転生した愛し子は幸せを知る

ひつ

文字の大きさ
110 / 314
本編

古代遺跡7

しおりを挟む
 あれ?なんで私1人で歩いてるんだっけ。エリック隊長たちはどこだろう。戻らなきゃ。なのにその思いとは別に身体は動き続ける。


 この道をどう進めばいいのか知らないはずなのに何故か道が手にとるように分かる。この道はに繋がっている。


 あそこ?私は何を言っているの?



 私は進み続ける。



 しばらくすると大人1人分が通れるぐらいの穴が現れた。


「なんだろう。懐かしい感じがするのかな。この先にはが待ってるからかな、、、え?あの子たち?」



 何とも言えないこの違和感はなんなの。この先に行きたいと望む心は本当に私のもの?


 本来ならエリック隊長達を待つべきなんだろうけど、待てない。心が…魂が言うんだ。私はこの先に行かないといけない!!と。



 私はこの思いに押されるまま穴の中へと入った。















〈待っていた。おかえり。契約者よ。〉


〈おかえり!また会いたかったよ!〉



 穴を抜けた先に待っていたのは大きな犬とそれより少し小さい犬だった。


「わんちゃん??」


〈〈犬じゃないっ!!!〉〉


 クワッとするとともに悲しそうにする2匹。シュンとする姿とか犬そっくりだけど。


「わんちゃんじゃないの?あっ!そっか、喋るわんちゃんだから新種の生物?」


〈我らはフェンリルだ!神獣フェンリルだぞ。そんじょそこらの犬や魔物と一緒にするでない!相変わらずわんちゃんと言うのはやめてくれっ!〉


 やっぱりそうなんだ!!


「なるほどー!新獣フェンリルだね!」


〈ち・が・う!!●●●よ、我らは新獣ではなく神獣だと言っているだろう。わざと、わざとなのか!?〉


〈まぁまぁ父さん落ち着いてよ。●●●がわざと言うわけないよ。純粋に神獣ではなく新獣の方だと思ったんだよきっと。〉


 さっきからこの2匹は何を言ってるんだろう?


「●●●って誰のこと?」


〈〈……………〉〉


 2匹は無言になった。そしてしっぽでついて来いと言うと進み出した。私は慌てて2匹について行く。そして彼らの住処だろう場所へとやってきた。2匹は姿勢を正すと言った。


〈契約者よ、やはり覚えていないか我らの事を。〉


〈僕の事も少しもわからない??覚えてないの?〉


「えっと…ごめんなさい。全然分からないです。私、この世界に来て時間は経ってないし、ここに来た事すらないから人違いじゃないかな?」


〈〈人違いなんかありえない!!〉〉


 そんな事言われても事実、ティアは知らないもん。


〈我と契約者●●●との繋がりがあるのだ。そなたが●●●なのは間違いない。記憶は失われようとも魂の繋がりはたしかに存在している。我らとそなたは約束したのだ。再び会うと。我はずっと悔やんでおった。そなたを守れなかった事を。〉


 魂の繋がり?たしかに何か感じるような気はするけど…


〈我らはこの地にて再びそなたがやってくるのをずっと待っていた。今回やっとこの遺跡の存在が明るみになり、そなたがやってくる事が出来た。毎回そなたの魂を感じる度に会えないもどかしさを感じていた。そなたを感じては消えてゆく…力になれない思いはもう嫌なのだ。だが我はもう長くない。故にそなたの中で永遠に眠ろう。そなたの力となり共に生きさせてくれないか?〉


