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第九章「海神編」
後見人
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領地から戻り、俺は別宮の副隊長室に向かった。
そこでガスパーが仕事をしているからだ。
「お疲れ、ガスパー。」
「おう。どうだったよ?初領土視察は?」
「視察っていうか、各村や施設に挨拶に行ってイグナスの顔合わせして軽く話をして、領地館の建設状況を見てきただけだけど。まぁぱっと出のにわか貴族が領主になった割には、どこも落ち着いてたよ。歓迎してくれたし。」
「ここの所、フレッチャー一族は王宮には秘密裏にかなり無茶な税を課してたからな。多分、いざという時に南の国に逃亡する資金と息子が跡継ぎとしての功績を残そうと躍起になってたんだろうけどよ。とどのつまり各所から不満は溢れていた所、そいつ等が成敗されて、それを行ったヒーローが領主になったんだ。ぴよぴよのヒョッ子領主とはいえ歓迎するだろ。しかも庶民の出だ。ギルドがあるような土地でもあるから、全体的に不慣れな初心者領主様を俺達で支えていこう!みたいな団結があるのかもな。」
そう言われてみれば、何故かどこも親が子を見守るような生暖かい視線でにこにこ見守られていた気がする。
それってそういう事だったのか……。
まぁ確かに領土管理なんてしたことも無いし考えた事もなかったから、支えてもらってやっていくしかないから有り難いんだけども。
「俺、ちゃんと皆を支えて守っていけんのかな……。あんなに広いんだぜ?!しかもあんなに人がいて。当たり前だけど皆、平民で何か起こっても戦える訳じゃないし。しかも人だけ守っても仕方ないしさ。その生活基盤である農地とか動物とか、もっと言えば健康とかもだろ??はやり病だっていつ起こるかわかんないしさ~。」
俺は見て回った領地の事を思い出して唸ってしまった。
俺の領土は物凄く狭い。
他の貴族からしたら、そんなの持ってるうちに入らないくらいだろう。
しかしどんなに狭くても領土は領土だ。
そんなものを持つ事を考えた事もなかった俺にとっては広すぎる土地だ。
領地の中には人がいて生活がある。
その責任を俺は追わなければならないのだ。
「……そう言っているうちは、お前は良い領主だってことだ。」
ガスパーがため息まじりにそう言った。
まぁ、フレッチャー元公みたいに金を搾取する為の道具みたいに思いだしたら最悪だけどさ。
「だとしても滅茶苦茶不安だ……。」
「お前はずっとブレずにその志を持ってりゃいい。後は俺とイグナスさんで何とかしてやる。」
そう言われ、俺はチラリとガスパーを見た。
何だよと言いたげに俺を睨むと、すぐに書類に目を落とす。
見慣れなかったはずの眼鏡姿も今では逆に取っていた頃の方が貴重だった気がしてきた。
突如としてにわか貴族になってしまった俺は、本当に右も左もわからず、ガスパーに頼りきっている。
俺のように始めて領土をもらったりして貴族やそれに類似するものになってしまうと、暗黙の了解でその教育係的な人間がつく。
領土管理等後見人と言うらしいのだが、要するに慣れない領土管理等で国に損失を出させない為のお目付役である。
俺はそれにガスパーを指名している。
指名していると言うか、かなり早い段階で「そうするからな!」とガスパーがさっさと手続きをしてしまったのだ。
多くの場合は目をかけてもらっていた大御所貴族に属するのだが、俺は元々そういったものから距離を取っていた。
だからそうする親玉もいなかったし、あえてどこかの貴族グループに属そうとも思わなかったし、とにかく色々訳がわからなかったので言われるままガスパーに任せてしまった。
