサクランボのような果柄が伸びてその先に固い殻で覆われる実がつきます。
そこまでが3日。木から落ち果柄が取れるとその実はもう食べられません。殻が固くなると2日で落ちてしまうのです。
なのでローゼは果柄ごとプチプチと、とっていきます。
しかし、バランスの取り方うまいですね。まるでおサルさんのようです。

袋がいっぱいになったようでスルスルと木から下りるかと思ったらどこかのバイクでヒーローしている変身キャラのように袋を上に放り上げると【とぉっ!】っと飛び降ります。
おぉぉ~着地はまるでニンジャですね。おっと落ちてきた袋もしっかりキャッチ。
ガっと袋を掴んだらダッシュします。
アメフトの選手のようですね。肩を斜めにして走っていますよ。どこで覚えたんでしょう。

ドランチの元まで来ると、鞍に大きな袋を結び付けてヒョイっと跨ります。
帰りはゆっくりのようですね。

パッカパッカとドランチの足が踊るように丘を降りていきましたよ。


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