「大きなわんちゃんは死んじゃうの?嫌だよ。死なないでよ。私、今すごくすごく悲しいの。家族を失うような…お願い死なないで!」


〈我は死なんよ。ずっとそなたの中で生き続けるだけだ。今度こそ、そなたと共に歩みたいのだ。我の最期の願いを聞いてはくれないのか?〉


 そんなのずるい。最期のお願いなんて言われたら断れないよ。


〈それに我がいなくてもこの子がおろう?この日の為にしっかり鍛えておいたぞ。なぁ?〉


〈うん!僕は今日この日の為に頑張って来たんだよ。●●●と一緒に行く為に。だから安心して。父さんの代わりにしっかり守ってみせるよ!!〉



 私は涙が溢れてしかたない。


「わかっ…た。そのお願い…叶える…」


〈あぁ。ありがとう契約者よ。本当はもっと話したい事はたくさんあるのだがな…そなたの決意が変わらぬ間に終わらせよう。何か知りたい事があれば我が子に聞くとよい。そなたが知っても問題ない内容ならば答えてくれるだろう。では我が子よ、後のことは頼んだぞ。〉


〈はい父さん!!〉




 大きなフェンリルは小さなフェンリルに言葉を託すと私に向き合った。


〈…そんな顔をするでない。別れが惜しくなるだろう?そなたは過酷な運命を背負っておる。その運命から解き放たれるのを我は願っておる。我は…我はそなたと出会い終わりを迎える事が出来て幸せだ。〉


 大きなフェンリルは笑い、輝きだした。あぁ、言わなきゃ。伝えなきゃ。


「…待っていてくれてありがとう…大好きだよ。」


 一瞬、目を見開いたフェンリル。だがすぐに微笑んだ。


〈あぁ。我も大好きだ。我が愛しき契約者よ。そなたに幸あらんことを〉





 バルフは光の粒となりティアの身体へと吸い込まれていった。































 

 
しおりを挟む
感想 169

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の妾腹の子ですが、義母となった公爵夫人が優しすぎます!

ましゅぺちーの
恋愛
リデルはヴォルシュタイン王国の名門貴族ベルクォーツ公爵の血を引いている。 しかし彼女は正妻の子ではなく愛人の子だった。 父は自分に無関心で母は父の寵愛を失ったことで荒れていた。 そんな中、母が亡くなりリデルは父公爵に引き取られ本邸へと行くことになる そこで出会ったのが父公爵の正妻であり、義母となった公爵夫人シルフィーラだった。 彼女は愛人の子だというのにリデルを冷遇することなく、母の愛というものを教えてくれた。 リデルは虐げられているシルフィーラを守り抜き、幸せにすることを決意する。 しかし本邸にはリデルの他にも父公爵の愛人の子がいて――? 「愛するお義母様を幸せにします!」 愛する義母を守るために奮闘するリデル。そうしているうちに腹違いの兄弟たちの、公爵の愛人だった実母の、そして父公爵の知られざる秘密が次々と明らかになって――!? ヒロインが愛する義母のために強く逞しい女となり、結果的には皆に愛されるようになる物語です! 完結まで執筆済みです! 小説家になろう様にも投稿しています。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の伯爵令嬢だったエミリアは長年の想い人である公爵令息オリバーと結婚した。 しかし、夫となったオリバーとの仲は冷え切っていた。 オリバーはエミリアを愛していない。 それでもエミリアは一途に夫を想い続けた。 子供も出来ないまま十年の年月が過ぎ、エミリアはオリバーにもう一つの家庭が存在していることを知ってしまう。 それをきっかけとして、エミリアはついにオリバーとの離婚を決意する。 オリバーと離婚したエミリアは第二の人生を歩み始める。 一方、最愛の愛人とその子供を公爵家に迎え入れたオリバーは後悔に苛まれていた……。

愛人の子を寵愛する旦那様へ、多分その子貴方の子どもじゃありません。

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵家の令嬢だったシアには結婚して七年目になる夫がいる。 夫との間には娘が一人おり、傍から見れば幸せな家庭のように思えた。 が、しかし。 実際には彼女の夫である公爵は元メイドである愛人宅から帰らずシアを蔑ろにしていた。 彼女が頼れるのは実家と公爵邸にいる優しい使用人たちだけ。 ずっと耐えてきたシアだったが、ある日夫に娘の悪口を言われたことでとうとう堪忍袋の緒が切れて……! ついに虐げられたお飾りの妻による復讐が始まる―― 夫に報復をするために動く最中、愛人のまさかの事実が次々と判明して…!?

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

処理中です...