その後、あちこちの貴族が声をかけてきて後見人に名乗りを上げてくれたが、ガスパーになっていると断った。
その静かだが熾烈とも言える様子を見て理解した。
どこのグループも、国王に一目置かれ、ふんぞり返っていた古参貴族を糾弾した俺を引き込みたかったのだ。
だからガスパーは手続きを急いだのか……。
そうやって古参貴族が消えた後の勢力争いに、俺が下手に巻き込まれないようにしてくれたのだ。
ラティーマーは今回処分対象にならなかった古参貴族だし、代々宰相を務める家だ。
しかもその神童、ガスパーの実力は裁判をを見ていた人間から周りに広まっている。
だからそのガスパーが後見人だと言えば、それ以上何も言ってこられないのだ。
本来ならこうやって、新参貴族もどこかのグループに取り込まれていくんだなと貴族社会の水面下の競争を知った。
ちなみに手続きが終わったすぐ後で、同じように勢力争いの事を心配したギルも後見人になると申し出てくれたのだが、もうガスパーに頼んだと言ったらスンとした顔をしていた。
あいつの表情は代わり映えなくていまいちよくわからない。
そんな感じで今、王宮内も貴族達の勢力争いが起きている。
土地の配置換えもあった事で何気に下克上ありの混沌とした情勢らしい。
まぁ、好きにやってくれ。
出世意欲があると言うのは悪い事じゃない。
ガチガチで動きようのなかった貴族社会の勢力図が、古参貴族が大量に処分された事で国に対して良い働きをすれば良い位置に立てる状況なのだ。
やる気に溢れた活気ある人間が切磋琢磨して新たな政治基盤を作ってくれれば、王様とその政治基盤の守りは固くなる。
そして昔からの役職にあぐらをかいているような奴は足元をすくわれる。
そうならない為には必死に仕事をして負けじと食らいつくしかない。
しかも今回の一件は、悪い事をすれば例え王族の血を引くものであっても処分される事も示された。
今の段階で地位を利用して何か悪巧みをしようとは誰も考えないだろう。
その為、今は混沌としていても、結果的には良い方に進むと思っている。
ついでに言うと、俺や俺の周囲の人間の事は「沈黙の新勢力」と影で言われているらしい。
どこのグループにも属さず、だが、王宮において発言力が強い。
かと言って何か政治的に動きがある訳ではない若者たち、と言った感じだ。
要するに、今回処分などはされていない古参もしくは大御所貴族の出であるグラント家のギル、ラティーマー家のガスパー、イニス家のイヴァン、ウォーレン家のサムとライル(元コーディ家)の若者たちプラス俺とシルクとウィル、もっと言えばその王家側の主である第三王子ライオネル殿下も含まれるようだ。
政治的に大きな顔をしようとはせず、黙々と元の仕事をこなしているが、今回の事で王宮に大きな存在感を持つ若者たち。
取り入ろうとするには背負っている家が大きすぎる為、迂闊にそういう行動にも出れない。
本人達は政治的権力に興味を示さず、真面目に自分たちの仕事をこなすばかりで全く付け入る隙がないのだ。
俺がこれを知ったのは、第三別宮警護部隊の隊員に「何かさ、親にお前達の傘下に入っとけって言われたんだけど、何の事だ??」と声をかけられたからだ。
俺も訳がわからず何だそれ??と返したが、全体の動向もきちんと把握している知の蛇は、ため息まじりに教えてくれた。
隊員たちは「なら俺も傘下~!」「なら俺も~!」とゲラゲラ笑っていた。
何かこうなってきても、うちはこういう感じで安心する。
俺的には何かいきなり担ぎ上げられて立場が変わってしまったにもかかわらず、今まで通り接してくれる警護部隊の皆が嬉しかった。
とはいえ少し心配になる。
元々うちの第三別宮警護部隊は、他に行き場のないお坊ちゃま達メインで構成された能天気集団。
お前ら、俺に言われたくないだろうけど、もっと出世意欲を持て。
じゃないと婚約先が見つからなくて結婚できないぞ?!
