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清次郎と柔太郎
食べよう
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清次郎は竹皮の包みを結ぶ紐を解きながら、秀助に声をかける。
「すまんが秀助、小皿を適当に六枚……小皿の数が足りなければ中皿でも碗でも小鉢でもいいが、ともかく六つ、持ってきてくれないか」
清次郎は竹皮を拡げ、ズッシリと重たい包みを両手で支え持ち、その中身をまずは弘に、次に秀助に見せた。
餅米を蒸して半殺しにして丸め、たっぷりの小豆餡と胡桃餡をまぶしたものが、それぞれ四つずつある。
「皆で食べよう。義父上も義母上も、直も権太も、俺も秀助も、皆で分けて食べよう」
清次郎は笑った。
この家の皆で甘いものを食べるのが楽しみだった。
弘は目を見張り、秀助は舌舐めずりをした。
「今すぐに!」
秀助は嬉しげな声を上げた。
どうやら秀助も清次郎と同系統の味覚を持っているようだ。今来た筋道を飛び跳ねるような早足で戻っていった。
その足跡が台所にたどり着いたとおぼしき頃合いで、再び秀助の嬉しげな声が上がった。
「ああ権とっつぁん、丁度良いところへ帰って来なすった。さあ手脚を洗って、顔も洗ったがいいですかね。
ウチの先生が、皆に牡丹餅を下さるそうですよ。
疲れたときは甘いものを食べるのが一番だ」
清次郎と弘は申し合わせたわけでもないのに、二人とも無言で耳を澄ました。
「しかし、こんな時にそんな上等な物を喰うわけにゃぁ……」
権太の弱々しい声がする。
その語尾に追い被さるように、秀助がしゃべり始めた。
「大丈夫だよ、とっつぁん。旦那様と奥様とそれからうちの先生だってこれから召し上がろうってんだ。同じ物をだよ。
同じ物を、とっつぁんとお直さんに下されるっていうんだ。おいらなんかにも分けてくださるんだよ。
いいかい、とっつぁん。お前さんのご主人様とおいらたちとが皆そろって同じものを取り分けて食べるんだ。こりゃぁなんともありがてぇことじゃぁねぇか。
遠慮なんざいらねぇ。むしろ遠慮なんかしたら罰が当たる。
ねえ、権太のとっつぁん。皆で力を付けるんだよ。これからも生きて暮らしてゆくために。そう一緒に、だ!」
秀助の声は末尾に行くほどに大きく、力強くなる。
家の中に響く声の大きさに、清次郎と弘はわざわざ耳を澄ます必要がなくなった。
男衆だけではない。
朝から戸を閉め切って、布団の中に閉じ籠もり、我が子の身を案じて塞ぎ込んでいたきぬと、そこに丸一日付き添っていたお直の耳にも、秀助のしっかりした声が届いた。
きぬはゆっくりと起き上がった。傍らでソワソワとしている下女のお直に目をやって、
「直、私に付き合ってごはんも食べずにいたのだから、随分とお腹が空いたでしょう?」
「はい……あ、いいえ」
直はうなづきかけて、慌てて頭を横にぶんぶん振った。
きぬは真っ白な顔に微笑とも言えぬほど極々小さな笑みを浮かべた。
「私はお腹が空きましたよ。さ、着替えを」
目は涙に赤く腫れている。声には力が無い。それでも明るい口ぶりで言う。
お直は驚きつつも、
「はい、すぐにご用意いたします!」
目を輝かせて立ち上がった。
「すまんが秀助、小皿を適当に六枚……小皿の数が足りなければ中皿でも碗でも小鉢でもいいが、ともかく六つ、持ってきてくれないか」
清次郎は竹皮を拡げ、ズッシリと重たい包みを両手で支え持ち、その中身をまずは弘に、次に秀助に見せた。
餅米を蒸して半殺しにして丸め、たっぷりの小豆餡と胡桃餡をまぶしたものが、それぞれ四つずつある。
「皆で食べよう。義父上も義母上も、直も権太も、俺も秀助も、皆で分けて食べよう」
清次郎は笑った。
この家の皆で甘いものを食べるのが楽しみだった。
弘は目を見張り、秀助は舌舐めずりをした。
「今すぐに!」
秀助は嬉しげな声を上げた。
どうやら秀助も清次郎と同系統の味覚を持っているようだ。今来た筋道を飛び跳ねるような早足で戻っていった。
その足跡が台所にたどり着いたとおぼしき頃合いで、再び秀助の嬉しげな声が上がった。
「ああ権とっつぁん、丁度良いところへ帰って来なすった。さあ手脚を洗って、顔も洗ったがいいですかね。
ウチの先生が、皆に牡丹餅を下さるそうですよ。
疲れたときは甘いものを食べるのが一番だ」
清次郎と弘は申し合わせたわけでもないのに、二人とも無言で耳を澄ました。
「しかし、こんな時にそんな上等な物を喰うわけにゃぁ……」
権太の弱々しい声がする。
その語尾に追い被さるように、秀助がしゃべり始めた。
「大丈夫だよ、とっつぁん。旦那様と奥様とそれからうちの先生だってこれから召し上がろうってんだ。同じ物をだよ。
同じ物を、とっつぁんとお直さんに下されるっていうんだ。おいらなんかにも分けてくださるんだよ。
いいかい、とっつぁん。お前さんのご主人様とおいらたちとが皆そろって同じものを取り分けて食べるんだ。こりゃぁなんともありがてぇことじゃぁねぇか。
遠慮なんざいらねぇ。むしろ遠慮なんかしたら罰が当たる。
ねえ、権太のとっつぁん。皆で力を付けるんだよ。これからも生きて暮らしてゆくために。そう一緒に、だ!」
秀助の声は末尾に行くほどに大きく、力強くなる。
家の中に響く声の大きさに、清次郎と弘はわざわざ耳を澄ます必要がなくなった。
男衆だけではない。
朝から戸を閉め切って、布団の中に閉じ籠もり、我が子の身を案じて塞ぎ込んでいたきぬと、そこに丸一日付き添っていたお直の耳にも、秀助のしっかりした声が届いた。
きぬはゆっくりと起き上がった。傍らでソワソワとしている下女のお直に目をやって、
「直、私に付き合ってごはんも食べずにいたのだから、随分とお腹が空いたでしょう?」
「はい……あ、いいえ」
直はうなづきかけて、慌てて頭を横にぶんぶん振った。
きぬは真っ白な顔に微笑とも言えぬほど極々小さな笑みを浮かべた。
「私はお腹が空きましたよ。さ、着替えを」
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目を輝かせて立ち上がった。
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