この度、変態騎士の妻になりました

cyaru

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婚約破棄

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結婚式まであと2か月となった日。
式に参列して頂く方などの確認をして頂きたいと連絡を致しましたら、なぜか伯爵家のお屋敷ではなく大通りのカフェを指定されました。

文官の仕事が忙しいといつもかわされておりましたが、もう時間もない事ですから是が非でもと父を通したのですがこれはいったいどう判断をすれば良いのでしょうか。

目の前にいるのは婚約者のギルバート・カレル・ディッシュ伯爵令息で間違いないのですが、隣にお座りになっているご令嬢はどなたなのかしら?

そう思いつつも幾つもある封筒から書類を取り出そうとした時、ギルバート様が仰いました。

「エトランゼ。申し訳ないが結婚式は中止。婚約も破棄だ」

言葉が上手く理解できないというのはこういう状況下の事でしょうか。
結婚式が何らかの事情で延期になる事は多々あるとは思うのですが、目前に迫っていてキャンセルは出来はしますがキャンセル料は発生しますし、親族への招待状も出来れば今日、最悪でも明日には出さねばなりません。なんせ親族は両家ともこの婚約を知っていますし、婚約が結ばれた事によって始まった事業もあるのです。
ですが、婚約を破棄?いったいどういう事なのでしょうか。

わたくし達の婚約はもう10年以上前に結ばれており、それは国王陛下の許可も頂いております。
10歳にも満たない時期での婚約でしたし、事業の契約更新に合わせて学院に入る年、15歳の時でしたが心変わりはないかと双方の親を前にしてお互いが確かめ合ったと思います。
記憶をたどれば、わたくしもギルバート様も予定通りで問題ないとしたはずです。

次の確認はやはり丁度事業の更新時期でもあり、また学院を卒業する年では文官試験などもありますから、気ぜわしい事もあり17歳になる少し前にやはりお互いの親の前で申し合せたはずです。その時も予定通りで問題ないとしたはずです。

学院を卒業する時は、文官試験には合格しており王宮務めも決まっていた事から最終確認としてやはりこの時もお互いの親の前で意思を確認したはずです。
その時に、もし【解消】を申し出てくださっていればわたくしは新卒として侍女見習いで王宮に上がる事も出来たはずです。ですがやはりその時の答えも予定通りで問題ないとされましたので、わたくしは侍女見習いのお話をお断りして結婚への準備をしたのです。

それがどうして今になって、しかも「破棄」なのでしょうか。
解消と破棄。どちらも婚約者ではなくなることは同じでも意味合いが変わります。
何より、どうして今なのでしょうか。2カ月先の神殿への予約も済ませておりますからキャンセルは可能でしょうけど何度も言いますがキャンセル料などが発生してしまいます。ハッキリ言ってムダ金、死に金ですのに。

「ギルバート様、婚約破棄‥‥と言いますと?」
「言葉の通りだ。学院を首席で卒業しても実社会で働かないと語彙力も落ちたか」
「いえ、言葉は理解しておりますが何故それが今なのでしょうか」
「説明をしなくても判るだろう?俺はこのサマンサと結婚をする。お前とは結婚をしない」

隣の方はサマンサ様と仰るのですね。ですが‥‥わたくしの記憶にある限り子爵家にサマンサ様という女性はおられましたが、名前と顔が一致しませんので知っているサマンサ様ではないようです。

「あの…この事はおじ様、おば様もご了解なのでしょうか」
「あぁ、俺の両親ももう了解済みだ」

そう言ってギルバート様はサマンサ様の頭をご自分の胸に押し付けるようにして抱き寄せております。
少し上を向いたサマンサ様の唇とギルバート様の唇が合わさります。
わたくしは何を見せられているのでしょうか。いえ、わたくしだけではなく周りの皆様もです。

歌劇でも接吻はしたように見せるだけでしたので、目の前で実演を見せて頂いただけでもよしとせねばならないのでしょうか。いえいえ。それならは観劇料を出さねばなりません。
でも、少し引っ掛かりました。あちらのご両親もご存じ?今朝我が家に来られた際は招待状の件を急かされたのですが急転直下で決まった事なのでしょうか。

そうだとすれば、なんと滑稽なのでしょうか。出かける時に言ってくださればいいのに。
いえ、きっとお優しいご両親でしたから最後までわたくしに希望を与えてくださったのかも知れません。
ですが、思いっきりあげて、谷底に突き落とすような希望は朝の時点で砕いて頂いた方がわたくしも思う存分部屋で本を読む事も出来ましたのに。

「婚約破棄ですか?解消ではなく?」
「大した違いはないだろう?」
「いえ、言葉の問題だけではなく解消と違って破棄の場合は瑕疵のあった方に慰謝料が発生する可能性があります」

わたくしは正直に申し上げました。正確には解消であっても慰謝料が発生する事はありますが破棄の方がより強く貴族社会では認識をされております。この場合婚約中の不貞と言う事は明らかですからギルバート様の伯爵家は少なからずとも慰謝料だけではなく色々な面で打撃となるでしょう。

残念な事に場所が場所です。大通りにあるこのカフェはかなりの有名店。
後ろに座っている方は社交界でも小鳥の囀りで有名なご夫人達ですし、あちらで時折こちらをチラチラと見ておられるのは王太子殿下の婚約者でいらっしゃるシャロン様とそのご友人たち。

よく通る声の持ち主であるギルバート様はご存じないと思いますが、あなたの声は本当によく聞こえるのです。特にこんな小さな社交場のようなカフェでするような話ではなかったのですよと教えてあげたいのですが、口づけを交わされるのに忙しいようで周りは耳にも目にも入らないのでしょう。

「わかりました。ではギルバート様との婚約を解消致しましょう。つきましては・・・こちらに一筆お願いいたします」

白紙の書類に、サマンサ様とご結婚をするためわたくしとの婚約を解消するという文言をかきあげ、紙を逆に向けながらペンを渡すとギルバート様は丁寧にサインをしてくださいました。

その瞬間、わたくしとギルバート様の15年に及ぶ婚約関係が解消をされました。
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