のほほんとしていて政治的に本気で取り入ってこようとするタイプが出ないのは、ガスパーの言葉を借りれば本当、俺達は駄目な脳筋集団なのかもしれない。
「……本当、何だかんだ今、俺が前と変わらずにいられるのって、ガスパーのお陰だよな……。」
「なっ?!何だよ?!いきなり?!」
「いや、俺だけだったらいきなり立場が変わって右往左往してただろうし、どっかの貴族グループに取り込まれてただろうし……。そうしたら変な政治的な事に巻き込まれてただろうしさ~。こうやってバタバタしながらも今まで通り馬鹿やっていられるのって、ガスパーが全部、先手先手で手を回してくれてたからだろ?本当、感謝してもしきれないよ。」
「……別に。俺は俺の役割を果たしているだけだ……。」
ガスパーは少し赤くなりながらもツンといつも通りそう言った。
その言葉に俺は首を傾げる。
「前から気になってたんだけどよ??お前のその「役割」ってどういう意味なんだ??もう俺も王宮から帰ってきたから、警護部隊として俺につけられてた仕事は終わったんだよな??」
「!!」
「正直、ガスパーいてくれないと困るんだけどさ?でも、そんなに俺に対して責任感じなくて大丈夫だぞ??……とは言え後見人だけどさ~。」
俺の言葉にどこか妙な動揺を見せたガスパーだったが、後見人の事を言ったら、急にいつものスカした感じを取り戻した。
「……そうだ……そういう事だ!馬鹿野郎!後見人なんだから、てめぇの失態は俺の責任になんだよ!だから色々手を回すのは俺が自分の失態を避ける為の当然の行動であり、俺の役割なんだからいちいち気にすんじゃねぇっ!!」
「そうか~。そういう事だったのか。何か悪いな~、後見人にしちまって。」
「別に……。」
後見人って俺の失敗の責任も取らないと行けないのか、大変だな……。
ガスパーはいつも別に良いと言ってくれるが、いくら目覚めたラティーマーの神童とは言え、こんな平民上がりのひよっこ貴族、しかも結構勝手な真似が絶えない俺みたいな奴の後見人になっちまって、大変なんじゃないだろうか??
「もしそれが嫌になったら言えよ??何かギルもやっていいって言ってたから、変わってもらってもいいし。」
「はぁ?!てめぇ!俺が後見人なのが気に入らねぇのかよ?!」
それを言った瞬間、ガスパーは座っていた椅子からガタンと立ち上がった。
顔を真っ赤にして怒っている。
歯をギリギリさせて怒っているのだが、悔しそうに目元が潤んでいる。
ヤベ、そんなつもりじゃなかったんだけど。
「違うって!!後見人なのがお前で凄く助かってるよ!!お前じゃないと困った事ばっかりだったし!!でもお前が負担を感じて辛いなら交代しても大丈夫だからなって意味で……。」
「俺がてめぇ一人の面倒も見きれないと思ってんのか?!馬鹿にすんなっ!!てめぇなんか孫の代まで面倒みてやらァっ!!」
俺が気を使っての発言だった事は理解してくれたらしく、ガスパーは少し落ち着いてくれた。
良かった。
でも孫の代って言ってもなぁ~。
「そ、それはありがとう、ガスパー……。でも俺、実子は残せないから養子だと思うけど、頼んで良いのか??」
「~~~っ!!アホか~!!お前は~っ!!例え話だってのっ!!具体的な話をしてんじゃねぇっ!!馬鹿野郎~っ!!」
孫の代と言い出したのはガスパーなのに、俺が今の所子供を残せない理由を具体的に想像したのか、ガスパーは茹でダコのように赤くなってそう叫んだ。
そして近くにあった何かの資料の分厚い本を数札、投げつけられる。
何でだよ~?!
孫の話をしだしたのはガスパーなのに~!!
理不尽だ~っ!!
