レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン

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第二章 美少女とはじめる、むっつりスケベの冒険

第43話 欠落した蜘蛛②

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「私も行く。」


「欠落した蜘蛛」をロックたちと倒しに行くというブリット。

「お前が…?
 どういう風の吹き回しだ?」

「言っただろう。
 元仲間を襲い、被害者を出し続ける奴らを放っておけないと。

 …まあ、あんな別れ方をしたんだ。
 私を信用できないのはわかる。
 
 では、これで少しは信用してもらえないだろうか。」


 ブリッドはロックとティナの方を向いた。

「私のスキルを伝える。
 
 冒険者にとってスキルを知られることはリスクだ。
 でも、会ったばかりの私が信じてもらうにはリスクを冒す必要がある。

 そのリスクを持って、私を信じてもらえないかな?」

「ロックさん、ティナさん!
 やめてください!
 ブリッドと行くことは別としても、危険です!
 失態をしてしまったのは俺の責任ですので、損失は働いて返しますから!」

「損失なんて忘れてました。
 僕たちが許せないのは、親切にしてくれたマークさんを襲ったことです。
 そして、そんなことがこれからも繰り返されること…。」

ゴルドがため息を漏らしながら、レイカに聞いた。

「レイカ、ブリッドは普段どんなやづなんだ?」

「ギルドから見たブリッドさんは、必要最低限の依頼を受けている、という印象です。
 効率の良いモンスターを生活に必要な分だけ、といった感じで。
 他の冒険者との関係性はいいように見えます。」

「昔、マークへ一方的にパーティ解散を告げたことへの後ろめたさもある。
 1人ならもっと上へいける、そう思い上がって解散したのに、結局はDランク止まりさ。
 …でも、Dランクだからこそ「欠落した蜘蛛」に警戒されずに接触することができる。」

「ブリッドさん、僕たちは格上のランク相手に戦える手段があります。
 ブリッドさんにも何かあるんでしょうか?」

「正直直接戦うのは難しい。
 だが、私には【気配察知】スキルがある。」

「【気配察知】スキル!」

「そう。
 攻撃スキルはない。
 ステータスは全体的に低め。
 だが、スキルを上手く使えば奴らの隠れ家を見つけることができるはずだ。」

「何が作戦があんのが?」

「はい。
 
 囮作戦です。」

「囮作戦?」

「ロックさんとティナさんはイキカエルをはじめ、たくさんのモンスターを納品してるよね。
 あ、これはマークが大きな声で話していたから、みんな知ってるよ?」

「ろ、ロックさん、ティナさん…、すみません…。」

「マークさん、それは全然構わないよ。
 ブリッドさん、それで?」

「そうすると、今2人はかなりの額をギルドに預けている。
 Dランク2人が大金を持って明日町を離れるとする。
 モンスターを倒したことは伏せて、その情報だけが奴らに伝われば…。」

「お金を奪うために、襲ってくる可能性があるということですね。」

「そういうこと。
 あとは、お金を渡す代わりに身は守る。
 そして、私の【気配察知】で充分に距離をとりながらあとをつける。
 隠れ家を見つけたら、帰ってギルドに報告する。
 お金や馬車から奪われた獲物はその後押収してもらおう。
 
 私だけだと殺されてしまうし、身を守れるCランク以上がいれば奴らが襲ってこない。
 格上相手に戦える2人がいれば、この作戦は可能なはずだ。
 
 ただ、どうやってこの町にいるはずのスパイにそこだけ聞かせるか…。」

「しょうがねえべか…。
 
 ギルド酒場でお祝いでもしだらどうだべ?
 お金が貯まったがら、新しい門出を祝うっでことで。
 おらが嬉しぐてみんなに奢るって流れは?」

「確かに、ゴルドさんはたまにそういうことをしてますからね。
 違和感はないかもしれません。」

「ゴルドさん、本当に親切で優しいですね。」

ティナの心からの言葉に、照れるゴルド。

「た、たまたまだべ!
 どうだ? 
 それでええべか?」

「はい!
 僕はそれでいいと思います!」

「事情が事情ですので、その作戦で行く場合はギルドで費用を負担できるようかけ合います。」

レイカ、頼もしい。

「作戦はまとまったね。
 じゃあ決行は今日、囮として旅立つのは明後日でどうだろう?」

ブリットの確認に、一同はうなずく。

ただ1人、マークを除いて。

「俺は反対です。
 …俺に戦う力があれば…!」

「マークさん。
 これは僕たちがやりたいから勝手にやることだよ。
 さっきも言った通り、ここを避けて通ったら、全部ダメになる気がするんだ。」

「ロックさん…。」

「ただ、1つ懸念してることが…。
 もし戦闘になった場合、相手を死なせてしまうかもしれません…。
 それが正直、怖いです。」

「盗賊と戦闘になった時には死亡者は当然でます。
 相手は殺す気できますし、傷を負っても回復術師がいたらまた戦力になってしまいますから。
 それは、覚悟する必要があります。
 ただ、ブレスレットの色は一時的に黒に変わってしまいますが、討伐報告時に解除することが可能です。」

「…わかりました。」

「私も…、覚悟を決めておきます。」

「まあ、僕たち3人で隠れ家を突き止めれば、あとの討伐は高ランクの冒険者たちに任せたらいいよ!
 
 さあ、2人の門出を祝う宴を始めよう!」


ギルド酒場に移動したロックたち。

ゴルドが大きな声で注目を集める。

「お~い、聞げ~!おめえたぢ!
 こごにいる2人はおらが目にかけでた冒険者なんだが、なんとDランクで500万ゴルも貯めて、明後日旅に出るこどになった!
 めでてえから、今日はおらのおごりだべ~!」

「お~!ゴルドの旦那!!
 いつもありがとうよ!」

「めでてえ、めでてえ!!
 いっぱい飲むぜ~!」

レイカの言った通り、ゴルドはよくこうやってお酒を振る舞ってるようで、自然と酒盛りが始まった。

ロックがブリッドを見ると、向こうも視線を合わせ、にこりと笑った。

マークだけは、相変わらず険しい表情のまま。

(僕たちに損失をおわせたこと、さらに尻拭いまでさせてしまってると、やっぱり気を病んでるのかな…。後でもう1度声をかけておこう…。)

門出の祝いと称した酒盛りは夜遅くまで続いた。

レイカの顔が引き攣っていたのを、知る人はいなかった。
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