レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン

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第四章 世界中が敵

第158話 ロックたちにかけられた容疑

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「大人しく捕まりな。」


(なんでこんなに余裕なんだ?)

【咆哮】を使ったのはローザではなかった。

となると、バフをかけたA級冒険者が使ったと考えられる。

ロックにはなんの効果もなかった。

ファルクやS級になったミラ、ティナへも効果は長く続かない。

S級冒険者4人を前にして、あまりに余裕のある態度にロックは違和感を感じた。


「なんで捕まらなきゃいけないの!?
 それにあなたたちじゃ、わたしたちを捕まえるのは無理だよ~!」

身体の自由が戻ってきたミラがあっかんべーをしながら挑発する。

そして自分たちにかかっていた状態異常も回復させた。


「さすがにこれくらいじゃ動きを封じられないか…。」

そうつぶやいたローザを睨みつけながら、ファルクが口を開く。

「気をつけろ。
 S級の中でも、あのローザだけは特別だ。」

唯一ローザを知るファルクは苦い顔をする。

「ユニークスキル持ち?」

ティナの質問に首を横にふるファルク。

「レア度の高いスキルは持ってないんだが、組み合わせがやばいんだ。」


「ふふ。
 そう、アタシには誰も敵わないよ?
 【賭博盤】!」

すると、ローザの前にルーレットが現れる。


6つの効果が書かれていた。

・使用者のHPが1になる
・使用者がランダムで状態異常にかかる
・使用者が裸になる
・敵のステータスが2倍になる
・敵の1人がなんでも言うことを聞く
・敵全体の動きを封じる


敵に有利な目が多く、しかもそんな目の方がスペースが多い。

自分にかなり不利なルーレットだ。


「え?
 あの人自滅しにきたの?」

ミラがズバッと切り捨てる。

「それがな、あいつは【豪運】スキルを持っていて、自分に不利な目をほとんど出さねえんだ。
 俺が知ってる限り、リッチェルのせいで裸になったくらいかな。」

確かに、モンスターの前で出せば生きて帰れない目が多い。

彼女が生きているということは、いい目を出し続けてきたのだろう。

リッチェルと共闘したときは、【ラッキースケベ】が発動したと思われる。


「さあ、出るよ!」

ルーレットが止まる。

ロックたちは取り囲む冒険者を攻撃するわけにもいかず、その結果を見守る。

もっとも、【賭博盤】を発動中は、結果が出るまで使用者に危害を加えることはできないのだが。


「…やっぱりアタシの運は最強だね。
 『敵の1人がなんでも言うことを聞く』だ。」


次の瞬間、ファルクの身体がビクッと動いた。


「しかも、一番レベルの高いファルクか。
 ラッキーだね。
 ファルク、そのうるさい嬢ちゃんを人質にしな。」


「きゃっ!」

ファルクがミラを捕まえ、ローザが投げたナイフを受け取ってミラの首元に向けた。


「さあ、大人しく捕まるんだね。」

「ちょっと待ってください!
 なぜ僕たちが捕まらなければいけないんですか!?」

ロックがローザに問いただす。


「それは私が説明しよう。」

その言葉を発したのは、ギルドの奥から出てきた、…将軍だった。

「ガウス将軍…。」

「ロック、君たちには…殺人の容疑がかかっている。」

「殺人!?」

「身に覚えがあるだろう?
 ロック、君を殺そうとした義理の両親だ。」

「え!?
 いや、あの2人は牢獄に囚われてるんですよね!?」

「白々しいな…。
 看守を殺し、2人を殺したんだろう?
 その証拠に、ブレスレットの色が変わってるじゃないか。」

そう言われてブレスレットの色を見てみると、殺人を犯した冒険者の証となる「ブラック」になっていた。

「いつの間に!?」

「孤児院にいるときはゴールドだったわよね…!?」


「君たちには期待していたのに、残念だ…。
 それに、イーザ・リッチェルを殺した疑いもかけられている。」

「誰がそんな!?」

「とにかく殺人を犯したことには違いない。
 大人しく捕まってくれ。」


(どうなってるんだ!?)

予想外の展開に頭がついていかないロックたち。

だが、このまま捕まるわけにはいかない。


「…すみません。
 今は捕まるわけには行きません…。
 無罪は必ず…、証明します。」

「動かぬ証拠があるだろうが。
 それに、この状況で逃すと思うか?
 それともファルクとその女を見捨てて逃げるのか?」

ロックが仲間を見捨てることができないのをわかっていての発言だろう。

「…いえ。
 全員で逃げます。」

「ふ。
 一体どうするつもりだ?」


「こうです。



 …ウオオオオオオオ!!!」



「なに!?」


ロックの叫び声により、ギルド内の全員の動きが止まる。

話している間にさっき【咆哮】を使った冒険者から奪っていたのだ。

ローザに操られ、敵認定となったファルクも動けない。

今はそのほうが好都合だったため、ファルクを抱えて4人でギルドの外へ逃げる。


しかし、外にもたくさんの冒険者が。

だが、今のロックのステータスはバフをかけたS級冒険者ですら及ばない。

再び【咆哮】を放ち、全ての冒険者の身体の自由を奪った。


「ぐ…、馬鹿な…。」

事前にバフをかけていたにもかかわらず身動きの取れなくなった将軍。

逃がしてしまったことで流れる冷や汗が、彼の頬を伝っていた。



ギルドから離れてしばらくすると、ファルクの身体の自由が戻った。

ある程度の距離が空くと、ローザの【賭博盤】の効果は切れるようだ。

ファルクはフォースドラゴンに変身し、3人を乗せてバルキアを離れた。


「一体、なんなんだ…。」

その答えは4人の誰にもわからなかった。
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