俺はそれを避けるにも避けられなくて、甘んじてぶつけられながら半泣きになるしかなかった。
そこでガスパーが仕事をしているからだ。
「お疲れ、ガスパー。」
「おう。どうだったよ?初領土視察は?」
「視察っていうか、各村や施設に挨拶に行ってイグナスの顔合わせして軽く話をして、領地館の建設状況を見てきただけだけど。まぁぱっと出のにわか貴族が領主になった割には、どこも落ち着いてたよ。歓迎してくれたし。」
「ここの所、フレッチャー一族は王宮には秘密裏にかなり無茶な税を課してたからな。多分、いざという時に南の国に逃亡する資金と息子が跡継ぎとしての功績を残そうと躍起になってたんだろうけどよ。とどのつまり各所から不満は溢れていた所、そいつ等が成敗されて、それを行ったヒーローが領主になったんだ。ぴよぴよのヒョッ子領主とはいえ歓迎するだろ。しかも庶民の出だ。ギルドがあるような土地でもあるから、全体的に不慣れな初心者領主様を俺達で支えていこう!みたいな団結があるのかもな。」
そう言われてみれば、何故かどこも親が子を見守るような生暖かい視線でにこにこ見守られていた気がする。
それってそういう事だったのか……。
まぁ確かに領土管理なんてしたことも無いし考えた事もなかったから、支えてもらってやっていくしかないから有り難いんだけども。
「俺、ちゃんと皆を支えて守っていけんのかな……。あんなに広いんだぜ?!しかもあんなに人がいて。当たり前だけど皆、平民で何か起こっても戦える訳じゃないし。しかも人だけ守っても仕方ないしさ。その生活基盤である農地とか動物とか、もっと言えば健康とかもだろ??はやり病だっていつ起こるかわかんないしさ~。」
俺は見て回った領地の事を思い出して唸ってしまった。
俺の領土は物凄く狭い。
他の貴族からしたら、そんなの持ってるうちに入らないくらいだろう。
しかしどんなに狭くても領土は領土だ。
そんなものを持つ事を考えた事もなかった俺にとっては広すぎる土地だ。
領地の中には人がいて生活がある。
その責任を俺は追わなければならないのだ。
「……そう言っているうちは、お前は良い領主だってことだ。」
ガスパーがため息まじりにそう言った。
まぁ、フレッチャー元公みたいに金を搾取する為の道具みたいに思いだしたら最悪だけどさ。
「だとしても滅茶苦茶不安だ……。」
「お前はずっとブレずにその志を持ってりゃいい。後は俺とイグナスさんで何とかしてやる。」
そう言われ、俺はチラリとガスパーを見た。
何だよと言いたげに俺を睨むと、すぐに書類に目を落とす。
見慣れなかったはずの眼鏡姿も今では逆に取っていた頃の方が貴重だった気がしてきた。
突如としてにわか貴族になってしまった俺は、本当に右も左もわからず、ガスパーに頼りきっている。
俺のように始めて領土をもらったりして貴族やそれに類似するものになってしまうと、暗黙の了解でその教育係的な人間がつく。
領土管理等後見人と言うらしいのだが、要するに慣れない領土管理等で国に損失を出させない為のお目付役である。
俺はそれにガスパーを指名している。
指名していると言うか、かなり早い段階で「そうするからな!」とガスパーがさっさと手続きをしてしまったのだ。
多くの場合は目をかけてもらっていた大御所貴族に属するのだが、俺は元々そういったものから距離を取っていた。
だからそうする親玉もいなかったし、あえてどこかの貴族グループに属そうとも思わなかったし、とにかく色々訳がわからなかったので言われるままガスパーに任せてしまった。
その後、あちこちの貴族が声をかけてきて後見人に名乗りを上げてくれたが、ガスパーになっていると断った。
その静かだが熾烈とも言える様子を見て理解した。
