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休息
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亜子は音子の傷が回復した事に安心して辺りを見回すと、菊花が身体にバスタオルを巻いた姿で、ぐったりしたみなもを支えている。
亜子は心配になって、音子を狐太郎たちに任せて、彼女たちの側に走った。
「みなもちゃん、大丈夫?」
亜子の質問に、みなもを抱いた菊花が答える。
「私の張った、クモの網の間から、清姫の毒が入ってみなもちゃんに当たっちゃったの」
亜子がみなもの顔を覗きこむと、むらさき色だ。どう見ても大丈夫じゃない。亜子がオロオロしていると、亜子の肩に優しく手を置いた清姫が言った。
「大丈夫よ?亜子ちゃん。みなもちゃんに血清を使うから」
清姫は慣れた様子で、菊花からみなもを受け取ると、おもむろにみなものくちびるを、自身のくちびるでふさいだ。
突然の光景に、亜子はギャッと小さく悲鳴をあげた。これは、毒に当たってしまったみなもの治療だ。別におかしな事は一つもない。
だが二人の美少女のキスシーンを目の当たりにして、亜子は顔を真っ赤にしながら見守った。
こくりとみなもののどか動く。どうやら清姫の血清を飲み込んだようだ。清姫は、フゥッと息を吐いて、みなもからくちびるを離して言った。
「みなもちゃんは大丈夫よ。もうすぐ意識を取り戻すわ?」
亜子がみなもの顔を覗きこむと、顔色がほんのりピンク色になっている。血清が効き出したのだ。清姫は、自身と同じくらいの身長のみなもを、軽々と姫抱きに持ち上げた。
雪奈は、清姫がみなもの治療を完了したのを見ると、ハリのある声で生徒全員に言った。
「では皆さん。各自シャワーを浴びてから、食堂で昼食にしましょう」
みなもを抱いた清姫は、菊花と共に保健室に向かった。
音子はごきげんに好物のねこまんまをかっこんでいる。亜子は目の前の焼きジャケ定食を見下ろした。あまり食欲が無かった。今日初めて、父親以外の相手に妖術のカミナリを当てた。
獣人の狼牙にカミナリを当てたのは、このままでは、悟に危険がおよぶと考えたからだ。カミナリを落とした後で、亜子は冷水を浴びたように身体が冷たくなった。
他人を傷つける恐怖。狐太郎は亜子に、狼牙は丈夫だから心配ないと言ってくれた。だが、言いにくそうに、言葉を付け足した。
「亜子、怖がらないで聞いてほしい。狼牙は興奮して、獣人モードになると、俺の言葉も聞かない。最初の命令、悟を戦闘不能にする、という命令だけを遂行する。狼牙は俺の拘束術を一瞬で破壊した。亜子が狼牙にカミナリの術を当ててくれなければ、事態はもっと大変な事になっていた。亜子の判断は正しい。だが、あのカミナリの術は、狼牙だったから気絶で済んだんだ。他の奴らに当たれば、」
そこで狐太郎は言いにくそうに言葉を切った。亜子は疲れたように笑って答えた。
「そうだね、私がコントロールを間違えて、狼牙くんではなく、他の皆にカミナリを当てていれば、その人はタダじゃ済まない」
狐太郎はくちびるを噛みしめてから、厳しい表情で亜子に言った。
「亜子は俺たちを守ってくれた。俺は亜子がきっと、自分の妖力をコントロールできると確信している。だから、自分の力を恐れるな」
狐太郎の言葉に、亜子はハッとした。狐太郎には、亜子の不安を見透かされていたのだ。亜子はゆっくりとうなずいた。
亜子は心配になって、音子を狐太郎たちに任せて、彼女たちの側に走った。
「みなもちゃん、大丈夫?」
亜子の質問に、みなもを抱いた菊花が答える。
「私の張った、クモの網の間から、清姫の毒が入ってみなもちゃんに当たっちゃったの」
亜子がみなもの顔を覗きこむと、むらさき色だ。どう見ても大丈夫じゃない。亜子がオロオロしていると、亜子の肩に優しく手を置いた清姫が言った。
「大丈夫よ?亜子ちゃん。みなもちゃんに血清を使うから」
清姫は慣れた様子で、菊花からみなもを受け取ると、おもむろにみなものくちびるを、自身のくちびるでふさいだ。
突然の光景に、亜子はギャッと小さく悲鳴をあげた。これは、毒に当たってしまったみなもの治療だ。別におかしな事は一つもない。
だが二人の美少女のキスシーンを目の当たりにして、亜子は顔を真っ赤にしながら見守った。
こくりとみなもののどか動く。どうやら清姫の血清を飲み込んだようだ。清姫は、フゥッと息を吐いて、みなもからくちびるを離して言った。
「みなもちゃんは大丈夫よ。もうすぐ意識を取り戻すわ?」
亜子がみなもの顔を覗きこむと、顔色がほんのりピンク色になっている。血清が効き出したのだ。清姫は、自身と同じくらいの身長のみなもを、軽々と姫抱きに持ち上げた。
雪奈は、清姫がみなもの治療を完了したのを見ると、ハリのある声で生徒全員に言った。
「では皆さん。各自シャワーを浴びてから、食堂で昼食にしましょう」
みなもを抱いた清姫は、菊花と共に保健室に向かった。
音子はごきげんに好物のねこまんまをかっこんでいる。亜子は目の前の焼きジャケ定食を見下ろした。あまり食欲が無かった。今日初めて、父親以外の相手に妖術のカミナリを当てた。
獣人の狼牙にカミナリを当てたのは、このままでは、悟に危険がおよぶと考えたからだ。カミナリを落とした後で、亜子は冷水を浴びたように身体が冷たくなった。
他人を傷つける恐怖。狐太郎は亜子に、狼牙は丈夫だから心配ないと言ってくれた。だが、言いにくそうに、言葉を付け足した。
「亜子、怖がらないで聞いてほしい。狼牙は興奮して、獣人モードになると、俺の言葉も聞かない。最初の命令、悟を戦闘不能にする、という命令だけを遂行する。狼牙は俺の拘束術を一瞬で破壊した。亜子が狼牙にカミナリの術を当ててくれなければ、事態はもっと大変な事になっていた。亜子の判断は正しい。だが、あのカミナリの術は、狼牙だったから気絶で済んだんだ。他の奴らに当たれば、」
そこで狐太郎は言いにくそうに言葉を切った。亜子は疲れたように笑って答えた。
「そうだね、私がコントロールを間違えて、狼牙くんではなく、他の皆にカミナリを当てていれば、その人はタダじゃ済まない」
狐太郎はくちびるを噛みしめてから、厳しい表情で亜子に言った。
「亜子は俺たちを守ってくれた。俺は亜子がきっと、自分の妖力をコントロールできると確信している。だから、自分の力を恐れるな」
狐太郎の言葉に、亜子はハッとした。狐太郎には、亜子の不安を見透かされていたのだ。亜子はゆっくりとうなずいた。
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