転生した愛し子は幸せを知る

ひつ

文字の大きさ
7 / 314
本編

騎士寮に戻るまで(セシル視点)

しおりを挟む
 私はセシル・フォーネス。侯爵家の次男で、ラーロルド王国の第1騎士団の副隊長をしています。今日はモーリーの森に訓練に来ています。

 日も暮れ、暗くなり始めて来ましたね。そろそろ、騎士寮に戻る頃でしょう。そう思い、隊長であるエリックを見てみると、彼も同じことを思っていたのでしょう。

「おい!お前ら!今日の訓練は終わりだ!とっとと帰る準備をするぞ。」

 エリックが声をかけた。

「「「「はい!!!」」」」

 部下達は訓練が終わり、いそいそと帰る準備を始めました。私も準備し始めますかね。

 あと少しで帰る準備が終わるという時でした。僅かでしたが何か聞こえたような気がしました。それはエリックも同じだったようです。

「セシル!悪いが少し待ってくれ。誰かが魔物に襲われているようだ。念のため見てくる。」

 エリックがそう言うのであれば、きっと襲われているのでしょう。冒険者であれば身を守る術を少なからず持っているでしょうが、もし身を守る術がない者だった場合を考えると……危険ですね。

「りょーかい!待機しておくよ。」

 エリックならよっぽどのことがない限り1人でも大丈夫でしょう。騎士団を任されてるほどの実力はありますからね。最悪な時は何か合図をするでしょう。

「あぁ、悪いな。すぐ戻る。」

 エリックは声が聞こえだろう方向へ走り出しました。やれやれ、帰ってくるまで気ままに待ちますかね。部下達には時間が出来たことを伝えておかなくてはいけませんね。

「もう少し待機します。誰かが魔物に襲われているようです。念のためエリックが確認に行きましたのでもう少し帰るのは後になりそうです。各自で時間を潰しておいて下さい。余程のことがない限りあのエリックが助けを呼ぶことはないと思いますので」

 帰る準備を終えた部下達に向かって状況を伝え、私もゆっくり休んでおきましょう。

 しばらくすると、近くの木が揺れる気配がしたので部下達にも合図し、一応武器の準備をさせる。気配を最小限に消しているので只者ではないだろう。
そして、現れたのは……

「「「なんだ、隊長かよ……」」」

 見事にここにいる全ての部下の声がハモった。無駄に警戒して損をした気分です。全く…気配を消すなんて…気配を消せば確かに魔物達に気づかれることはなくなるでしょう。だからって……いったい何故そんなことを???不思議に思っていると、

「悪い、驚かせるつもりはなかったんだが…この子がいたもんでな。」

 この子???エリックの腕の中には小さな子供の女の子がいた。こんな森にこんな子供1人で?そんな疑問が頭をよぎる。それに気づいてなのか、エリックは

「気がついたら1人だったそうだ…おそらくだが捨てられたか人さらいにあってだと思う…」

 それを聞いた私を含めた部下達は皆一様に怒りを覚えた。よく見れば、とても整った容姿をしていてこれならば人さらいにあっても納得がいった。

「エリックはまだ少し準備があるでしょう。その間、私が預かります。」

 私がエリックから女の子を預かろうと手を伸ばすと、一瞬悩むようにしてゆっくり私に預けた。

 エリックが準備をしていると、腕の中にいる女の子が動いて、口をむにゃむにゃとしていた。

「(…っ!!かわいいですね。ふふ)」

 女の子の寝顔を覗いていると横から手が伸びてきて、女の子をとられました。いったい誰が!と思い見てみるとエリック…あなたですか!!

「この子は俺が持つからな!!」

 ほぉ…その子を独り占めするつもりですか?させませんよ?
 結局、そのままエリックが抱っこしたまま騎士寮に帰ることに。



 朝には起きてその可愛いお顔を早く私に見せて下さいね。
しおりを挟む
感想 169

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の妾腹の子ですが、義母となった公爵夫人が優しすぎます!

ましゅぺちーの
恋愛
リデルはヴォルシュタイン王国の名門貴族ベルクォーツ公爵の血を引いている。 しかし彼女は正妻の子ではなく愛人の子だった。 父は自分に無関心で母は父の寵愛を失ったことで荒れていた。 そんな中、母が亡くなりリデルは父公爵に引き取られ本邸へと行くことになる そこで出会ったのが父公爵の正妻であり、義母となった公爵夫人シルフィーラだった。 彼女は愛人の子だというのにリデルを冷遇することなく、母の愛というものを教えてくれた。 リデルは虐げられているシルフィーラを守り抜き、幸せにすることを決意する。 しかし本邸にはリデルの他にも父公爵の愛人の子がいて――? 「愛するお義母様を幸せにします!」 愛する義母を守るために奮闘するリデル。そうしているうちに腹違いの兄弟たちの、公爵の愛人だった実母の、そして父公爵の知られざる秘密が次々と明らかになって――!? ヒロインが愛する義母のために強く逞しい女となり、結果的には皆に愛されるようになる物語です! 完結まで執筆済みです! 小説家になろう様にも投稿しています。

愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の伯爵令嬢だったエミリアは長年の想い人である公爵令息オリバーと結婚した。 しかし、夫となったオリバーとの仲は冷え切っていた。 オリバーはエミリアを愛していない。 それでもエミリアは一途に夫を想い続けた。 子供も出来ないまま十年の年月が過ぎ、エミリアはオリバーにもう一つの家庭が存在していることを知ってしまう。 それをきっかけとして、エミリアはついにオリバーとの離婚を決意する。 オリバーと離婚したエミリアは第二の人生を歩み始める。 一方、最愛の愛人とその子供を公爵家に迎え入れたオリバーは後悔に苛まれていた……。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

処理中です...