どこのグループも、国王に一目置かれ、ふんぞり返っていた古参貴族を糾弾した俺を引き込みたかったのだ。
だからガスパーは手続きを急いだのか……。
そうやって古参貴族が消えた後の勢力争いに、俺が下手に巻き込まれないようにしてくれたのだ。
ラティーマーは今回処分対象にならなかった古参貴族だし、代々宰相を務める家だ。
しかもその神童、ガスパーの実力は裁判をを見ていた人間から周りに広まっている。
だからそのガスパーが後見人だと言えば、それ以上何も言ってこられないのだ。
本来ならこうやって、新参貴族もどこかのグループに取り込まれていくんだなと貴族社会の水面下の競争を知った。
ちなみに手続きが終わったすぐ後で、同じように勢力争いの事を心配したギルも後見人になると申し出てくれたのだが、もうガスパーに頼んだと言ったらスンとした顔をしていた。
あいつの表情は代わり映えなくていまいちよくわからない。
そんな感じで今、王宮内も貴族達の勢力争いが起きている。
土地の配置換えもあった事で何気に下克上ありの混沌とした情勢らしい。
まぁ、好きにやってくれ。
出世意欲があると言うのは悪い事じゃない。
ガチガチで動きようのなかった貴族社会の勢力図が、古参貴族が大量に処分された事で国に対して良い働きをすれば良い位置に立てる状況なのだ。
やる気に溢れた活気ある人間が切磋琢磨して新たな政治基盤を作ってくれれば、王様とその政治基盤の守りは固くなる。
そして昔からの役職にあぐらをかいているような奴は足元をすくわれる。
そうならない為には必死に仕事をして負けじと食らいつくしかない。
しかも今回の一件は、悪い事をすれば例え王族の血を引くものであっても処分される事も示された。
今の段階で地位を利用して何か悪巧みをしようとは誰も考えないだろう。
その為、今は混沌としていても、結果的には良い方に進むと思っている。
ついでに言うと、俺や俺の周囲の人間の事は「沈黙の新勢力」と影で言われているらしい。
どこのグループにも属さず、だが、王宮において発言力が強い。
かと言って何か政治的に動きがある訳ではない若者たち、と言った感じだ。
要するに、今回処分などはされていない古参もしくは大御所貴族の出であるグラント家のギル、ラティーマー家のガスパー、イニス家のイヴァン、ウォーレン家のサムとライル(元コーディ家)の若者たちプラス俺とシルクとウィル、もっと言えばその王家側の主である第三王子ライオネル殿下も含まれるようだ。
政治的に大きな顔をしようとはせず、黙々と元の仕事をこなしているが、今回の事で王宮に大きな存在感を持つ若者たち。
取り入ろうとするには背負っている家が大きすぎる為、迂闊にそういう行動にも出れない。
本人達は政治的権力に興味を示さず、真面目に自分たちの仕事をこなすばかりで全く付け入る隙がないのだ。
俺がこれを知ったのは、第三別宮警護部隊の隊員に「何かさ、親にお前達の傘下に入っとけって言われたんだけど、何の事だ??」と声をかけられたからだ。
俺も訳がわからず何だそれ??と返したが、全体の動向もきちんと把握している知の蛇は、ため息まじりに教えてくれた。
隊員たちは「なら俺も傘下~!」「なら俺も~!」とゲラゲラ笑っていた。
何かこうなってきても、うちはこういう感じで安心する。
俺的には何かいきなり担ぎ上げられて立場が変わってしまったにもかかわらず、今まで通り接してくれる警護部隊の皆が嬉しかった。
とはいえ少し心配になる。
元々うちの第三別宮警護部隊は、他に行き場のないお坊ちゃま達メインで構成された能天気集団。
お前ら、俺に言われたくないだろうけど、もっと出世意欲を持て。
じゃないと婚約先が見つからなくて結婚できないぞ?!
