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第二章
不意打ち
しおりを挟む翌日。
「夕姫」
「日向、お待たせ」
私の最寄り駅まで迎えに来てくれた日向と合流し、朝から不動産屋さんへ。
昨日日向と探した場所と、家に帰ってから自分で探した場所といくつかを内見することに。
土曜日だから混んでるかと思ったけれど、案外スムーズに進んで安心した。
「日当たりもいいし駅からも近いし、いいんじゃないか?」
「うん。収納もあるし、角部屋だし綺麗で良いかも」
内見もネットで見ていた通りのものが多く、細かいところを確認するくらいで終了。
その中でも今と五つほど離れた駅が最寄りのアパートで、三階の角部屋の空きがあり、家賃も予算の範囲内だったため決定することに。
今住んでいる物件の更新のタイミングじゃなかったのは痛い出費だけれど、真山さんが言っていた通り安全のための保険だと思えば納得できる。
早ければ二週間以内に入居できるらしく、しばらくは引っ越しで忙しくなりそう。
パパッと契約を済ませ、お昼を軽めに済ませてから今度は家具を探しに専門店へ。
「日向は何買うの?」
「ソファを新調したいんだよ。あとベッド」
「私もベッドほしい。あと小物」
「じゃあ寝具コーナーから見に行くか」
「うん」
エスカレーターに乗り、二階にある大物家具の寝具コーナーへ。
安くてしっかりしてそうなベッドを選んでいると、日向はもう決めたらしく
「夕姫、いいのあったか?」
と商品カードを持ってこっちにきた。
「今どれがいいか悩んでて。日向は決まったの?」
「あぁ。そこにあったダブルにした」
「ダブルいいよね。どうしよう……」
ずっとシングルを見てたけど、確かにダブルのゆったりさも捨て難い。
でも金銭的にも今は節約したいしな……。
まだ時間がかかりそうだったから、日向には別のコーナーを見ててもらって私は真剣に悩むこと十五分。
間を取ってセミダブルのベッドに決めて、日向がいるであろうソファが並ぶコーナーに向かった。
「日向」
「あぁ、ベッド決まったか?」
「うん。セミダブルにした。日向はソファ決まった?」
「いやあ、それがこっちはなかなか決まんなくて」
どうやらグレーのソファとダークブラウンのソファで悩んでいる様子。
どっちも同じくらいの値段で、座り心地もふっかふかで最高。
「夕姫はどっちがいいと思う?」
そう聞かれたから、ほとんど即答で
「グレーかな。日向にはブラウンよりもグレーの方が似合うと思う。あと、単純に個人的に私はこっちの色の方が好き」
と答えると、
「わかった。グレーにする」
と日向も即答して驚いた。
「え、いいの? 私の意見採用して」
「俺にはグレーの方が似合うんだろ? ならそうする」
そう言いながら嬉しそうに商品カードを取っていた。
他にも色々と見て周り、あらかた必要なものを揃えることができた。
私も日向も引っ越し予定に合わせて搬入の日を決めてもらう。
外に出た時には、もうだいぶ時間が経ってしまっていた。
「ごめんね、時間かかって。新幹線の時間大丈夫?」
「今から向かえばまだ間に合うから大丈夫」
「良かった」
「夕姫のおかげで助かったよ。ありがとう」
「ううん。私も日向のおかげで新しい家決まって安心した。ありがとう」
そのまま駅まで向かい、改札前で立ち止まる。
「時間無いから家まで送ってやれないけど、大丈夫か?」
「もう、子ども扱いしてる? 大丈夫だよ、毎日帰ってるんだから。それより新幹線遅れちゃうよ。気を付けてね」
「あぁ。また連絡する。お互いの引っ越しが落ち着いたら飲みに行こう」
「うん。じゃあまたね」
乗る路線も別々のため、ここでバイバイだ。
日向に手を振ると、私をじっと見た日向が何を思ったのか死角になる位置に私を連れていく。
「日向? どうしたの?」
「いや……」
「ん?」
首を傾げると、日向は私の腕を引いてそっと抱きしめた。
突然のことに驚き、私の体は硬直する。
日向はそんな私の耳元に顔を寄せて、
「……今夜、電話していいか?」
小さな声で聞いてくる。
そんなの、普通に聞けばいいのに。わざわざこんな至近距離で聞くなんて……。
「……う、ん。いいよ……」
頷くので精一杯の私の頬に、日向の手が触れる。
下から掬い上げるようなキスは、一瞬触れただけですぐに離れた。
「……じゃあ、またな」
「うん。またね」
なんてことないような表情をして死角から出て、手を振り改札を通っていく日向。
「不意打ちとか、ずるくない……?」
日向の耳が赤く染まっていたことは、私しか知らない。
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