レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン

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第二章 美少女とはじめる、むっつりスケベの冒険

第42話 欠落した蜘蛛①

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「「欠落した蜘蛛」の仕業ですね。」

「それが奴らの名前ですか?」

「はい。
 エシアドの崖周辺で活動する盗賊団です。
 ギルドでもお尋ね者リストに入っています。」

そう言ってレイカは「欠落した蜘蛛」の手配書を見せてくれた。

「奴らは体のどこかが「欠損」しています。
 例えば、指がないとか、耳が片方ない、とか…。
 この辺りの盗賊は奴らに吸収されていますし、マークさんがみたというので間違い無いでしょう。」

「はい。
 確かに何人かの盗賊が耳がありませんでした。」

「レイカさん、その手配書見せていただけますか?」

レイカの差し出した手配書をロックは受け取った。

「Aランクの依頼…。」

「そうなの。」

「そんなに強い奴らなんですか?」

「おそらく、強さではそこまでないと思います。
 Cランク以上の冒険者がいる時に襲われたケースがないですから。
 ただ、人数が多いことと、その割に捕まらないことでランクが上がっていったんです。」

「盗賊の1人を捕まえて、隠れ家を吐かせられないかしら?」

「過去に「欠落した蜘蛛」の一員を捕まえたことは何度かあるのだけど、全員自決してるんですよ…。」

「え!?
 そこまで団結力の強い一味なんですか…?」

「いろんな盗賊団を無理矢理吸収しでるがら、団結力が強いっでのは考えにぐいんだげどな。」

「居場所がバレないようにしつつ、広い範囲で盗賊行為をするとなると、襲うときにどこからか情報を得てる可能性が高いです。
 街道の近くにいたら高レベルの冒険者にバレるリスクが上がりますから。
 今回も情報を入手し、伝えたのでしょう。
 イキカエルのことはかなり話題になってましたから。」

「…僕たちのせいでマークさんが…。」

「ロックさんとティナさんのせいじゃありません!
 2人の獲物に興奮した俺が、ギルドの中で大きな声で喋ったのが悪かったんです…。
 
 それに俺が弱いばっかりに…、すみません…。
 せっかくうだつの上がらない冒険者だった私を、ゴルドさんが雇ってくださったのに。」

マークはF級冒険者だったがスキルに恵まれず、それ以上の成長が見込めなかった。

ただ、真面目で誠実な人間性を見て、ゴルドが御者として雇ったのだ。


バンッ!

「許せない…!」

その時、近くに座っていた冒険者がテーブルを叩きながら立ち上がった。

「…ブリット。」

マークがブリットと呼ぶその冒険者は、怒りでわなわなと震えている。

「マークさん、この方は?」

ティナがマークにたずねる。

「以前パーティを組んでたやつです。
 もう、今は解散してますけどね。」

「確かにもう解散しているが、一緒に冒険してた仲間を襲うなんて許せない。
 せっかく第2の人生を歩んでるというのに…。」

「そんなに怒るほど、いい仲間関係じゃなかった気がするがな。」

眼帯をつけたブリットという冒険者は一度目を伏せ、目を開けてから再び語り始めた。

「確かに、解散した時の私の態度は悪かったかもしれないね。
 でも、マーク、君のためを思ってだったんだよ。
 これ以上冒険者を続けると、君の命を危険に晒してしまう、そう思ったんだ。」

「…そうか。
 その目…、悪かったな。」

「これかい?
 こんなの傷は冒険者だったらあって当然さ。
 気にすることじゃない。」

眼帯を指差し、ブリットは明るく話した。

「私はマークをこんな目に合わせた盗賊を許せない。
 それに犠牲者を出し続ける「欠落した蜘蛛」をこれ以上放って置けない!」

それにロックが同調する。

「僕も同じ気持ちです!
 マークさんは殺されかけて、仕事道具の大事な馬車はボロボロに…。
 こんなことを続けている奴ら、許せないです!」

「落ち着いてください、2人とも。
 ギルドももちろん同じ気持ちなんですが、B急冒険者でも捕まえることができないんです。
 今のところ打つ手が…。」

「私にいい考えがある。

 ここじゃなんだから、場所を移動できないかな?」

「…そうですね。
 皆さん、こちらへ。」



一同はギルドの応接間へと移動した。

部屋に入り、席に着いたところでブリットが切り出した。

「そこの2人、ロックとティナだったかな?
 マークが運んでいた獲物を狩ったのは君達だと聞こえたけど、本当かい?」

「…はい。」

「でもそのブレスレットを見ると…、2人ともDランクなんだよね?」

「ブリット、一体なんなんだ?」

マークが嫌悪感をあらわにした顔で口を挟む。

「Dランクなのに、Bランクのイキカエルを倒す実力を持っている。
 つまり私が言いたいのは、君たちなら「欠落した蜘蛛」をなんとかすることができるんじゃないかってことさ。」
 
「ブリット!!
 俺のせいで、ただでさえお2人には迷惑をおかけしてるんだ!
 その上危険に晒させるようなこと、口に出すんじゃない!」

感情をあらわにするマーク。


シーンとなる室内。


その静寂をロックが破った。

「マークさん。
 僕もブリッドさんと同意見です。
 今、「欠落の蜘蛛」をどうにかできる可能性があるのは僕だけです。
 僕は奴らを許せない。

 「欠落の蜘蛛」を倒したい。」

「倒したいのは僕「たち」ね。
 私を置いていかないでよ、ロック?
 
 私たちはもうすぐCランクになるわ。
 そうすると、盗賊たちは襲ってこないのよね?」

「ティナ…。」

心配そうなロックだが、ティナは知らん顔。

「確かに、C級冒険者以上は襲われたことがありません。
 ただ、Aランクの依頼ですので…。」

「報奨金はなくても構いません。
 勝手に討伐するならギルドは関係ないですよね?」

「それはそうですが…。」

レイカとロックのやりとりを聞いていたゴルドが口を開く。

「…だめだ!
 おめえらにはもっど大事な目的があるべ!
 こごでそんな危険を犯す必要はねえ!」

「でも、僕は…、僕たちは、大事な人たちが幸せに暮らせる世界にしたいんです。
 今目の前で大事な人が苦しんでるのに見過ごすようなことは…できません。
 「魔王をどうにかすること」じゃなくて、「大事な人の幸せ」が大切なことなんです。」

納得できない様子のゴルド。

ティナもロックに続く。

「ゴルドさん、ご心配ありがとうございます。
 
 でもロックの言う通りです。
 自分たちの信念を「危険だから」と曲げていたら、どっちにしても魔王をどうにかすることはできませんわ。」
 
「だけども…。」


パチパチパチ!


ブリッドが涙目で2人を讃えるように手を叩く。

「素晴らしい…。
 ゴルドさん、2人を止めることはできないようです。
 であれば、2人の危険がなるべく小さくなるように作戦を考えましょう。」

「ブリッド…!」

2人が盗賊討伐へ行くように後押しするブリッドに対して、マークは圧力をかける。

しかし、ブリッドは折れない。

「マーク。
 もちろん2人にだけ危険なマネはさせない。
 



 …私も行く。」
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