チョイス伯爵家のお嬢さま

cyaru

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お嬢様、出発!!

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ホーホー‥‥ホーホー…

まだフクロウの声のする日の出前。明け方の4時頃ですがチョイス伯爵家の居候とも言うお嬢様のお部屋ではメイド数人、侍女数名、侍従数名がお嬢様の部屋にいます。

「お嬢様、私はBBが希望!なんでもいいです!」
「私は、クールG!ウチワなら大きさはなんでもいいです!」
「えーっと…写真集を姉に頼まれたんです。お願いします」
「私は出来れば限定発売のペンが良いんですけど、無ければなんでも!」

順番に希望の品を聞いてメモをしていくローゼ。
お金も預かってあのネコさんの財布に入れていますよ。

「うわぉ!なんかお財布がパンパン!成金婆になれそうね!」
「ダメですよ。ネコババしたら本当に婆になりますよ!」
「大丈夫。自分の分もちゃんとお駄賃貯めてたし。よし。行ってくるわ!」

今回はチーター柄のリュックを背負います。
好きですね‥‥その系統…。

そーっと部屋の扉を開けると伯父夫婦の寝室の前を抜き足差し足・・・。
祖父母の部屋の前も忍者のように足音を立てずにそーっと。
母の部屋の前は息すら止めて、素早くつま先歩きでトットット。

使用人の使用する出入口まであと少し…そーっとそーっと・・・

「こんな暗いうちから何処に行かれるのです!」

ヒェェェ!!目の前に仁王立ちする女中頭がそこにいます。
御年人生半世紀!若い頃はモテモテだったのに言い寄る男を蹴散らし投げ飛ばし、それでも追ってくる求婚者の群れを湖の対岸に泳いで逃げ切ったという武勇伝の持ち主!!

ジャジャーン!! その名も「キラーメンズポイットナ女中頭」(通称ポトナ)

最早これまで…アゥアゥとなってしまったローゼと使用人たち。
しかし・・・

「お嬢様、わたくしはリーダーのハル推しなのです。出来ればプリントTシャツをお願いします。見るだけなのでサイズは問いません。あっとブースがあれば後ろでダンスデビューをしたJrのシィ君のグッズがあれば何でも。ウフフ…」

ほぇぇ??そ、そうだったんですね。イケメンユニットはもう何十年も前から続く男性だけのアイドル達。
売れっ子の弟分としてJrになるとライブでダンスを踊ったり、サポートしたり。
おや?似たようなのがニャポーンにもあったような‥‥気のせいです。

その後、女中頭を先頭にして寝ぼける本日の馬小屋当番の横を堂々と通り抜けてドランチの元に行きます。

カタリ…っと柵を外すとそーっとドランチを連れ出します。

「お嬢様、これを」

差し出されたのは最近やっとチョイス伯爵領に試供品提供された「アーシモトピッカ」
これがあれば前方10mは明るく照らせますね。

「こっこれは!!」
「やはりお嬢様、見るとこが違いますね。そうLED光源ですので虫が嫌うんですよ」
「流石だわ!ドランチのトップスピードでカナブンは避けれられないもの!!」

ドランチに取り付けるのではありません。
ひと昔前のトンネル工事で使っていたようなヘルメットにアーシモトピッカを取り付けます。
点灯させると おぉぉ~ なかなかに明るいですね。

アーシモトピッカを点灯させたヘルメットを胸に抱くローゼ。
下から当てられる光は、まるでお化け屋敷のお化けのようです。
ですが、気にしません。
サッとヘルメットを被ると、カチっとあご紐を装着します。

「足元ヨシ!」
「頭上ヨシ!」
「後部ヨシ!」
「あご紐ヨシ!」

運行前の指差し点検も怠りません。

「お嬢様!会場は戦場です!遅れを取りませんよう!」
「お嬢様!敵は平泳ぎの手の動きで阻止!大きく広げてシュッと前に!」
「お嬢様!前進あるのみ!こちらは進軍ラッパでございます!!」

グッと親指を立てると渡された進軍ラッパをたすき掛けにし、ドランチに跨るローゼ。
これで朝焼けが広がる丘にいて、余計なものがないなら絵になります。

「では皆様!行ってきますわ!! ハッ!!」

ドランチを反転させると颯爽と走りだします。

女中頭はグッと拳を握ると見送る使用人一同に号令をかけます。

「帽振れ~!!」

一斉に使用人たちは帽子やハンカチをふり始めましたよ??
ここは海上自衛隊ですか!!


沢山の使用人に見送られてローゼはドランチを走らせます。

「夜明けまであと1時間半、なんとしてもエール領に入ってやるわ!」

推しのジャケットという人参を鼻先にぶら下げた乙女は強い!!
第四コーナーを回った競走馬並みに走っていきました。

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