この度、変態騎士の妻になりました

cyaru

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これからのこと

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「書いたぞ、これでいいだろう」
「えぇ。15年間お世話様でございました」
「じゃ、ここの払いはよろしくな」

そう言いながらペンを置くとギルバート様とサマンサ様は寄り添ってカフェから出ていきます。
途端に周りのざわめきが耳に入ります。

不思議なものです。先程までは静まりかえってこの葉が一枚床に落ちる音も聞こえるのではないかと思うほどでしたのに今では聞き取りにくいながらも誰も彼もがボソボソと話し、時折「ですわね」「ましたわ!」という語尾しか聞こえません。

シャロン様とご友人たちが席を立ち、カフェから出ていきます。
学院にいた時からでしたが、やはり立ち振る舞いが洗練されていてとても優雅ですわ。
わたくしもあぁなりたいと何度思った事か。

ふと外を見ると何かあったのでしょうか。シャロン様の護衛の方が王宮のある方向に向かって馬に乗り走って行かれました。きっと騎士の方は何があっても直ぐに駆けつける事が出来るよう日頃から鍛錬をされているのでしょう。こうやって直ぐに行動をされる方々にわたくし達の暮らしは守られているのでしょうね。感謝をせねばならないでしょう。

溜息を一つ吐き、帰ろうかと思いましたが注文していたレモンティーが運ばれてきたのでそのままというのはお店にも失礼となってしまいます。
このお店のレモンは皮まで食べられると噂のレモンですがはしたないので軽く絞る事しか出来ないのが残念です。
香りも爽やかですが、今日は少しレモンの香りに癒されたいと思うのは我儘でしょうか。

レモンティーを飲み終わったわたくしにする事はもうありません。
わたくしは署名頂いた書類を封筒に入れ、ペンにカバーをかけると伝票を見ます。
わたくしが来る前に色々とご注文をされていたようです。
約束の時間の10分前には来たのですが、随分と待たせてしまったのですね。
3日前までに要予約とメニュー表に書かれたお料理を食べられたようです。わたくしがこのお店だと聞かされたのは昨日の夕刻でしたが、きっと融通を利かせてくれるお店なのかも知れません。
ただ、ケーキをホールでお2人で食べられたのだろうと思うと、胃がもたれそうになります。

静かに席を立って会計まで歩いたつもりなのですが足音がしたのでしょうか。
店内の皆さまの視線が集まる様でとても痛く感じます。
レモンティーだけでしたら580ケルなのですが、要予約のケーキを注文済みだったのでしたね。招待状を出さねばと思っておりましたので切手代を持ってきて良かったと思いました。
そうでなければ3万ケルなど普通は持ち歩きませんもの。

カフェを出て沢山の封筒が入ったカバンを抱えて歩きます。
招待状の他に参列くださる方のリストなども持ってきましたし、とても重くなっております。
こんな事なら従者を連れてくるのでした。

公園まで来ると少し休みたくなりベンチに腰掛けます。
荷物を下ろすと肩が軽くなりました。もうかなり前になりますが学院に入った頃はこの公園もギルバート様とよく訪れました。お父様からのお小遣いもあまりありませんでしたので、屋台で2人飲み物を買いました。

あの大きなクスノキの下ではピクニックも致しました。今も学院生でしょうか。仲の良さそうな女の子が3人シートを引いて楽しそうに話をしています。

婚約をした5歳の頃はお互いかけっこをしたり屋敷でかくれんぼをしたりと楽しく遊びました。

ですが学院の初等部、中等部、高等部ではギルバート様は女子生徒からの人気もあり週末は良くご友人たちと出かけられておりました。
わたくしはギルバート様の婚約者として恥ずかしくないようにと学業に専念。
時折出かけても図書館などでギルバート様も楽しくなかったのかも知れません。
ですが、卒業後領地経営などを考えればどちらかが知識がなくては成り立ちません。
学園での成績がいつも下から10番以内だったギルバート様に代わってわたくしがどうにかせねばと思っておりました。

たら、ればと言っても仕方がないのですが、本当にどうしてこうなるのであれば、いえ、こうなる可能性があるのなら卒業をした時に言って下さらなかったのでしょうか。
2年のブランクは今更王宮の侍女見習いに申し込む事も出来ません。

我が家には兄がいますので伯爵家は兄が継ぎます。その時にはわたくしは既にディッシュ伯爵家に嫁いでいるはずでしたがこうなると新しく嫁ぎ先を早急に見つけねばなりません。
兄の妻となる人も結婚直前でダメになった小姑がいるとなれば、あまり良い気はされないでしょう。
わたくしはもう20歳。今から探すとなれば嫁入りできるような家を継がれる方は先ずいないでしょう。
高齢の奥様に先立たれた方か、何か問題があって婚姻をされていない年の離れた殿方。平民になればもう少し年齢の近い初婚の方はおられるでしょうけど悔しいかな我が家は腐っても伯爵家。

子爵や男爵であれば平民の方との結婚も問題はないのですが伯爵家以上となると貴族院の許可が必要になります。平民と結婚するとなると罰金などの処分もあり得ますので迷惑はかけられません。
残っているのは修道院でしょうか。幾らかの寄付をすれば受け入れてはくれるでしょうけど、家族に修道院に入るような者が居る、それが妹だとなれば兄の婚約、結婚にも大きく関係します。

学院生だった頃に友人のメアリー子爵令嬢が言っておりました。
「ギルバート様は早めに手を切った方が良い」ですが良好な関係だと思っておりましたのでこうなるとは思いませんでした。後悔は先に立たないものです。

兎にも角にもまずは家に戻ってこの先の事をお父様、お母様、兄と話をせねばなりません。
わたくしは重たい荷物の入った袋を肩にかけ立ち上がろうとすると目の前に真っ黒な塊が現れました。

それはとても立派な黒毛の馬で、跨っていた方は対比な赤をベースに金色の装飾がされた隊服を着た騎士様でございました。
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