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第30話 チームのメンバー卒業を決める
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ルッソ子爵家を飛び出したルーシュは逃げる途中で干してあった洗濯物を拝借し、一見普通に見える平民服に着替えた後、一旦はディック伯爵家に戻った。
門番のいない外門は押しても引いても動かない。
「くそっ!入れないじゃないか!誰かいないのか!ビット!ビットは何処だ!」
誰もいない屋敷まで声が届くはずもないが、届いたところで屋敷は無人。
ネズミがエレナ夫人の食べこぼしを拾い集めに奔走しているだけ。
通りかかった通行人に「通用口が開いてるけど?」と言われ、指差す方向を見てみれば鉄門の隣にある木のくぐり戸が風でゆらゆらと小さな開閉をしている事に気がついた。
「それを早く言えっ!」
礼を言うどころか、教えてくれたただの通行人に罵声を浴びせるルーシュ。
が、長い門道を走って歩いてやっと屋敷に到着し、玄関を開けると物音に気が付いたネズミが壁の隅に向かって走るだけで隠れてしまえば物音1つしなかった。
「チッ!おい!帰ったぞ!」
自身の言動で家令も執事も本当に辞めてしまったとは思ってもいないルーシュなので、屋敷の中を片っ端から乱暴に扉を開けながら「帰ったと言ってるだろう!」と叫ぶ。
誰もいないと判ったのは母親であるエレナ夫人の部屋の惨状を見た時だった。
貴族は何をするにも人の手を借りる。
落ちぶれたとはいえ、エレナ夫人は生まれた時から貴族で何も出来ないのでアナベルがメイド協会に手配をしていたのだ。
乱雑に散らばり、床に水気を失ったまま饐えた香りがするのは夫人の吐瀉物。そして鼻を衝くアンモニア臭。汚物もそのあたりに散らばっていた。
惨状は何を意味するのか。
誰もいないという事である。
仕方なくエレナ夫人の部屋を物色し、宝飾品をポケットに捩じ込むと勝手知ったるクローゼットから、かの日のようにドレスを手に取って縫い付けられた宝飾品を引き千切った。
売れそうな宝飾品はもうないと解ると屋敷を出て買取店に出向き金を作り、チームのメンバーの家を泊まり歩いた。
アナベルがマジルカ王国に旅立った日の3日後。
「ルーシュ、お前当主になったんだってな」
「なんでお前が知ってるんだ?」
「いや、貴族広報の最新号が今日届いたからな。知らないやつなんかいないだろ」
「チッ!勝手な事を・・・」
「いやいや、お前さ、こんな事してていいのか?当主になったんだから色々とやることあるだろ?」
「そんなのは侯爵家にさせておけばいいんだ」
「何言ってんだよ。婚約も王命で無くなってさ、なんで侯爵家がしてくれるわけ?なんにせよ一旦屋敷に戻った方が良いよ」
ルーシュを泊めるのは当主ではない時は構わなかったが、当主となれば話は別。
それも多少借金などあるのは貴族の家には当たり前なので、ちゃんとしていればまだいいがディック家は【普通】ではない。
毎月借金の利息は払わねばならず、借金のカタに領地を取られて終わりでは済まない。
領地を担保に借りた分は相殺される分もあるだろうが、ディック家の借金はそれ以上にあって、爵位を売ったところで残るは負債だけ。
メンバーもカトゥル侯爵は利息と言う死に金をずっとディック家に生活費と名目を変えて融資していた事も知っている。
ルーシュが当主になった今、居座られると「匿っている」と思われて、借金取りが押しかけて来る可能性は高く居られては困る。出て行って欲しいと遠回しにやんわり伝えたのだがルーシュには伝わらない。
しかし、直球で「出て行ってくれ」と言えば、訳の解らないルーシュ論を吐きまくるので質が悪い。揉め事を呼び込むためにチームに所属しているのではないのだ。
泊めてやり、面倒も見てやって文句を言われるのはごめんである。
