とろけてまざる

ゆなな

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3章

1話

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「綺麗だな─────」

思わず永瀬は10歳も年下の医師綾川雪也、ことユキの横顔を遠くから眺めながら思わず呟いた。

ユキが担当して永瀬が執刀をした脳腫瘍を患っていた13歳の患者の退院を彼は病院の正面玄関で見送っているところであった。
あまい顔立ちだがいつも職場では緊張し張り詰めた雰囲気を漂わせるユキの顔。しかし今日はその横顔は喜びと安堵で輝いて見えた。
彼の回りだけいつも美しい星を散りばめたように見えるのは永瀬の気持ちが反映しているからなのか。

永瀬は冬の気配を感じる凛とした空気の中、ユキを見詰めながら彼を初めて見た日を思い出していた。

あれはこんな冬の始まりのような日、ユキが帝都大学の医学部に進学した最初の年。
日本では最高峰の大学の最も難しい学部のキャンパスにアルファに混じってたった一人オメガの少年がいた。

アメリカで飛び級を重ね、日本で医師になるよりも大分早く医師として働いていた永瀬。まだ20代にも関わらず、その腕は世界に知られるまでになっていた。そんな永瀬は外科医を志望する学生やまだ経験の浅い外科医に向けた講演会に招かれてこの帝大医学部のキャンパスにいた。

永瀬は講演会の行われる講堂の前にあるベンチに座り一心にテキストを読み耽る一人の学生を見付けた。
黄金色の銀杏の葉が空気の澄んだ冬の青空を背景に美しい彩りを見せる中、美しい栗色の髪がふわふわと風に揺れ、綺麗な指先が熱心にテキストを追っていた。

思わず目を奪われると横にいた帝大の講師が
「あぁ、このキャンパスにベータは珍しいでしょう?」と言った。

「ベータ……?」

どう見ても、オメガじゃないか?

そう思った永瀬の声の調子には気が付かず講師は続けた。
「しかもね、入試も前期の試験も学年首席なんですよ。並み居るアルファが真剣に試験を受けても敵わない。ああやって人一倍努力していてね、私もよくゼミの学生に彼を見習えと言っています。アルファの子は優秀で一度聞けば全て覚えられる自信家が多くて皆あまり努力をしないので彼の存在はいい刺激になってますよ。」
まぁ限りなくアルファに近いベータなんでしょうなと講師は笑った。

「へぇ……」

そう言って肩を竦めて何事もないように受け流した永瀬だが、密かに瞠目していた。

あれは、オメガだ。キツい抑制剤で抑えているが間違いない。

オメガを母に持つ永瀬にはこの大学でオメガが首席を獲ることはどれ程尋常でないことなのか充分過ぎるほど理解できた。

自分を見詰める熱い視線に気が付かないほどに集中してテキストを読む姿が凛として美しく目が離せなかった。

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感想 9

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