のほほんとしていて政治的に本気で取り入ってこようとするタイプが出ないのは、ガスパーの言葉を借りれば本当、俺達は駄目な脳筋集団なのかもしれない。
「……本当、何だかんだ今、俺が前と変わらずにいられるのって、ガスパーのお陰だよな……。」
「なっ?!何だよ?!いきなり?!」
「いや、俺だけだったらいきなり立場が変わって右往左往してただろうし、どっかの貴族グループに取り込まれてただろうし……。そうしたら変な政治的な事に巻き込まれてただろうしさ~。こうやってバタバタしながらも今まで通り馬鹿やっていられるのって、ガスパーが全部、先手先手で手を回してくれてたからだろ?本当、感謝してもしきれないよ。」
「……別に。俺は俺の役割を果たしているだけだ……。」
ガスパーは少し赤くなりながらもツンといつも通りそう言った。
その言葉に俺は首を傾げる。
「前から気になってたんだけどよ??お前のその「役割」ってどういう意味なんだ??もう俺も王宮から帰ってきたから、警護部隊として俺につけられてた仕事は終わったんだよな??」
「!!」
「正直、ガスパーいてくれないと困るんだけどさ?でも、そんなに俺に対して責任感じなくて大丈夫だぞ??……とは言え後見人だけどさ~。」
俺の言葉にどこか妙な動揺を見せたガスパーだったが、後見人の事を言ったら、急にいつものスカした感じを取り戻した。
「……そうだ……そういう事だ!馬鹿野郎!後見人なんだから、てめぇの失態は俺の責任になんだよ!だから色々手を回すのは俺が自分の失態を避ける為の当然の行動であり、俺の役割なんだからいちいち気にすんじゃねぇっ!!」
「そうか~。そういう事だったのか。何か悪いな~、後見人にしちまって。」
「別に……。」
後見人って俺の失敗の責任も取らないと行けないのか、大変だな……。
ガスパーはいつも別に良いと言ってくれるが、いくら目覚めたラティーマーの神童とは言え、こんな平民上がりのひよっこ貴族、しかも結構勝手な真似が絶えない俺みたいな奴の後見人になっちまって、大変なんじゃないだろうか??
「もしそれが嫌になったら言えよ??何かギルもやっていいって言ってたから、変わってもらってもいいし。」
「はぁ?!てめぇ!俺が後見人なのが気に入らねぇのかよ?!」
それを言った瞬間、ガスパーは座っていた椅子からガタンと立ち上がった。
顔を真っ赤にして怒っている。
歯をギリギリさせて怒っているのだが、悔しそうに目元が潤んでいる。
ヤベ、そんなつもりじゃなかったんだけど。
「違うって!!後見人なのがお前で凄く助かってるよ!!お前じゃないと困った事ばっかりだったし!!でもお前が負担を感じて辛いなら交代しても大丈夫だからなって意味で……。」
「俺がてめぇ一人の面倒も見きれないと思ってんのか?!馬鹿にすんなっ!!てめぇなんか孫の代まで面倒みてやらァっ!!」
俺が気を使っての発言だった事は理解してくれたらしく、ガスパーは少し落ち着いてくれた。
良かった。
でも孫の代って言ってもなぁ~。
「そ、それはありがとう、ガスパー……。でも俺、実子は残せないから養子だと思うけど、頼んで良いのか??」
「~~~っ!!アホか~!!お前は~っ!!例え話だってのっ!!具体的な話をしてんじゃねぇっ!!馬鹿野郎~っ!!」
孫の代と言い出したのはガスパーなのに、俺が今の所子供を残せない理由を具体的に想像したのか、ガスパーは茹でダコのように赤くなってそう叫んだ。
そして近くにあった何かの資料の分厚い本を数札、投げつけられる。
何でだよ~?!
孫の話をしだしたのはガスパーなのに~!!
理不尽だ~っ!!
俺はそれを避けるにも避けられなくて、甘んじてぶつけられながら半泣きになるしかなかった。
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