ルーシュも「出て行って欲しいんだな」とは薄々判るが、ディック家に戻る気にはなれない。使用人もいないし酷い悪臭が立ち込めているであろう家。
メンバーの家にいれば温かい寝具で寝られるし、服も貸して貰える。食事だって用意してもらえて、執務も他家なのでする必要もない。いう事なし。こんな居心地のいい場所を手放す馬鹿はいない。
しかし、続く友人の独り言のようなボヤキにルーシュは食いついた。
「お前の元婚約者、マジルカ王国に行ったんだってな~。いいよなぁ魔法でさ、な~んでも出来るんだぜ?水もジャバジャバ出せるんだから金貨もジャンジャン出せる魔法使いとかさぁいるんじゃねぇかなぁ。そうすれば遊んで暮らせるのになぁ」
「マジルカ王国?本当か?なんで?」
「なんでって‥知らねぇよ。でも噂では魔法使いになったから王族が迎えに来たって言ってるけどな。お前さ、ごっつい金の卵を手放しちゃったんだな。あ、捨てたんだっけ?」
メンバーは心の中で【お前が捨てられたんじゃね?】と思ったがルーシュには聞こえない。
「アナベルは金貨が出せるのか・・・そうか・・・」
「いや、出せるかは知らねぇよ?魔法使いは水も出せるんだか――」
「すまない!用事を思い出しんだ。世話になった!」
「あ、あぁ…それは良いけど――」
出て行くなら貸した服は着替えてくれと言おうとしたのだが、ルーシュはもう部屋の外に飛び出していったあと。
「ま、いいか。教会のバザーの売れ残りだったし。出て行ってくれただけ御の字だよ。陸登山も卒業だな」
メンバーだったベラリアはルーシュが泊りに来る前日、他のメンバーと行った娼館で娼婦となっていた。かなり安い金額設定をされていたが、ベラリアを買う気にはなれない。
ベラリアが過去に付き合っていた男は性病に苦しんでいる。
「この娼館に来るのも今日が最後かな。いやもう卒業だな」
ベラリアが感染している場合、ベラリアを買った客が別の日に他の娼婦を抱けばあっという間に性病は蔓延する。
娼館遊びを楽しんでいたメンバーも何時までも若くはないし、危険があると判って手を出す必要もない。
娼館遊びを卒業したついでに見栄だけの登山の集まりも卒業するのを決めたのだった。
門番のいない外門は押しても引いても動かない。
「くそっ!入れないじゃないか!誰かいないのか!ビット!ビットは何処だ!」
誰もいない屋敷まで声が届くはずもないが、届いたところで屋敷は無人。
ネズミがエレナ夫人の食べこぼしを拾い集めに奔走しているだけ。
通りかかった通行人に「通用口が開いてるけど?」と言われ、指差す方向を見てみれば鉄門の隣にある木のくぐり戸が風でゆらゆらと小さな開閉をしている事に気がついた。
「それを早く言えっ!」
礼を言うどころか、教えてくれたただの通行人に罵声を浴びせるルーシュ。
が、長い門道を走って歩いてやっと屋敷に到着し、玄関を開けると物音に気が付いたネズミが壁の隅に向かって走るだけで隠れてしまえば物音1つしなかった。
「チッ!おい!帰ったぞ!」
自身の言動で家令も執事も本当に辞めてしまったとは思ってもいないルーシュなので、屋敷の中を片っ端から乱暴に扉を開けながら「帰ったと言ってるだろう!」と叫ぶ。
誰もいないと判ったのは母親であるエレナ夫人の部屋の惨状を見た時だった。
貴族は何をするにも人の手を借りる。
落ちぶれたとはいえ、エレナ夫人は生まれた時から貴族で何も出来ないのでアナベルがメイド協会に手配をしていたのだ。
乱雑に散らばり、床に水気を失ったまま饐えた香りがするのは夫人の吐瀉物。そして鼻を衝くアンモニア臭。汚物もそのあたりに散らばっていた。
惨状は何を意味するのか。
誰もいないという事である。
仕方なくエレナ夫人の部屋を物色し、宝飾品をポケットに捩じ込むと勝手知ったるクローゼットから、かの日のようにドレスを手に取って縫い付けられた宝飾品を引き千切った。
売れそうな宝飾品はもうないと解ると屋敷を出て買取店に出向き金を作り、チームのメンバーの家を泊まり歩いた。
アナベルがマジルカ王国に旅立った日の3日後。
「ルーシュ、お前当主になったんだってな」
「なんでお前が知ってるんだ?」
「いや、貴族広報の最新号が今日届いたからな。知らないやつなんかいないだろ」
「チッ!勝手な事を・・・」
「いやいや、お前さ、こんな事してていいのか?当主になったんだから色々とやることあるだろ?」
「そんなのは侯爵家にさせておけばいいんだ」
「何言ってんだよ。婚約も王命で無くなってさ、なんで侯爵家がしてくれるわけ?なんにせよ一旦屋敷に戻った方が良いよ」
ルーシュを泊めるのは当主ではない時は構わなかったが、当主となれば話は別。
それも多少借金などあるのは貴族の家には当たり前なので、ちゃんとしていればまだいいがディック家は【普通】ではない。
毎月借金の利息は払わねばならず、借金のカタに領地を取られて終わりでは済まない。
領地を担保に借りた分は相殺される分もあるだろうが、ディック家の借金はそれ以上にあって、爵位を売ったところで残るは負債だけ。
メンバーもカトゥル侯爵は利息と言う死に金をずっとディック家に生活費と名目を変えて融資していた事も知っている。
ルーシュが当主になった今、居座られると「匿っている」と思われて、借金取りが押しかけて来る可能性は高く居られては困る。出て行って欲しいと遠回しにやんわり伝えたのだがルーシュには伝わらない。
しかし、直球で「出て行ってくれ」と言えば、訳の解らないルーシュ論を吐きまくるので質が悪い。揉め事を呼び込むためにチームに所属しているのではないのだ。
泊めてやり、面倒も見てやって文句を言われるのはごめんである。
ルーシュも「出て行って欲しいんだな」とは薄々判るが、ディック家に戻る気にはなれない。使用人もいないし酷い悪臭が立ち込めているであろう家。
メンバーの家にいれば温かい寝具で寝られるし、服も貸して貰える。食事だって用意してもらえて、執務も他家なのでする必要もない。いう事なし。こんな居心地のいい場所を手放す馬鹿はいない。
しかし、続く友人の独り言のようなボヤキにルーシュは食いついた。
「お前の元婚約者、マジルカ王国に行ったんだってな~。いいよなぁ魔法でさ、な~んでも出来るんだぜ?水もジャバジャバ出せるんだから金貨もジャンジャン出せる魔法使いとかさぁいるんじゃねぇかなぁ。そうすれば遊んで暮らせるのになぁ」
「マジルカ王国?本当か?なんで?」
「なんでって‥知らねぇよ。でも噂では魔法使いになったから王族が迎えに来たって言ってるけどな。お前さ、ごっつい金の卵を手放しちゃったんだな。あ、捨てたんだっけ?」
メンバーは心の中で【お前が捨てられたんじゃね?】と思ったがルーシュには聞こえない。
「アナベルは金貨が出せるのか・・・そうか・・・」
「いや、出せるかは知らねぇよ?魔法使いは水も出せるんだか――」
「すまない!用事を思い出しんだ。世話になった!」
「あ、あぁ…それは良いけど――」
出て行くなら貸した服は着替えてくれと言おうとしたのだが、ルーシュはもう部屋の外に飛び出していったあと。
「ま、いいか。教会のバザーの売れ残りだったし。出て行ってくれただけ御の字だよ。陸登山も卒業だな」
メンバーだったベラリアはルーシュが泊りに来る前日、他のメンバーと行った娼館で娼婦となっていた。かなり安い金額設定をされていたが、ベラリアを買う気にはなれない。
ベラリアが過去に付き合っていた男は性病に苦しんでいる。
「この娼館に来るのも今日が最後かな。いやもう卒業だな」
ベラリアが感染している場合、ベラリアを買った客が別の日に他の娼婦を抱けばあっという間に性病は蔓延する。
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娼館遊びを卒業したついでに見栄だけの登山の集まりも卒業するのを決めたのだった。
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